【天皇賞(春)】超長距離戦のセオリーは「主流血統の軽量馬」狙い 有力馬の血統解説

坂上明大

2023年天皇賞(春)の血統と傾向,ⒸSPAIA

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傾向解説

3年ぶりに京都に舞台を戻す天皇賞(春)。芝3200mという日本のGⅠでは最長距離で行われる特殊条件のため重要なポイントは阪神時代と大きく変わっていません。しかし、京都に戻ることで強さを発揮する血統も少なくなさそうです。血統を中心に天皇賞(春)で求められる適性を整理していきます。

まず紹介したいデータは軽量馬の方が距離適性が高い傾向にあるということ。これは京都開催の天皇賞(春)に限らず、芝3000m以上で行われるような超長距離戦で共通する傾向です。2010年以降に行われた芝3000m以上のレースでは牡馬で馬体重459kg以下の馬の成績が【15-14-14-118】勝率9.3%、複勝率26.7%と非常に良く、これは重量馬の好走率が高いスプリント戦とは真逆の傾向といえます。キタサンブラックのようにフレームが大きいがために馬体重が500kg以上になる馬もいますが、全体の傾向としては無駄肉の少ない軽量馬に向くレースといえるでしょう。

芝3000m以上での牡馬の馬体重別成績(2010年以降),ⒸSPAIA


血統面ではステイゴールド、ディープインパクト、ハーツクライという芝長距離路線を牽引する種牡馬に注目。過去10年の京都開催時には、上記3頭とキタサンブラックを出したブラックタイドが連対圏内を独占しており、そのなかでも軽量馬の成績は非常に優秀。芝長距離の主流血統の軽量馬を狙うのが超長距離戦のセオリーといえるでしょう。

種牡馬別成績(2013~20年),ⒸSPAIA


また、京都開催だからこそ狙いたいのはPrincely Giftの血。同血脈は柔軟性と軽いスピードに優れ、平坦コースや下り坂で強さを発揮する血統のひとつです。阪神開催時には1頭も好走馬を出せませんでしたが、過去10年の京都開催時の勝ち馬はいずれもPrincely Giftの血を内包しており、京都開催だからこそ狙いたい血統のひとつといえるでしょう。

Princely Gift内包馬(過去10年),ⒸSPAIA


血統解説

・タイトルホルダー
昨年7馬身差の圧勝劇を披露したチャンピオンステイヤー。菊花賞でも2着馬に5馬身差をつけており、3000m以上の超長距離戦では現役最強といって間違いない実力馬です。ただ、血統的にはNureyev≒Sadler's Wellsの5×4を中心とした重厚な血を豊富に持つため、京都より阪神、軽い馬場より重い馬場で相対的にパフォーマンスを上げるタイプといえるでしょう。

・ジャスティンパレス
母パレスルーマーはアメリカで2013年ベルモントS勝ち馬Palace Maliceを出し、日本でも2022年阪神大賞典2着馬アイアンバローズなどを出すスタミナ豊富な繁殖牝馬です。本馬は父にディープインパクトを配し、450kg前後の馬体重からも超長距離適性の高さが窺える、レース傾向にピッタリの1頭。昨年の菊花賞ではアスクビクターモア、ボルドグフーシュの後塵を拝しましたが、本格化した今なら十分に逆転が期待できるでしょう。

・シルヴァーソニック
ステイゴールドの後継種牡馬として超長距離戦での強さをしっかりと受け継いでいる父オルフェーヴル。本馬は馬体重450kg前後の小柄な馬体でもあり、発馬で落馬してしまった昨年の天皇賞(春)以外の芝3000m以上のレースでは一度も崩れていないピュアステイヤーです。道悪馬場には滅法強いステイゴールド系なだけに、週末の雨予報もプラスに働くでしょう。

2023年天皇賞(春)の有力馬の血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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