【NHKマイルC】「前走不利データ」を持つエエヤンとセッションを推奨 Cアナライズの本命は枠次第

貴シンジ

NHKマイルCの前走クラス別成績,ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

天皇賞(春)ではタイトルホルダーを推奨し、1番人気で競走中止。返し馬から違和感があったが、まずは無事に復帰してターフに戻ってくるのを待ちたい。

さて、今回は5月7日(日)に東京競馬場で行われるNHKマイルCについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった20頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。


重要データ:前走重賞組が中心 負けた馬は着差に注目

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


重要データで取り上げるのは前走クラス別成績。重賞以外【0-2-0-22】、GⅢ【3-4-6-48】、GⅡ【3-1-3-56】、GⅠ【4-3-1-24】となっていて、勝ち馬は全て前走で重賞を走っていた馬だった。

もう少し深掘りするなら、負けた馬は着差に注目することが重要だ。前走重賞で負けてNHKマイルCで勝利した馬は8頭いるが、うち7頭は0.5秒以内の敗戦。0.6秒以上の敗戦から同レースを勝ったのは15年クラリティスカイだけ。前走皐月賞で0.7秒差の5着だった。GⅠ組なら掲示板までは許容できそうだが、最低限のラインが0.5秒差以内の負けということになりそうだ。

ダノンタッチダウンは前走皐月賞で5.5秒差18着、ドルチェモアはニュージーランドTで0.6秒差7着となっていて、いずれも割引データに該当してしまう。

【前走重賞以外or前走重賞で0.6秒以上の負け】
・オールパルフェ
・クルゼイロドスル
・サトノヴィレ
・シングザットソング
・ダノンタッチダウン
・ドルチェモア
・フロムダスク
・ユリーシャ


前走不利データ:ニュージーランドTのエエヤン

前走はニュージーランドT1着。中山競馬場で開催されるレースだが、関東馬がなかなか勝てないレースでもあった。過去10年で関東馬が93頭出走で2勝に対して、関西馬は58頭出走で8勝。勝った2頭は14年ショウナンアチーヴ、20年ルフトシュトロームでいずれも単勝4.9倍以下の人気馬だった。エエヤンも5.2倍の2番人気だったが、関東所属で勝ち切れたことは評価すべきだろう。

芝2000mでデビューし、3戦目にマイルへ転向して以来、3連勝で駒を進めてきた。負けなしの距離でビッグタイトル獲得が期待される。


前走不利データ:アーリントンCのセッション

前走はアーリントンC2着。このレースは前走頭数が重要な要素となっていて、前走10頭立て以下のレースからの臨戦は【1-2-2-26】と微妙な成績になっていた。16年アーバンキッドが1番人気5着、22年ジュンブロッサムが2番人気4着など、3番人気以内の人気馬6頭もこのデータには含まれていたが、全頭馬券外に沈んでいる。

セッションはディープインパクト記念弥生賞からの臨戦で、その時は10頭立てだった。加えて初のフルゲートだったが、1着馬オオバンブルマイとタイム差なしの2着と、いきなり好走した。前走で多頭数を経験したここは、パフォーマンスの上昇が見込めるだろう。


血統解説:エエヤン、セッション、ドルチェモア

・エエヤン
日本での牝祖は祖母シルクフレアー。一族としてはそこまで活力があるわけではないが、母シルクヴィーナスが繁殖として優秀。半兄には14年京成杯勝ちのプレイアンドリアル(父デュランダル)と21年橘S3着のカイトゲニー(父カレンブラックヒル)がいる。4代母Katiesを根幹とするファミリーは日本で広がりを見せていて、アドマイヤムーン、エフフォーリア、ヒシアマゾン、スリープレスナイトなどGⅠ級の産駒が複数出ている。

このファミリーは芝特化のファミリーながらパワーが武器で、急坂コースを苦にしないタイプが多いことが特徴だ。本馬は父がシルバーステートで機動力があり、中山コースがベストだったのは間違いないだろう。東京替わりは割引だが、内枠を引いて持ち前の機動力を活かせれば。

エエヤンの血統表,ⒸSPAIA


・セッション
母ミスドバウィがイギリス産のため日本での牝祖は母。近親にGⅠ級はいないが、従兄弟Brimham Rocksが18年ザ・メトロポリタン(GⅠ・芝12F)で2着のほか、4代母Melodramaは21年函館2歳S2着のカイカノキセキの4代母でもある。

配合次第では距離も持つファミリーだが、母ミスドバウィはJRA芝6~7Fで4勝。距離短縮で良さを見せたように、シルバーステート産駒の本馬はマイルが適距離だろう。こちらもエエヤン同様に機動力のあるタイプだが、持続性能も高いため東京コース適性はエエヤンより上か。上がりのかかる展開になればチャンスが生まれる。

セッションの血統表,ⒸSPAIA


・ドルチェモア
日本での牝祖は祖母バイザキャット。同馬は競走馬としては目立った実績を残すことはできなかったが、繁殖としては優秀だった。本馬の母で13年桜花賞馬のアユサン(父ディープインパクト)と、17年阪神JF3着のマウレア(父ディープインパクト)を輩出した。祖母以前はアメリカで繋がってきたファミリーだが、活躍馬を多く輩出していたわけではない。

潮目が変わったのは3代母Buy the FirmがトップフライトH(GⅠ・ダート9F)を勝利してから。Buy the Firmは父がAffirmedでパワーと成長力があるタイプも、Affirmedは芝向きの産駒も出す種牡馬だったことから芝適性が全くない一族ではない。そこからStorm Cat→ディープインパクトとつけることで早熟性とスピードを兼ね備えた母アユサンや、叔母マウレアが出て一族に勢いが出た。

ルーラーシップ×ディープインパクトは菊花賞馬キセキと同じ組み合わせだが、本馬は牝系のスピード性能が高く、マイルが適距離となっている印象だ。東京コースもサウジアラビアRCで経験済みも、ベストは直線が長くて坂のある阪神外回り。ただし朝日杯FSはそこまでレベルが高くない可能性があるので、2歳時の成績で人気するなら軽視してみても。

ドルチェモアの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズではエエヤンとセッションを推奨

今回のCアナライズではエエヤンとセッションを推奨する。どちらを本命にするかは前者の枠次第としておく。エエヤンが持ち前の機動力を活かせる内枠を引いた場合は、その実力に期待。そうでなかった場合はセッションの激走に期待する。

ニュージーランドTは前半が速く、ドルチェモアが早々に脱落したように前にいた馬にはきつい展開だった。そんなレースを掛かりながら4角3番手で押し切ったのだから、エエヤンの実力は素直に評価したい。アーリントンCはレースの内容を見る限り、抜けた馬はいなかったという評価。しかしセッションは前走が初のフルゲートの競馬だった。頭数慣れが見込める今回は、アーリントンC組の中では最も上積みを期待できるのではないか。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほかPOG本での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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