【2歳馬ジャッジ】札幌芝で好ラップ刻んだフォトンブルー 武豊騎手への今夏最大のプレゼント
山崎エリカ
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シルバーステートの半弟がデビュー 8月4週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はシルバーステートの半弟フォトンブルーや、のちに小倉2歳S2着のバレリーナが出た8月27日、28日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
8月27日(土) 新潟1R 優勝馬 エマヌエーレ 指数-5 評価B
リバティアイランドが勝利した新馬戦で逃げて3着だったエマヌエーレ。今回は15番枠から好発を切って、3番手の外で折り合う競馬。最後の直線ではさらに外に出し、馬場の良いところを通って、最後までほぼ真っ直ぐに突き抜けて勝利した。
結果は2着に3馬身差。5F通過が59秒3と緩みない流れで走破タイムも1分34秒6。この週の新潟芝としてはなかなか良い時計だった。指数も未勝利クラスとしては悪くない。突き抜けて単独先頭に立った後も最後まで真っ直ぐ走れていた点は評価できる。勝ち負けを繰り返しながらも、楽しめそうな馬になりそうだ。
新馬戦ではエマヌエーレとリバティアイランドのタイム差は0.5秒。今回エマヌエーレが記録した指数から単純計算すれば、リバティアイランドがダリア賞に出走していた場合はミシシッピテソーロと1着争い。もし新潟2歳Sに出走していればウインオーディン、シーウィザードと2着争いだったという計算になる。上積みは馬ごとに違うので、そんな単純計算は通用しないが、果たして今後どうなるか。
8月28日(日) 新潟11R 優勝馬 キタウイング 指数-11 評価B
新潟2歳Sは新馬戦時の走りを評価するならシーウィザードが断然と言えるメンバー構成だった。ただ、過去2戦2勝で重賞を勝ったような馬たちと比較した場合、シーウィザードがデビュー2戦目で重賞勝ちレベルだったかと言えば、やや足りない面があったのも確か。それでも今回の相手なら圧倒してしまうのではと思われた。
シーウィザードは直線半ば過ぎで先頭に立つ強い内容の競馬はできたが3着まで。最後に連闘馬キタウイング、ウインオーディンが差してきて、これらが1着、2着。連闘で仕上がった馬の強さ、バテなさが最後に活きた。
今年の新潟2歳Sの決着指数は、昨年のセリフォスと比較すると落ちる。キタウイングの指数は昨年の新潟2歳Sなら3着争いレベルだ。ただ昨年が新潟2歳Sとしては高レベルだっただけ。例年と比較し、特別に落ちるわけではないのでご安心を。
ただ今年の2歳芝路線は昨年の同時期と比較するとやや低調に推移している感がある。新馬勝ちの内容も6月東京開幕週の2頭が突出した感があるだけで、ここまで来ている。来週からの秋競馬開幕で昔のように大物が大量に出現してくるのだろうか。
8月27日(土) 小倉1R 優勝馬 フラッシングレート 指数-4 評価B
前走の新馬戦でもやや出遅れたが、今回は7番枠からはっきりと出遅れて後方からのレースとなったフラッシングレート。しかし、このレースは5F通過58秒5と2歳未勝利クラスとしては厳しい流れとなり、前の馬群と後方馬群に大きく分かれた。本馬は3角あたりでは前の馬群にかなり離され、絶望的かのようにも見えたが、3~4角で一気に押し上げ、長く良い脚を使って伸びて来た。
結果は2着に3馬身つけて快勝。展開が向いたことは確かだが、スタミナの豊富さを感じさせる勝利だった。今回もスタートが悪かったことは確かで、まだ上昇余地を感じさせる。スタミナが活きる流れの一戦で、一発がありそうな馬だ。
8月27日(土) 小倉5R 優勝馬 スカパラダイス 指数-3 評価B
2番枠から五分のスタートを切ったが、行き脚が付かず後方からのレースとなった。しかし、向正面から外に出すと進出開始。3角では好位に上がって4角手前で捲りきって先頭に立ち、そのまま押し切って3馬身差をつけての勝利だった。
ラスト2Fは12秒0-11秒7。自ら動いて最後まで加速できた内容は高く評価できる。出脚に鈍さを見せていたことから、能力は今回の走り以上に高いと見るべきだろう。
ただ今回は斤量50Kgの減量騎手が騎乗したもの。減量騎手起用で新馬勝ちした馬は意外と伸びないこともある。今回は捲って最後まで減速せず、ロスがありながら強い内容の競馬ではあったが、過信できないところもある。
8月28日(日) 小倉5R 優勝馬 コナコースト 指数-3 評価A
