【札幌記念】実績馬が好走する「格」の高いレース 狙いは非サンデーサイレンス系の実力馬
坂上明大
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傾向解説
サマー2000シリーズ第4戦としてだけでなく、秋の中長距離GⅠを展望する一戦として毎年GⅠ級の素質馬が集結する札幌記念。今年もGⅠ馬3頭を筆頭に有力馬が集結しており、ハイレベルな一戦が予想されます。本記事では血統面を中心に、札幌記念で求められる適性を整理していきます。
まず押さえておきたいポイントは格が重要であるということ。前述の通り、札幌記念はサマー2000シリーズ第4戦としてだけでなく、秋のGⅠ戦線に向けての始動戦としても非常に重要な役割を担っています。さらに、定量戦という点も大きなポイントで、GⅠ馬であってもハンデを背負わずに出走できるため、地力が結果に直結しやすいレースといえるでしょう。
また、札幌競馬場は直線距離は短いですが、コーナー角は非常に緩やかな競馬場であるため、立ち回りの上手さだけでは押し切れない舞台。このコース条件も実績馬の好走を後押ししています。これは前走クラス別成績にも顕著に表れており、特に、過去5年の3着内馬15頭中14頭が『「GⅠ or GⅡ勝ち馬」かつ「前走GⅠ or GⅡ組」』に該当するというデータは、本レースの特徴を強く表した傾向といえるでしょう。
<前走クラス別成績(過去9年)>
GⅠ【5-6-6-21】勝率13.2%/連対率28.9%/複勝率44.7%/単回収率55%/複回収率91%
海外GⅠ【0-1-1-9】勝率0.0%/連対率9.1%/複勝率18.2%/単回収率0%/複回収率30%
GⅡ【1-1-0-7】勝率11.1%/連対率22.2%/複勝率22.2%/単回収率52%/複回収率108%
GⅢ【3-1-2-47】勝率5.7%/連対率7.5%/複勝率11.3%/単回収率90%/複回収率51%
OPEN特別【0-0-0-10】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
3勝クラス【0-0-0-6】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
2勝クラス【0-0-0-2】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
<国内GⅠ or GⅡ勝ち馬の前走クラス別成績(過去9年)>
GⅠ【5-6-5-17】勝率15.2%/連対率33.3%/複勝率48.5%/単回収率63%/複回収率97%
海外GⅠ【0-1-1-8】勝率0.0%/連対率10.0%/複勝率20.0%/単回収率0%/複回収率34%
GⅡ【1-1-0-5】勝率14.3%/連対率28.6%/複勝率28.6%/単回収率67%/複回収率140%
GⅢ【0-0-1-8】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率11.1%/単回収率0%/複回収率33%
OPEN特別【0-0-0-2】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
血統面では非サンデーサイレンス系に注目。前述の通り、地力上位馬が走りやすいレースのため血統面からの適性評価の重要度は高くありませんが、洋芝かつ直線距離の短いコースではあるため、軽い芝の瞬発力勝負に強いサンデーサイレンス系は相対的にパフォーマンスを落とす傾向にあります。
また父系に限らず、3代内にサンデーサイレンスの血を持たない実績馬の好走率も非常に高く、昨年は該当馬であるジャックドールとパンサラッサのワンツー決着となりました。非主流血統の実績馬が、札幌記念で狙うべき馬の特徴といえそうです。
<父系別成績(過去9年)>
サンデーサイレンス系【4-4-3-58】勝率5.8%/連対率11.6%/複勝率15.9%/単回収率53%/複回収率29%
非サンデーサイレンス系【5-5-6-44】勝率8.3%/連対率16.7%/複勝率26.7%/単回収率61%/複回収率92%
血統解説
・ジャックドール
母ラヴァリーノはLady Josephine→Mumtaz Mahal系の血を強く受け継ぐ繁殖牝馬で、バネの利いたスピードを産駒に伝えています。本馬は父にモーリスを配し、母から受け継ぐスピードを父の底力で支えている配合形。淀みない流れの芝1800~2000m戦がベスト条件で、昨年優勝馬であることからも実績面、適性面ともに不安の少ない一頭といえるでしょう。
・プログノーシス
母ヴェルダはイギリス産の繁殖牝馬で、ヨーロッパ繋養時代には2013年チェヴァリーパークS勝ち馬Vordaなどを出しています。本馬はディープインパクト産駒としては非主流型の血統構成ではありますが、札幌記念にピッタリ、とまでは言えないでしょう。追走力に不安があるため、展開に左右されやすい点も注意が必要です。
・シャフリヤール
母ドバイマジェスティは2010年BCフィリー&メアスプリントを制した短距離馬で、本馬の全兄には2017年皐月賞と2019年大阪杯を制したアルアインがいます。馬体重500キロ超のアルアインに対して、本馬は450キロ前後の小柄な馬体。これは、父ディープインパクトの影響が強いことを表し、芝中長距離で脚をタメた時の瞬発力は現役屈指のモノを持っています。その分、非主流血統向きの札幌記念では相対的にパフォーマンスを落とす可能性が高いでしょう。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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