【東京新聞杯】スローペースの瞬発力勝負には王道の父サンデーサイレンス系産駒 有力馬の血統解説

坂上明大

東京新聞杯のレース傾向に合致する血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

年齢別成績(過去10年),ⒸSPAIA


最初に紹介したいデータは年齢別成績。先述の通り、GⅠシーズンまで間隔が空く2月頭に行われる東京新聞杯では、GⅠ上位勢が休養中に賞金を加算したい若手の台頭が目立つレースです。そのため、4歳>5歳>6歳>7歳以上という傾向は明確で、賞金が足りない若手の素質馬を狙うのが本レースのテーマといえるでしょう。

また、年齢による優位性はペースも少なからず影響しています。GⅠ特有のハイペースになりやすい安田記念とは異なり、東京競馬場らしいスローペースからの直線勝負になりやすい点も東京新聞杯の特徴。瞬発力勝負では年齢による優位性が生まれやすいと考えられるため、適性面でも高齢馬には厳しい条件となっています。

父サンデーサイレンス系の成績(過去10年、単勝オッズ19.9倍以下),ⒸSPAIA


血統面ではサンデーサイレンス系産駒に注目。過去10年の平均前後半3Fラップは35.3-34.2の後傾1.1秒。先にも述べた通り、スローペースの瞬発力勝負になりやすいのが東京新聞杯の大きな特徴です。そうなると、スプリント寄りの適性よりも中距離寄りの道中で脚をタメる資質が求められ、実績面でも血統面でも中距離指向の強い馬が走りやすい条件といえるでしょう。サンデーサイレンスは1990年代以降の日本の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬。そして、日本競馬の中心は芝中距離路線ですから、本レースでの好走が目立つことも当然の結果です。

血統解説

・ナミュール
近年、勢いに乗るヴィートマルシェ牝系に属し、半兄ヴェスターヴァルトは2020年ファルコンS3着馬、半妹ラヴェルは2022年アルテミスS優勝馬という良血です。ノヴェリスト、ハービンジャー、キタサンブラックといずれも瞬発力に欠ける父の産駒ですが、このきょうだいが見せる爆発的な末脚がヴィートマルシェ牝系の良さといえるでしょう。1600mは少々短いですが、東京新聞杯であればリスグラシューのように勝ち切ってしまう可能性も否定できません。

・ジャスティンカフェ
エピファネイア×ワークフォース×サンデーサイレンス×リアルシャダイという字面だけ見れば長距離馬と評価したくなる血統表。サンデーサイレンスの4×3を中心に、Sadler's Wellsの4×4、Robertoの4×5など中長距離向きの血筋を掛け合わせており、胴の長い馬体からも本質は中距離向きの印象です。ただ逆に言えば、マイル重賞を勝ち切るなら東京新聞杯のような中距離指向の強いレースではないでしょうか。GⅠシーズンに向けて何としても賞金を加算したい一戦です。

・ピンハイ
サンデーサイレンス系ミッキーアイル産駒の4歳牝馬。賞金面でも余裕がなく、レース傾向からはピッタリの一頭といえるでしょう。前走のエリザベス女王杯では外有利のトラックバイアスのなか内々を走らされており、ナミュールとの比較でもこの条件であれば大きな差はないと見ています。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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