3番枠からトップスタートを決め、一旦先頭に立ったコナコースト。そのまま行くかと思われたが、行きたがる面を見せながらも外の馬を行かせて、3番手の内。3~4角で包まれてポジションが下がったが、4角出口で外に出されるとしっかり伸びて差し切った。
ラスト2Fは11秒6-11秒5。まだ余裕を感じる。折り合いを勉強しながら結果も出した。今回の走破タイムは1分49秒1。タイムが平凡だったことも今後の成長を考えれば良い材料。マイナス点の少ない内容での新馬勝ち。今後の成長が期待できる。
8月28日(日) 小倉6R 優勝馬 バレリーナ 指数-4 評価A
1番枠から好発を切って、二の脚でスッとハナに立って逃げたバレリーナ。2番手のディオーネに突かれて緩みないペースを刻みながらも本馬は手応えに余裕があった。一方のディオーネは4角で早々と失速。最後の直線で馬場の良い2頭分外に持ち出され、さらに後続馬たちが負かしにきたが、それらの馬たちのほうがバテて脱落。2着馬に3馬身半差をつけての逃げ切り勝ち。強かった。
走破タイムの1分08秒9は前日の九州産オープンのひまわり賞と同タイムと優秀。ラスト2Fは11秒5-11秒9とマズマズだが、新馬としてはなかなかの好指数を記録した。
これにより今後が楽しめそうな馬と綴る予定だったが、本馬は連闘で小倉2歳Sに出走。見事2着となった。今年の2歳重賞は連闘馬が大活躍。新馬勝ち直後の素質馬たちが微妙に足りない分、目一杯の勝負態勢が結果に繋がっているのだろう。ひと昔前の競馬のようで、馬券的には面白い。
8月27日(土) 札幌1R 優勝馬 キングズレイン 指数-3 評価A
前走の新馬戦は1番人気に支持されたが、函館の重馬場で伸びきれず3着。今回は5番枠からスタートはまずまずだったが、それなりの二の脚で好位の外目で折り合う競馬。前走よりも前の位置でレースを進められたことに進化を感じた。
最後の直線、ラスト1Fで先頭に立ったところで外のトーセントラムに並ばれた。ラスト2F11秒6-11秒5と加速していく、迫力のある叩き合い。キングズレインのほうが態勢は不利に見えたが、ハナ差前にでたところがゴールで勝利した。
今回2着のトーセントラムは、ドゥーラが勝利したハイレベル未勝利戦で4着だった。キングズレインは今回なかなか強い馬を負かしたと言える。ラスト1Fの伸びには光るものがあっただけに、今後の成長が期待できそうだ。
8月27日(土) 札幌5R 優勝馬 ペリエール 指数-15(ダート) 評価A
6番枠から五分のスタートを決めて、断然1番人気ユティタムの直後で、好位の外を追走したペリエール。向正面で徐々に進出開始。先頭に並びかけ、ユティタムもそれに抵抗して前へ。3角でユティタムが先頭に立ったが、4角手前で同馬をかわすと、最後はぺリエールが突き放して勝利した。
走破タイムの1分45秒7は同日3歳未勝利戦のタイムを大きく上回り、古馬1勝クラスと差のないタイム。指数はかなり優秀。今回2着のユティタムも並の新馬戦ならば楽に勝てる指数を記録した。ラスト2Fは12秒0-12秒7と失速。好タイム勝ちではあるが、そこまで余裕があったわけではなさそうだ。
毎度述べているが、ダート新馬戦を圧勝した馬は疲れを残しやすいもの。順当に伸びないこともある。ただ、今回の指数はこの時期の2歳ダート新馬戦としてはかなり優秀、上位2頭は能力が高い。順当ならばかなり上を目指せるだろう。
8月28日(日) 札幌5R 優勝馬 フォトンブルー 指数-3 評価AA
6番枠からまずまずのスタートではあったが、ボヤっとしている感じでダッシュがあまり付かなかった。道中は中団待機。3~4角でポジションを上げて2番手に進出。直線では先頭のエルデストサンを目標に、馬場の良い外からしっかりと差し切った。
ラスト2Fは11秒7-11秒4と加速してゴール。時計のかかる札幌の芝でこの数字はかなり高く評価できる。フォトンブルーの半兄は5戦4勝でほとんど底を見せないまま引退し、素質が高く評価されたシルバーステート。武豊騎手にとって今夏最大のプレゼントはワールドオールスタージョッキーズ優勝ではなく、このフォトンブルーだった可能性がある。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)フォトンブルーの指数「-3」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.3秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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