【関屋記念】米子S勝ち馬ウインカーネリアンを中心視 レース展開にも合致するマイラーとしての資質

勝木淳

関屋記念インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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関屋記念も外枠優勢

平坦、日本一長い658.7mの直線と、新潟芝1600mは究極の瞬発力勝負に必要な装置を備える。01年改装以降、1分31秒台の決着は7回。この次の京成杯AHと合わせ、ここからサマーマイルシリーズは速い時計への対応力が求められる。そんな関屋記念の傾向についてデータを基にひも解いていく。なおデータは過去10年間のものを使用する。


過去10年関屋記念人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【3-2-3-2】勝率30.0%、複勝率80.0%と比較的堅実も、2番人気【1-0-0-9】勝率、複勝率10.0%は案外。4番人気【4-1-1-4】勝率40.0%、複勝率60.0%、5番人気【0-2-1-7】複勝率30.0%、6番人気【0-3-1-6】複勝率40.0%あたりに好走ゾーンがあるものの、10番人気以下【0-0-0-75】と人気薄の馬券圏内はない。新潟芝1600mは展開のあやが少なく、特に関屋記念では恵まれた好走はこの10年ない。


過去10年関屋記念年齢別成績,ⒸSPAIA


時計勝負ということで、斤量のアドバンテージがある3歳【1-0-2-7】勝率10.0%、複勝率30.0%や若い4歳が【3-2-2-19】勝率11.5%、複勝率26.9%と優勢。5歳はやや2、3着が多く、【3-6-5-49】勝率4.8%、複勝率22.2%、6歳【2-2-0-31】勝率5.7%、複勝率11.4%、7歳以上【1-0-1-29】勝率3.2%、複勝率6.5%とベテランもノーチャンスではないが、確率的には狙いにくい。


過去10年関屋記念枠別成績,ⒸSPAIA


新潟芝1600mはクセのないコースであり、枠順の有利不利は少なさそうだが、7枠【4-2-1-18】勝率16.0%、複勝率28.0%、8枠【3-3-0-19】勝率12.0%、複勝率24.0%と外枠優勢。おそらくスローペースが多く、密集した競馬になりやすいため、揉まれない外枠にアドバンテージがあるのではないか。アイビスSDに続き、関屋記念も外枠優位と覚えておこう。


データ上は鬼門の前走米子S組だが

6番人気以内、3、4歳、外枠優勢といった傾向を頭に入れつつ、ここからは前走クラス別成績から各レースについて考えていく。


過去10年関屋記念前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走GⅠ【3-2-3-18】勝率11.5%、複勝率30.8%の内訳は安田記念が【1-2-0-6】勝率11.1%、複勝率33.3%。かつ6~9着【0-0-0-2】、10着以下は【1-1-0-4】勝率16.7%、複勝率33.3%。安田記念6、8着ダノンザキッド、イルーシヴパンサーはデータ上、微妙。そこそこレースに参加して負けたとなると、疲労が残り、関屋記念までは間隔的に微妙なのではないか。

今年の安田記念は前後半800m46.7-45.6、上がり3ハロン33.6の瞬発力勝負になり、1.32.3。関屋記念と似た適性が問われた競馬だった。似たレースに出走していた点はプラスだが、そこで6、8着だったのはひっかかる。とはいえ、イルーシヴパンサーは東京新聞杯でスローを上がり33.1で差し切っており、関屋記念にマッチしそうな予感はある。

ちなみに間隔でいえば、もっとゆったり臨める前走ヴィクトリアマイルは【0-0-1-6】複勝率14.3%と強調しづらい。ディヴィーナは父モーリス、母の父ディープインパクト。3勝クラスの豊橋Sを突破した時はハイペースで最後400m12.1-12.5といった競馬。瞬発力勝負だとどうか。


過去10年関屋記念前走クラス別成績,ⒸSPAIA


次に同じ左回りの重賞エプソムC【1-1-2-9】勝率7.7%、複勝率30.8%について。勝ったのは20年4番人気サトノアーサー。前走エプソムCは6着だった。今年はザダルがこれに該当する。ただしサトノアーサーが勝った20年は馬場がさほど速くなく、前後半800m46.3-46.8と関屋記念にしてはタフな流れで、後半600mは11.3-11.6-12.4の失速ラップ。スタミナを問われた珍しい競馬だったことは覚えておきたい。

上位人気候補スカイグルーヴの前走京王杯SCは【0-0-0-3】。たった3頭だが20年3番人気7着グルーヴィットは前走京王杯SC3着、血統もスカイグルーヴの近親と、類似点は多い。もちろん、上記の通り20年関屋記念が特異な競馬だったことは頭に入れたいが、積極的に手を出しにくい。

最後に同じサマーマイルシリーズの米子Sは【0-0-0-6】。勝ったウインカーネリアンや5着エアファンディタも厳しいか。しかし、米子Sがサマーマイルシリーズに編入されたのは2年前。編入以後はそれ以前と比べて出走メンバーの質はあがっており、注意が必要。昨年勝ったロータスランドは米子Sを勝ち、中京記念を挟んだローテーション。いつ米子S組から関屋記念好走馬が出現しても不思議はない。

今年の米子Sは前後半800m46.3-46.6、1.32.9。スタートして200m通過後、最後の200m標識までずっと11.8以下を刻んだ緩みのないマイル戦らしい競馬。3番手追走から抜け出したウインカーネリアンの能力値は高い。

今年の関屋記念は近2走でハイペースを誘発したレッドライデンが参戦予定。差しタイプが多く、マイル戦とはいえ飛ばす必要はなさそうなメンバー構成だが、同馬が大逃げの形に持ち込むようなら、20年関屋記念のような競馬も想定できる。瞬発力より持久力に長けた馬の出番までありそうだ。そういった意味でも米子Sは評価できる。ウインカーネリアンは関屋記念のデータを覆せるか。

関屋記念インフォグラフィック2,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。



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