【札幌記念】「前走海外組」と「ハーツクライ産駒」は0勝 データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

札幌記念 過信禁物な出走馬の特徴,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

GⅠ級のメンバーが集結する「スーパーGⅡ」

2023年8月20日、札幌競馬場では札幌記念(GⅡ・芝2000m)が行われる。当レースは秋の大舞台を見据えた古馬中距離路線の有力馬が集結するレースであり、今年も3頭のGⅠ馬が参戦予定だ。その他にもGⅠで好走経験がある馬が多数登録しており、「スーパーGⅡ」と呼ぶに相応しいハイレベルなレースとなりそうだ。

近年の当レースを振り返ると、夏季開催では珍しい定量戦ということもあり、上位人気馬による順当決着が多い。しかし過去10年で1番人気は1勝もしておらず、馬券検討においては人気馬の取捨選択が重要となりそうだ。本記事では過去10年のデータを基に、「過信禁物の注目馬」を導いていく。

海外遠征帰りの馬は苦戦傾向

 前走場所別の成績,ⒸSPAIA


まず注目したいのが、前走の場所別成績だ。東京・中山・京都・阪神の主要4場で前走を走った馬の当レースでの成績は【7-7-6-41/61】、勝率11.5%、連対率23.0%、複勝率32.8%で、馬券に絡む馬の多くはこの組に含まれる。一方、前走がローカル開催だった馬は【3-2-3-65/73】勝率4.1%、連対率6.8%、複勝率11.0%と振るわない。主要4場から転戦してくる馬の多くは春のクラシック、安田記念、宝塚記念といったビッグレースに出走していた馬であり、当然ながら実力馬も多い。サマー2000シリーズを中心としたローカル開催からの転戦馬とのレベルの差が、データ面に表れている。

また、注意したいのが前走で海外を使っていた馬だ。海外遠征に挑戦した馬の多くは国内で一定の実力を示した面々だが、この組の当レースでの成績は【0-1-1-9/11】勝率0.0%、連対率9.1%、複勝率18.2%と意外にも低調だ。ラヴズオンリーユー(21年2着)、モズカッチャン(18年3着)と2頭の牝馬が好走したが、牡馬に限れば6頭が出走して1頭も馬券に絡めていない。今年は海外遠征から帰国初戦の馬が4頭も出走しているだけに、このデータは気がかりだ。

ハーツクライ産駒は不振

 種牡馬別成績,ⒸSPAIA


次に気を付けたいポイントは、種牡馬別の成績だ。最も勝ち星が多いのはディープインパクト産駒で、成績は【3-3-1-14/21】、勝率14.3%、連対率28.6%、複勝率33.3%。出走数も21頭とダントツで多いが、その成績も良好だ。同様に好成績を収めているのがハービンジャー産駒で、成績は【2-1-2-5/10】、勝率20.0%、連対率30.0%、複勝率50.0%。同産駒は洋芝巧者のイメージが強いが、その通り当レースでも結果を残している。

一方、当レースで全く結果を残せていないのがハーツクライ産駒だ。その成績は【0-0-0-7/7】、一頭も馬券に絡んでいない。凡走した中にはポンデザール(20年・3番人気4着)、ヌーヴォレコルト(16年・2番人気4着)といった人気馬も含まれている。ハーツクライ産駒は今年のメンバーの中では最多の3頭が出走予定だが、データ面からは相性が悪いといえる。

軽い馬はパワー不足か

 前走馬体重別の別成績,ⒸSPAIA


3つ目の注目ポイントは前走の馬体重だ。前走馬体重が459kg以下だった馬の成績は【0-0-2-16/18】、勝率0.0%、連対率0.0%、複勝率11.1%で、小柄な馬のほとんどが当レースで結果を残せていない。その他のグループの複勝率を見ると、前走馬体重が460kg~479kgが15.2%、480kg~499kgが24.4%、500kg~519kgが32.0%、520kg以上が28.6%となっている。前走馬体重が重くなるにつれて概ね複勝率も向上しており、データ面では大柄な馬が有利となっている。

当レースは開催が進んだ札幌競馬場が舞台であり、洋芝コースであることも相まって、通常よりもパワーが問われる条件だ。特に馬体重が460kgに満たないような小柄な馬にとっては、力を出し切ることが難しいレースといえるだろう。予想をする上でも、前走の馬体重には注意したい。

データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまでに紹介したデータを総括すると、当レースを予想する上での「不安要素」は以下の3点となる。

・海外レースからの帰国初戦
・ハーツクライ産駒
・前走馬体重が459kg以下

こうした点を踏まえて、今回はシャフリヤール、ダノンベルーガの2頭をデータから導く「過信禁物の注目馬」としたい。

シャフリヤールはドバイSCからの帰国初戦、馬体重も過去に460kgを超えたことがなく、2つの不安データに該当する。当馬が結果を残したGⅠレースは日本ダービー、ジャパンC、ドバイSCの3つだが、これらは左回りの大箱コースという点で共通している。一方、不良馬場の神戸新聞杯や、英国・プリンスオブウェールズSといったパワーが要求される条件では苦戦を強いられている。

同馬の武器はディープインパクト産駒らしい切れ味抜群の末脚であり、東京競馬場のようなコースに適性があるのは戦績的に明らかだ。今回はそれとは真逆の小回り・洋芝・右回りという条件であり、適性の面で不安が残る。実績面から上位人気になる可能性が高い馬だが、絶対的な信頼は置けない。

ダノンベルーガは前走ドバイターフで2着と好走したが、今回が帰国初戦であり不安データに該当する。加えてハーツクライ産駒である点も、気がかりな要素だ。また、こちらもシャフリヤール同様に左回りに良績が偏っている。右回りの皐月賞で好メンバー相手に4着だったものの、札幌競馬場がベストの条件とは言い難い。力を出し切れないケースも十分に考えられるだけに、馬券における取捨選択は慎重に行いたい。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

《関連記事》
【札幌記念】ダノンベルーガは消し トップナイフなど横山一家騎乗馬がハイブリッド式消去法を全回避
【札幌記念】札幌開催の過去9回で1番人気0勝 データは前走・安田記念のジャックドールが一歩リード
【札幌記念】実績馬が好走する「格」の高いレース 狙いは非サンデーサイレンス系の実力馬

おすすめ記事