【セントライト記念】ガイアフォースが菊花賞有力候補に アスクビクターモアの今後は上積みがポイント

勝木淳

2022年セントライト記念回顧,ⒸSPAIA

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主役として受けて立ったアスクビクターモアの今後

過去10年で前走日本ダービー【6-5-4-21】。かつ5着以内【3-2-1-4】。セントライト記念は春の実績馬が基本的に優勢。今年もダービー3着アスクビクターモアを中心に春の中山以来の出走ローシャムパーク、夏の上がり馬ガイアフォース、京成杯Vオニャンコポンらがどこまで迫れるかという様相。結果はアスクビクターモアが2着。ガイアフォースがゴール前の競り合いを制した。

アスクビクターモアは春と同じく先行力と粘り強さを発揮。前半1000m通過1.00.3は休み明けのアスクビクターモアには好都合なやや緩めのペースであり、レースの中心は間違いなく同馬だった。競馬の形は申し分なかっただけに、最後の直線で後ろを思ったほど離せず、最後はガイアフォースに捕まったのはなぜか。休み明けが響いたか。

私が夏に取材したときから、元々、菊花賞目標ではなく、セントライト記念の結果と内容次第で天皇賞(秋)か菊花賞を選択すると決まっていただけに、今回のレースをどうジャッジするのか、陣営の判断を待ちたいところ。菊花賞の相手関係は春と比べれば楽になり、距離の面も不安はないタイプ。中4週の関西遠征と中5週の強敵相手の地元競馬、アスクビクターモアの状態面がここを使ってどういった変化を見せるか。そこを見極めたいのではないか。最後の200mのラップタイムは12.2。コース形態の違いもあるが、ダービーの厳しい流れで最後12.0。本来はもう少し粘れるのは確かだ。

父母からスタミナを受け継ぐガイアフォース

アスクビクターモア中心の競馬のなか、勝ったガイアフォースは見事な運びだった。道中は無理なく、アスクビクターモアの背後をとり、その動き出しのタイミングに合わせてスパート。前半から射程圏に入れながらの競馬は完璧、すべてがうまくいった。最後はアスクビクターモアの抵抗もあったが、ねじ伏せたあたりはたくましい。

7月の1勝クラス国東特別は小倉芝2000mで1.56.8のレコード。ハイペースを番手から押し切った内容はスピード、スタミナともに感じる。キャリア5戦すべて2着以内で底を見せておらず、父キタサンブラックはセントライト記念と菊花賞を連勝。3歳秋はその成長曲線にも期待できる。母ナターレは南関東で活躍、川崎2100mの戸塚記念を逃げ切った。父母どちらからも受け継いだスタミナがある。アスクビクターモアをマークした形がハマったとはいえ、自力で動き、競り合いを制した内容は濃く、菊花賞の有力候補といっていい。

3着ローシャムパークはガイアフォースの背後をとり、こちらもアスクビクターモアの仕掛けを見ながら待てるポジションだったが、勝負所の4コーナーで1、2着馬ほど加速しきれず、置かれたのは痛かった。休む前は中山でまくって1勝クラスを突破しており、休み明けとはじめての重賞挑戦が影響したか。2着との3馬身差は置かれた分もあるが、やや力の差も感じる。菊花賞の出走権は獲得したが、本番好走には上積みが必要だろう。

4~7着はセイウンハーデス、ラーグルフ、ボーンディスウェイ、オニャンコポンと春のクラシック出走組が並んだ。アスクビクターモアとの比較でいえば、春の力差を詰められたとはいえない。ここから巻き返しは難しそうだが、4着セイウンハーデスは4コーナーでアスクビクターモアと並んだ際、明らかに手応えで見劣りながらも、4着に粘っていた。中山のキツいコーナーに戸惑ったようで、直線では再び反応していた。自己条件、ゆったりしたコースであっさり巻き返す場面もあるだろう。

2022年セントライト記念回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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