【札幌記念】「複勝率100%神話」ヒントは中山記念での実績にあり データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年札幌記念、データで探す穴馬,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週日曜の札幌メインは札幌記念。芝2000mを舞台に行われる夏の大一番には、今年もジャックドールらGⅠ馬3頭を筆頭に好メンバーが集結した。

例年と同じく、札幌芝コースはこの週からCコース替わり。仮柵が3メートル移動され、内有利のコンディションになるのが恒例行事だ。実際、札幌記念でも直近6年で1、2枠が5勝を挙げている。

そんなわけで枠順が重要なのは間違いないのだが、一旦は枠順確定前段階でアタリをつけておこう。様々なデータを駆使して、3頭の穴馬候補を導き出した。


休み明けで妙味ある堀宣行厩舎 ヒシイグアス

まずはヒシイグアスを挙げよう。GⅠ勝ちの勲章こそまだないが、重賞3勝、一昨年の香港カップではラヴズオンリーユーと頭差の2着、昨年の宝塚記念で2着の実績馬。このメンバーでもヒケを取らない。

堀宣行厩舎の管理馬 出走間隔成績(過去5年),ⒸSPAIA


同馬を管理する堀宣行厩舎は、初出走や休み明けから仕上げてしっかりと結果を出す傾向がある。過去5年のデータを見ると、中11週以下で出走した際は勝率16.4%、単回収率74%、複回収率72%。これに対して、中12週以上(つまり、約3か月以上の休み明け)なら勝率15.9%、単回収率103%、複回収率97%を記録している。久々の実戦で敬遠される中、ほぼ勝率が落ちないので、妙味は高まるというワケだ。

中12週以上のうち、前走時に馬体を減らしていたケースは勝率18.5%、単回収率137%と一段成績がアップする。間隔をとって馬体回復を図る策が成功しているようだ。ヒシイグアスも前走の大阪杯時は-18キロ。ひと息入れたことはいい方に転ぶだろう。


中山記念連対なら複勝率100% ラーグルフ

2頭目はラーグルフをピックアップした。2歳時から芙蓉S勝ち、ホープフルS3着と片鱗は見せていたが、3歳夏以降にもうひと皮むけた印象。今年は年初の中山金杯を勝ち、GⅡ・中山記念でも2着と好走している。

札幌記念では「中山の中距離実績がある馬」の活躍が散見される。2度穴を開けたペルシアンナイトは皐月賞2着だったし、昨年3着のウインマリリンはオールカマーの勝ち馬だ。馬場やレースの質的に親和性が高いのはなんとなく納得できるが、それに関連して興味深いデータがある。

札幌記念 同年中山記念の着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年の札幌記念において、同年の中山記念で連対していた馬は【1-1-1-0】で全て馬券圏内、3着以下なら【0-1-1-9】。強い相関が見られている。ちなみに、2000年までさかのぼって調査しても02年トウカイポイント(中山記念1着→札幌記念2着)の例が増えるだけ。やはり中山記念連対馬はこのレースで崩れていない。順番は逆だが、16年札幌記念を制したネオリアリズムが翌年の中山記念を勝った例もある。

札幌記念 同年大阪杯の着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


一方で、大阪杯と札幌記念はあまり好走馬を共有しない。同年大阪杯の5着以内馬は【1-0-2-4】でいまひとつ。同6着以下【2-2-2-7】複勝率46.2%の方が好走しやすく、当然こちらの組は人気もしづらいので単回収率189%、複回収率156%と驚異的だ。ちょっと長くなってしまったが、まとめると「中山記念連対馬」と「大阪杯で掲示板を逃した馬」を狙うのがよい。

中山記念2着、大阪杯11着のラーグルフはこの条件にピタリと合致。また、1頭目で挙げたヒシイグアスもドンピシャだ。中山記念連対馬の不敗神話……もとい「複勝率100%神話」が今年も継続するのか、注目したい。

GⅠ好走3歳馬は侮れない トップナイフ

最後は3歳トップナイフを候補に入れておきたい。デビューから1年余りで既に10戦を消化しながら、GⅠホープフルSでハナ差2着、弥生賞はのちのダービー馬タスティエーラから0.2秒差2着だった。

札幌記念の年齢別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年の札幌記念における3歳馬の成績は【2-0-1-6】複勝率33.3%。3キロのアローワンスがあるのだが、一見、特筆するほどよくもない。ただ、このうちGⅠで3着以内の好走歴があった馬に限ると【2-0-1-1】となる。唯一の着外は函館でのロングラン開催に重馬場が重なった13年ロゴタイプ(5着)であり、ノーカウントでいい気すらする。世代のトップ格であれば、古馬相手にいきなり通用する可能性も十二分にある。

トップナイフ自身、日本ダービーは2番手ホウオウビスケッツ以下がかなりのスローで流れる展開を後方待機。着順は14着だが、4角17番手から上がり33.1秒という極限の脚を使っているわけで、あれ以上を求めるのは酷だろう。鞍上が替わり、良績のある先行策に転じてきたら不気味な存在になりえる。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Twitterやブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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