単勝5倍以上の1番人気は思い切って消し!? 過去の大混戦GⅠレースを振り返る
高橋楓
ⒸSPAIA
GⅠで単勝5倍以上の1番人気は過去に13頭
「膝から崩れ落ちる」という言葉を体感した中で、忘れられないのは2007年のNHKマイルC。2走前に大儲けさせてもらったムラマサノヨートーの馬連総流しと、馬場が悪くなっていたことを考慮しフレンチデピュティ産駒のハイソサエティーの単複を購入し、その日はテレビで観戦していた。
パドックを見ているとピンクカメオの父もフレンチデピュティだと気付く。嫌な予感がしながらも「さすがに桜花賞で負け過ぎか」と自分の心に大丈夫と言い聞かせた。結果はご存知の通り。最低人気のムラマサノヨートーはわずかに届かず3着、ハイソサエティーは7着。1着はピンクカメオ。人気馬総崩れとなった中で穴馬券を買っていたのに痛恨の取り逃がしだった。
さて、今年のNHKマイルCも上位人気は大混戦模様。そこで今回は単勝5.0倍以上になった際のGⅠレースにスポットをあて、振り返ってみたい。
早速、グレード制導入以降の単勝5倍以上だった1番人気の結果を振り返っていこう。
2017年 NHKマイルC カラクレナイ 17着(5.0倍)
2015年 高松宮記念 ストレイトガール 13着(5.1倍)
2012年 安田記念 サダムパテック 9着(6.6倍)
2007年 NHKマイルC ローレルゲレイロ 2着(5.5倍)
2006年 安田記念 オレハマッテルゼ 10着(5.7倍)
2005年 安田記念 テレグノシス 6着(5.8倍)
2005年 天皇賞(春) リンカーン 6着(5.4倍)
2000年 フェブラリーS キングヘイロー 13着(5.1倍)
1993年 ジャパンC コタシャーン 2着(5.2倍)
1990年 ジャパンC ベルメッツ 7着(5.8倍)
1990年 エリザベス女王杯 トウショウアイ 2着(5.1倍)
1989年 日本ダービー ロングシンホニー 5着(6.0倍)
1988年 日本ダービー サッカーボーイ 15着(5.8倍)
なんと勝ち馬は1頭もおらず【0-3-0-10】で5頭が二桁着順に負けている。混戦ということは押し出された1番人気だが、さすがに負け過ぎの感がある。思い切って1番人気を消すのも手かもしれない。そして13レース中10レースが東京競馬場で行われており、うち安田記念3回、NHKマイルC2回と府中のマイルで5回発生している。
NHKマイルCだけ見ると、2017年のカラクレナイはフィリーズレビューを含む3連勝で臨んだ桜花賞4着から転戦し17着。2007年のローレルゲレイロは重賞制覇こそなかったが、朝日杯FS2着を含めて重賞で善戦を続け【1-4-2-1】の成績だった。
今年は朝日杯FSの覇者ドルチェモアが参戦するが、前哨戦のニュージーランドTで単勝1.7倍に支持されながら7着に敗退。朝日杯FS2着のダノンタッチダウンは皐月賞で殿負け。2歳戦で活躍した馬が苦戦する中、マイル転向後3連勝でニュージーランドTを制したエエヤンに注目が集まる。
前走で掲示板を外している馬も多く、当日人気が割れそうなだけに1番人気のオッズから目が離せない。
2000年以降の7レースでは馬連万馬券が5回
次に気になる配当金を振り返りたい。ここでは3連単導入以降の7レースを見ていく。
2017年 NHKマイルC アエロリット(2人気)→リエノテソーロ(13人気)
馬連17290円 3連複50600円 3連単296160円
2015年 高松宮記念 エアロヴェロシティ(4人気)→ハクサンムーン(6人気)
馬連7480円 3連複14000円 3連単81560円
2012年 安田記念 ストロングリターン(2人気)→グランプリボス(13人気)
馬連8510円 3連複92530円 3連単468600円
2007年 NHKマイルC ピンクカメオ(17人気)→ローレルゲレイロ(1人気)
馬連30800円 3連複1221770円 3連単9739870円
2006年 安田記念 ブリッシュラック(3人気)→アサクサデンエン(10人気)
馬連12770円 3連複56730円 3連単288270円
