【フィリーズレビュー】ハイペース決着も今年は好位抜け出し シングザットソングはひと味違う!

勝木淳

2023年フィリーズレビュー、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

今年は前半600m33.2

桜の舞台に立てる機会は生涯一度きり。立てるものなら立たせたい。それがみんなの本音だ。だが、競走馬には個性があり、マイルはギリギリ、もしくは長いかもしれないといった馬もいる。もちろん、やってみなければわからないし、試してみないと判断もできない。そういった馬が桜の舞台への夢に挑戦するにあたり、1400mのフィリーズレビューは最適な舞台だ。今年もフルゲートがエントリー。1400mならなんとかなる短距離型が集まっただけあって、やはりレースはハイペースだった。

フィリーズレビューで前半600m33.5以下だったのは過去3回。17年33.5、20年33.4、22年33.5。今年は33.2を記録し、レース史上最速ラップを刻んだ。過去3回の勝ち馬の4角通過順は14、10、11番手ですべて追い込みが決まった。内回りとはいえ、阪神芝1400mでスプリント戦級のハイラップになれば、先行勢は残せない。ペースに関係なくフィリーズレビューは元々、追い込みが決まりやすいレースで、前半600m33.2ならズブズブの決着になってもおかしくなかった。


好位から抜け出したシングザットソング

ところが勝ったシングザットソングは4コーナーを4番手で回り、先行して押し切った。ましてここまで3戦はいずれも後方から差す競馬であり、前走エルフィンSではスローペースを4コーナー11番手から追い込んで3着、終いに賭ける競馬である程度結果を出してきた。もちろん賞金加算はできず、桜花賞に向け状況的にはここがラストチャンス。そこでスタートを決め、このハイペースを前で受け、勝ち切ったのは価値がある。

ひとつはラップ構成にある。11.8-10.3-11.1-11.7-12.0-11.8-12.0。中盤でわずかにペースが落ちた。向正面終わりから4コーナーにかけて600~1000mが23.7と若干緩み、直線まで息が入らない流れではなかった。とはいえ、ほかの先行勢は8着ポリーフォリアが最高で、他は軒並みふた桁着順、シングザットソングの粘り腰は恵まれたわけではない。評価できるのはハイペースで前に行っても息を整えられる操縦性の高さにある。ドゥラメンテ産駒は父のイメージ以上に操縦性に優れた馬が多く、昨年の二冠馬スターズオンアースも桜花賞とオークスを異なる騎手で勝ったようにクセがない。シングザットソングも続けるか。


またもハイペースに巻き込まれたリバーラ

2着7番人気ムーンプローブは阪神JFではハイペースを強気に攻めて17着。この経験が今回活きたか、中団追走から鋭く伸びた。阪神JFは引っかかってしまったので、再度の距離延長でリズムをとれるかどうか。課題はここだろう。

3着11番人気ジューンオレンジはハイペースに乗じた面はある。冬の小倉開幕週芝1200mで未勝利を勝ち、前走かささぎ賞は前後半600m33.4-34.9のハイペースを出遅れて後方から差して5着。先行、逃げで決まり、決着時計1:08.3のスピードレースの経験がここでものをいった形だ。半兄ジューンベロシティは小倉芝1200m2勝、障害2勝(小倉と福島)、小倉で行われた今年の春麗ジャンプSで2着に入った小倉巧者。ジューンオレンジも距離延長で壁に当たったとしても、夏の小倉で距離短縮といった状況で狙ってみたい。

1番人気ブトンドールは6着。4コーナーから最後の直線にかけて内にモタれたのか、かなり追いづらそうだった。桜花賞出走は賞金面で問題ないが、課題が残った。3番人気リバーラは12着。ハイペースで失速したものだが、これで阪神JFと2戦続けて同じような負け方だったのは気になる。ファンタジーSのようなマイペースが理想だろう。ただ、本番は先行勢の組み合わせが楽になる可能性もある。逃げ馬は常にその可能性を頭に入れておこう。


2023年フィリーズレビュー、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

《関連記事》
【阪神大賞典】中心は有馬記念組 ボルドグフーシュ、ディープボンド、積極策ならジャスティンパレス
【スプリングS】実績馬オールパルフェに迫る昇級先行馬たち! ホウオウビスケッツとハウゼに好データ
【ファルコンS】データ優勢ペースセッティングとバグラダス 前走秀逸カルロヴェローチェの懸念点とは?

おすすめ記事