【鳴尾記念】池江泰寿厩舎、同一重賞7勝目! ボッケリーニは7歳でもまだまだ期待できる
勝木淳
ⒸSPAIA
前日大雨も結局、良馬場に
鳴尾記念はよく施行時期が移されるレースで、12月開催での施行が多く、6月に行われるのは1986年以降で15回目になる。梅雨どきの重賞ではあるが、過去14回で良馬場は13回もあり、良以外は98年サンライズフラッグが勝ったときの不良馬場1回しかない。オールドファンはエアグルーヴが2着に敗れたレースとして記憶に刻まれているだろう。今年は台風2号の影響で前日に記録的な大雨。25年ぶりに良以外で行われるかと注目したものの、朝の時点で重からスタートした阪神の芝は、久々に顔を出した太陽と台風2号が残した強風によって回復し良馬場で行われた。良馬場を引き寄せる何かがある。
そんな良の特異重賞をボッケリーニが勝利し、池江泰寿厩舎はこれで鳴尾記念、通算7勝。ボッケリーニはこれが重賞3勝目だ。全兄ラブリーデイは同じ池江泰寿厩舎に所属し、2015年鳴尾記念の覇者。ここから4連勝で宝塚記念、天皇賞(秋)とGⅠ・2勝をあげた。父も母も同じ勝負服の金子真人オーナーブランド。その勝負服を代表するディープインパクト産駒の最終世代わずか12頭の中から、同日に英国ダービー馬オーギュストロダンが誕生した。どこかドラマチックなめぐり合わせでもある。
6歳からGⅠ以外では崩れないボッケリーニ
ボッケリーニは目黒記念連覇を目論むも、ハンデとの兼ね合いで自重し、こちらに矛先を向けてきた。陣営の判断が大当たりだった。2000m出走は5歳暮れの中日新聞杯以来で、距離的に忙しいのではないかという向きもあったが、スタート直後から上手に流れに乗り、1コーナーでは中団の外できれいに流れに乗った。良に回復した馬場は開幕週らしくスピードが出る状態で、逃げたフェーングロッテンは押し出される形であっても、スローに落とすことはなく、前半1000m通過は59.6。2ハロン目から5ハロン目までは11秒台が続き、飛ばすというより、自然と記録された印象がある。
内回りらしく残り800mから11.8-11.5-11.8-12.3とラップを刻み、全体的に息を入れにくい競馬になった。ボッケリーニは早めの動き出しに合わせ、4コーナーでは3番手の外。いつでも先頭に立てる位置まで押し上げる理想的な競馬を展開できた。昨秋のGⅠ・2戦こそ二桁着順だったが、それらを除けば、6歳はじめからGⅢ、GⅡで3、2、1、2、2、1着とまったく崩れていない。全兄ラブリーデイと同じく古馬になって力をつけており、GⅠももう少し戦えそうな予感もある。
2、3着も今が充実期
2着は逃げたフェーングロッテンがしぶとく粘り込んだ。飛ばしたわけではなく、自然な流れで先行。前後半1000m59.6-59.5という均整のとれたラップを刻んでの結果は、この馬の充実ぶりを示す。菊花賞以後は重賞でいずれも逃げて3、2、2着。自力で流れを作っての結果だけに賞賛に値する。とはいえ、惜敗続きの現状はいかにももどかしく、充実しているうちに重賞をもう一つ勝っておきたいところ。勝てるタイミングを逃したくない。
3着アドマイヤハダルは好位の後ろで流れに乗った。勝負所で外が動いてきたところで待つ場面がありながら、最後の200mでひと踏ん張りして3着を確保。基本的に前が優位な馬場状態を味方につけた面もあるが、最後の苦しいところでしっかり伸びてきた。こちらも4歳以降、長期休養明けで重馬場のマイル戦だった六甲Sを除き、リステッドと重賞で2、3、2、3着と成績が安定。古馬になって着実に力をつけた。順調に使えるようなら、タイトルも近いのではないか。
1番人気ソーヴァリアントは先行して12着と大敗を喫した。フェーングロッテンやアドマイヤハダルが粘るなか、見せ場がなかったのはなぜか。外枠で前に馬を置けず、前半で行きたがってしまったのも響いたが、外からボッケリーニに交わされると、手応えがさらに悪くなった印象もある。気性面の難しさも出たのではないか。2番人気マリアエレーナは5着。ソーヴァリアントと同じく好位で流れに乗り、見せ場は作ったものの、最後の急坂で牡馬相手に伸び負けた形だった。牝馬限定戦の愛知杯2着と3着があるが、その舞台である中京は、急坂を上がってから平坦部分が長い。平坦な舞台なら牡馬相手でも巻き返しそうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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