【関屋記念】1、4番人気が信頼度高いマイル重賞 2012年勝ち馬は三冠牝馬の姉・ドナウブルー

緒方きしん

関屋記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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素質馬と実績馬が激突する伝統のマイル戦

レパードSはカフジオクタゴンとC.ホー騎手が勝利。人馬共に初めてのJRA重賞勝利となり、記念すべきレースとなった。また、エルムSではフルデプスリーダーと丹内祐次騎手が勝利を収めている。

さて、今週はサマーマイルシリーズの第3戦、関屋記念が開催される。マイル路線で現役屈指の素質を持つイルーシヴパンサー、今年の京都金杯を制している実績馬ザダル、2020年の最優秀2歳牡馬ダノンザキッド、名牝チヨダマサコの血を引くピースワンパラディなどが参戦を予定。どの馬が好走してもおかしくないほどのメンバー構成だ。

1966年からの歴史を持つ伝統の一戦、関屋記念。過去の勝ち馬にもダイワテキサスやマグナーテン、カンパニーやマルカシェンクといった個性派の名馬たちが名を連ねる。近年もマルターズアポジーやプリモシーンらがここで勝利をあげた。今回は関屋記念の歴史を振り返る。

狙いは4番人気馬!?

関屋記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気は【2-0-2-1】で、馬券圏内という意味では信頼度が高い。また、同じく信頼できるのが4番人気。2021年ロータスランド、2020年サトノアーサーと連覇しているほか、2019年ソーグリッタリングは3着、2017年ウインガニオンは2着と、この5年間で4度も馬券に絡んでいる。

一方、2、3番人気はやや苦戦。2番人気はここ5年で一度も馬券に絡めておらず、最後に馬券圏内に入ったのは2015年勝ち馬のレッドアリオンまで遡る。3番人気は2018年にエイシンティンクルが3着になっているが、昨年はアンドラステが8着、一昨年はグルーヴィットが7着と掲示板外に敗れた。

近年は特に牝馬の活躍が目立つ関屋記念。2018年には1着プリモシーン、2着ワントゥワン、3着エイシンティンクルと上位3頭全てが牝馬だった。以降も毎年、馬券圏内に入っていて、昨年も1着ロータスランド、3着ソングラインと2頭が好走を果たした。

偉大な妹を持つ、ドナウブルー

2012年の勝ち馬ドナウブルーもまた、牝馬である。デビュー戦から2連勝を果たした素質馬で、2011年のシンザン記念では後の三冠牡馬オルフェーヴルや後の桜花賞馬マルセリーナらを相手に1番人気に推されたほどだった。

そこでも5着と崩れなかったものの、続くフィリーズレビューでも1番人気4着と賞金を加算できなかったため、桜花賞は惜しくも抽選で除外となってしまう。夏を越して、ローズSでも5着など大崩れはしないものの、結局、牝馬三冠レースには一度も出走することなく3歳シーズンを終えた。そのリベンジを狙った一年が、2012年だった。

4歳シーズン初戦となった京都牝馬Sで、ドナウブルーは念願の重賞制覇を達成。GⅠ初挑戦となったヴィクトリアマイルでは、三冠牝馬アパパネらに先着したものの、勝ち馬ホエールキャプチャに半馬身及ばずの2着となった。安田記念は10着と大敗したが、秋の躍進を狙って夏のマイル戦・関屋記念に出走した。

その年の関屋記念には、前年の2着馬エアラフォンが出走していたほか、スマイルジャック、レインボーペガサスといった7歳のベテラン勢、4歳牝馬マイネイサベルなど多彩なメンバーが揃った。

1番人気に推されたドナウブルーは、好位からの競馬を展開。直線で並びかけてきたエーシンリターンズとの大接戦を制し、重賞2勝目をあげたのだった。秋にはマイルCSで牡馬を相手に3着と好走し、翌年にもヴィクトリアマイルで5着、マイルCSで5着などマイル戦線で活躍。2014年に引退し繁殖牝馬となった。

ドナウブルーが関屋記念を制した2012年は、三冠牝馬が誕生した年でもある。それが、ドナウブルーの全妹であるジェンティルドンナだ。

前年に姉が5着に敗れたシンザン記念を快勝したジェンティルドンナは、チューリップ賞での敗北を経て、そこから怒涛の5連勝。ジャパンCでは、姉と同期のオルフェーヴルも撃破した。同時期にGⅠ戦線を盛り上げた2頭の姉妹は、ファンに強烈な印象を与えたのだった。

今年も楽しみな牝馬が集結!

ドナウブルーとジェンティルドンナは、いま繁殖牝馬として新たなステージで火花を散らしている。ロードカナロア×ドナウブルーのドナウデルタは通算6勝をあげ、阪神牝馬Sでも3着と好走。モーリス×ジェンティルドンナのジェラルディーナは、今年6月の鳴尾記念で2着に入った。どちらも牝馬を多く出産していることから、これからさらに広がっていく牝系であることは間違いないだろう。

余談だが、ドナウブルーが桜花賞への出走を逃した際は、2頭の枠に対して6頭が登録した中での抽選だった。除外となった4頭はドナウブルー、エリンコート、ツルマルワンピース、ニシノステディー。その後、エリンコートはオークスを制し、ツルマルワンピースは母として2018年有馬記念勝ち馬ブラストワンピースを輩出。ニシノステディーも繁殖牝馬として、リーチザクラウンとの配合で、すでに3頭もの中央勝ち上がり馬を送り出している。

さて、今年の関屋記念も楽しみな牝馬が出走を目指す。祖母がアドマイヤグルーヴという超良血馬スカイグルーヴ、ジェンティルドンナのライバルとして活躍したヴィルシーナを母に持つディヴィーナ、近走で復調の気配を見せるリアアメリアといった牝馬たちは、どのような走りを見せてくれるだろうか。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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