一口馬主で「ダービー馬のオーナー」も夢じゃない! クラブ馬から顕彰馬4頭、ダービー馬7頭が誕生

高橋楓

一口馬主クラブ出身の顕彰馬,ⒸSPAIA

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一口馬主クラブの活躍馬

「へぇ、プランによってはこんな安いんだ」オーロラを見に行くために必要な金額を調べていた私の感想である。行く予定はないのだが、クロノジェネシスが一口35万円で40口募集。その比較対象は何かないかと思い調べていたらふと目に留まったのだ。

しかし、半姉ノームコアもデビュー前だったし「クロノロジストの2016」とだけ見せられても、私には判断出来なかっただろう。「オーロラツアー」と「クロノロジストの2016」どちらを選ぶかはその人の価値観次第。さて、今回は一口馬主クラブの活躍馬にスポットをあて、注目していきたい。

歴代顕彰馬に4頭も

一口馬主クラブ馬 顕彰馬一覧,ⒸSPAIA


JRAにて「中央競馬の発展に特に貢献があった馬」しか選ばれることのない「顕彰馬」。この中の4頭が一口馬主クラブの所有馬である。
・タイキシャトル(1997年デビュー・募集額5000万・獲得賞金6億3770万)
・オルフェーヴル(2010年デビュー・募集額6000万・獲得賞金15億7621万)
・ロードカナロア(2010年デビュー・募集額2625万・獲得賞金8億5020万)
・ジェンティルドンナ(2011年デビュー・募集額3400万・17億2603万)

初めて選出されたのは1999年、大樹ファームの「タイキシャトル」である。脚の怪我などが重なりデビュー戦は1997年の4歳未勝利(現3歳未勝利)のダート戦。その後は日本にとどまらず、岡部幸雄騎手を背にジャックルマロワ賞制覇など国内外で13戦11勝。外国産馬史上初のJRA年度代表馬、そしてフランスの年度代表馬顕彰最優秀古馬など輝かしい成績を残し、史上26頭目の顕彰馬に輝いた。

次に一口馬主クラブの所有馬が選出されたのがサンデーレーシングの「オルフェーヴル」。史上7頭目のクラシック三冠馬、そして凱旋門賞2年連続2着馬である。3歳春前までは歯がゆいレースが続いた本馬だが、クラシックシーズンを迎えると覚醒。スプリングステークス以降は国内外で、【11-4-0-1】と強さを見せた。2012年のソレミアにかわされた凱旋門賞は今でも忘れる事が出来ない。本馬は2015年に史上31頭目の顕彰馬に輝いた。

そんなオルフェーヴルと同期に短距離界でも怪物が誕生している。ロードホースクラブの「ロードカナロア」だ。本馬を語るうえで外せないのは香港への挑戦ではないだろうか。香港国際競走の中で最も遅く2002年にGⅠへ昇格した香港スプリント。レベルの高い地元勢の前にことごとく日本の最強スプリンター達が跳ね返されてきた。過去14回挑戦し、最高着順は5着。二桁着順10回という成績。そんな層の厚い香港勢を相手にアッという間に2馬身半離しての圧勝劇。信じられない程の力強さだった。2013年にはタイキシャトル以来の短距離馬での年度代表馬に選出された。そんな本馬は2018年に史上33頭目の顕彰馬に輝いている。

最後にサンデーレーシングの「ジェンティルドンナ」である。史上4頭目の牝馬三冠、史上初のジャパンカップ連覇達成、国内外GⅠを7勝。しかも東京、中山、京都、阪神の主要4場と海外まで制しているのは驚きだ。なおかつ、当時はテイエムオペラオーに次ぐ歴代獲得賞金第2位という成績。牡馬に挑み続け残した成績をふりかえると、間違いなく語り継がれるべき名馬である。そんなジェンティルドンナは2016年に史上32頭目の顕彰馬となっている。サンデーレーシングは前年にオルフェーヴルが選出されており、2年連続という偉業を達成した。

一口馬主でもダービー馬のオーナーに

一口馬主クラブから誕生したダービー馬,ⒸSPAIA


過去88回の歴史の中で7頭のダービー馬が一口馬主クラブから誕生している。下記、制覇年・馬名(クラブ名・募集価格)の順に紹介していく。
1986年 ダイナガリバー(社台レースホース・4000万※)
2003年 ネオユニヴァース(社台レースホース・7000万)
2011年 オルフェーヴル(サンデーレーシング・6000万)
2012年 ディープブリランテ(サンデーレーシング・4400万)
2015年 ドゥラメンテ(サンデーレーシング・1億)
2017年 レイデオロ(キャロットファーム・6000万)
2021年 シャフリヤール(サンデーレーシング・1億2000万)
※当時の資料による

とりわけ2017年のレイデオロの衝撃は忘れられない。それまでは一口馬主とはいえ40口クラブの所有馬が制していて、100口を超えるクラブからダービー馬が誕生した事は一度もなかった。その重い扉が開いた心地がしたからだ。レイデオロの募集価格は6000万円。キャロットファームは400口募集で一口15万円。決して安い金額ではないし、当時2年連続最優先希望落選の既存会員のみが抽選に参加できた超人気馬。それでも、「一口クラブにいながらダービー馬のオーナー気分を味わえるのか」と気分が高揚した事を覚えている。

ダート路線は魅力的!GⅠ勝利数ランキング

一口馬主クラブ馬 GⅠ勝利数ランキング,ⒸSPAIA


昨今ではレースの選択肢が増え、一口馬主の楽しみ方も広がってきている。中央競馬だけでなく、海外や地方など色々な所で競馬が行われている。そこで中央、地方、海外で行われたGⅠ(JpnⅠ含む)勝利の合計数でランキング化してみた。まず第1位の9勝馬が3頭。馬名、クラブ名、募集額の順で紹介していく。

アーモンドアイ(シルクレーシング・3000万)
ヴァーミリアン(サンデーレーシング・2400万)
エスポワールシチー(優駿ホースクラブ・1200万)

ここであげた3頭の凄い所はGⅠレースに出続けている事にある。アーモンドアイは桜花賞以降、引退までGⅠのみ12戦連戦。ヴァーミリアンは2005年から2010年まで中央、地方、ドバイの22戦を転戦。エスポワールシチーは2009年から2013年の期間に23戦も戦い、アメリカのブリーダーズカップにも挑戦した。ヴァーミリアンとエスポワールシチーに関してはこの間に中央重賞だけでなく地方重賞にも挑戦しているだけに、無事是名馬のお手本の様な存在だ。

そして第4位の7勝馬が2頭。
ジェンティルドンナ(サンデーレーシング・3400万)
ブルーコンコルド(ブルーマネジメント・2520万)

ジェンティルドンナは先の顕彰馬コーナーで紹介したので、ここではブルーコンコルドにスポットを当てたい。2002年にデビューすると2009年の名古屋JBCクラシックまでの間に【15-9-1-25】と50戦も走りぬき、うち半数の25戦がGⅠ挑戦。現在、ブルーマネジメントはYGGオーナーズクラブと変わったが、クラブを代表する名馬だった。

一口馬主であったとしても顕彰馬やダービー馬に出資できるチャンスは十分にあるし、数多くのGⅠに挑戦する機会もある。一口馬主の楽しみ方は無限大だ。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。また、自身も若かりし頃に憧れた社台レースホースをはじめ多くの一口クラブに入会し、一口馬主ライフを楽しんでいる。

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