2005年 安田記念 アサクサデンエン(7人気)→スイープトウショウ(10人気)
馬連13990円 3連複80600円 3連単465840円
2005年 天皇賞(春) スズカマンボ(13人気)→ビッグゴールド(14人気)
馬連85020円 3連複225950円 3連単1939420円
改めて見ると凄い数字が並ぶ。ピンクカメオが勝った2007年のNHKマイルCは、17番人気ピンクカメオ1着、最低人気ムラマサノヨートーが3着に激走し3連単900万円オーバー。他にも2006年の安田記念は、前年覇者のアサクサデンエンが10番人気で2着に入り高配当だった。
ここからはオカルト的な話になるが、単勝1番人気が5倍オーバーの府中のマイルGⅠは全て「一桁人気と二桁人気の組み合わせ」で決まっている。フルゲートの場合、馬連なら81点。トリガミにはならない事になる。当日のオッズ次第ではおみくじ程度に遊んでみるのも面白いかもしれない。
決して無謀ではなかったキングヘイローのダート挑戦
父は1986年に凱旋門賞、現在のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS、エクリプスS、英2000ギニーなどを制覇し歴代最強馬とも言われているダンシングブレーヴ。母はケンタッキーオークスなどGⅠ・7勝のグッバイヘイロー。
当時としては何故日本で走っているのか不思議でならない程の世界的良血馬。その名もキングヘイロー。デビュー3連勝を飾るとクラシック候補の仲間入り。ちなみに元ジョッキーの福永祐一氏に初めてのJRA重賞制覇をプレゼントしたのもこの馬だった。しかし、この年のライバルたちは尋常ではなかった。
クラシックではスペシャルウィークにセイウンスカイ。外国産馬に目を向けるとエルコンドルパサー、グラスワンダー、アグネスワールド、マイネルラヴ。ウイングアローやエアジハードもこの世代だ。皐月賞では惜しい2着も、日本ダービーでは驚異的なハイペースで逃げ14着。菊花賞ではマヤノトップガンが記録したレースレコードより0.5秒も速く走っているのに5着。先頭を駆け抜けたセイウンスカイが当時の世界レコードを叩き出したのだから、ぐうの音もでない。
その後GⅠでは結果を残せずにいたが、5歳(現在の4歳)秋にマイルCSでエアジハードに0.2秒差の2着。スプリンターズSではブラックホークとアグネスワールドに0.2秒及ばず3着。あと少しで栄冠に手が届くところまできていた。
そのキングヘイローが10回目のGⅠ挑戦の場に挑んだのが2000年のフェブラリーSだった。思い返せば母は米国のダートGⅠで大活躍したグッバイヘイロー。適性がある事も十分に考えられる。しかし相手は歴戦の砂の強豪たち。ファンも大いに悩んでいた。
2番人気のゴールドティアラはダート重賞2勝もデビュー戦のダート1000mレースで後続を1.4秒も突き放した快速馬。3番人気は岩手の英雄メイセイオペラ。前走の東京大賞典で11着に敗れ評価を下げてはいるが前年の覇者であった。
4番人気ウイングアローはダート路線でGⅠ勝利こそないが安定した走りをしていた。5番人気に前年のNHKマイルC覇者シンボリインディ。そして桜花賞馬で前年のこのレース5着馬のキョウエイマーチまでが単勝一桁台になる大混戦模様だった。
しかしゲートが開くとキングヘイローは内枠が災いしたのか砂をかぶり全く反応せず、後方のまま終了。結果論かもしれないが、この時に力を温存できたおかげで次走の高松宮記念で初のGⅠ制覇を果たせたのかもしれない。
今年は昨年の朝日杯FSを3連勝で制したドルチェモアが参戦も、前走のNZTではまさかの7着敗退。一気に混戦ムードに突入した。NZTを3連勝で勝ったエエヤン、アーリントンCで重賞2勝目を挙げたオオバンブルマイ、牝馬からもシングザットソングやウンブライルなど実績馬が加わる。1番人気の単勝オッズが何倍になるか注目だ。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。
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