【中京記念】全ての条件が揃ったアーデントリーの一発に期待

山崎エリカ

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内が傷み出した小倉芝でも外差しは決まりにくい

先々週のプロキオンSも中京ダ1400mから小倉ダ1700mという大きな条件変更で行われたが、中京記念も昨年同様、中京芝1600mから小倉芝1800mに変更して行われる。小倉芝1800mは最初の1角までの距離が約272mとスタートしてすぐにコーナーを向かえるため、ペースが落ち着きやすいのが特徴。また外枠の馬は1角から外を回ることになるので、内枠が有利なコース形態になっている。

今年2回小倉4日目で行われた小倉大賞典(小倉芝1800m)のように、1回から連続開催12日目の時計の掛かる馬場で行われた場合には、外差しが決まることも予想されるが、今夏の3回小倉開催は昨年同様に超絶高速馬場でスタートしており、開催6日までの先週の時点でもまだまだ高速馬場と言える状態。

また先週は馬場の内側に傷みが見られ、少し内を開けて走るケースが目立ち、中>内>外の順で伸びていたことから、今週か先週以上に外が伸びる可能性はある。しかし、小倉芝1800mというコース形態から、よほど雨が降らない限り、内から残せないこともないはずだ。その想定で展望していきたい。

中京記念出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

能力値1~4位以内馬の紹介

【能力値1位 ファルコニア】
前走のマイラーズCで3着。前走は7レース終了まで降り続いた雨の影響で後半のレースは時計が掛かる馬場で行われ、前半4F46秒1-後半4F47秒2のハイペース。逃げたベステンダンクから離れた好位の中目を追走し、最後の直線では3番手まで上がり、2番手のホウオウアマゾンとの差をしぶとく詰めてクビ差に迫ったところで、外からソウルラッシュに交わされての3着だった。

本馬は3角外から早仕掛けして、3~4角で大外に張られるロスが生じた昨夏の小倉記念こそ勝ち馬と1.1秒差の6着と崩れているが、その他のリステッド競走や重賞では安定した走りを見せている。しかし、自己最高指数を記録した馬の次走というのは怖いもので、崩れることがままある。前記の小倉記念も、その前走のエプソムCで自己最高指数を記録した後の一戦だった。

ただし、本馬はエプソムCで3着、そして昨秋のカシオペアSを勝利しているように、芝1800mという条件は合う。高速馬場のマイル戦ではやや追走に苦労しているが、芝1800mだとスムーズにレースの流れに乗って行けるからだ。今回は自己最高指数を記録した後の休養明けの一戦で本調子にはないと見ているが、高速馬場の川田騎手は丁度いい位置に収めてくることが多いので警戒はしたい。

【能力値2位 ミスニューヨーク】
3走前のターコイズSでは、逃げたイベリスに外からスマイルカナが競りかけ、前半4F45秒4-後半47秒4のかなりのハイペースとなったが、最後方から3~4角の外を回って、最後までジリジリ伸び続け、初重賞制覇を達成した。

一方、高速馬場で極端に遅いペースではないものの、逃げた18番人気馬ローザノワールが4着に粘った前走のヴィクトリアマイルでは、中団中目から3~4角の外目を回り、バテずに伸びてはいたが、10着に凡退した。

このように同馬は最後までしぶとい脚が使えるものの、スタートも二の脚も遅く、どうしても中団、後方からのレースになってしまうのが弱点。3走前のように展開に恵まれるか、前々走の中山牝馬S時のように、終始最内から前との差を詰めていくようなレースができればチャンスがあるが、他力本願タイプである以上、本命にはしにくい。

【能力値3位 カイザーミノル】
初めてのブリンカー着用で挑んだ昨年2月の斑鳩S(3勝クラス・阪神芝1400m)を勝利し、そこから一気に上昇。重賞では昨春のマイラーズCや3走前の京都金杯で3着の実績があるが、芝1800mの毎日王冠でも勝ち馬と0.3秒差(5着)の実績がある。

その毎日王冠ではレースが平均ペースで流れた中、わりと楽に3番手を確保し、3~4角の最内から直線で前との差を詰めに動いて5着。ここでも3走前でも最後の直線で2番手のダイワキャグニーを目標に動いて同馬にクビ差、アタマ差と敗れているが、悪くない競馬だった。

ただし、今回は休養明けの前走の米子Sで好走した後の一戦となり、前々走から馬体減傾向にあるのも不安な材料。前々週CWで一杯に追われていることから、460Kg台が本馬の適正体重ではない可能性も考えられるが、今回はやや厳しい戦いになるように感じる。

【能力値4位 ダブルシャープ】
門別のダートでデビューしたが、中央の芝で上昇気流に乗った馬。3勝クラスの不知火Sを勝利、オープンの関門橋Sも勝利しているように小倉芝中距離には特に高い適性を示している。ただし、近走は出遅れや二の脚の遅さが目立つようになって来た。

今の小倉の高速馬場ではその点がやや不安。良い方に解釈するならば、前走の都大路Sでは前半5F62秒1-後半5F58秒4の超スローペースを、後方からラスト1Fで前が大きく減速したところでしぶとく差し込んで2着と好走したように、近走出遅れてもある程度の着にまとめているあたりに好調さを感じる。スタートのロスを最小限にとどめればチャンスは十分にありそうだ。

【能力値4位 ベレヌス】
昨夏の小倉記念と同日に行われた、小倉記念と同距離の3勝クラス・博多Sを逃げ切り勝ちした馬。博多S当日は重馬場からスタートし、後半になるにつれて馬場が騎手の想定よりも急速に回復。この結果、5F63秒2の極端なスローペースに持ち込むことができ、行った、行ったが決まった。

それ以降は距離が長かったり、ペースが速かったりして連対圏内まで粘れていないが、前走の谷川岳Sでは2着と好走。前走も前半4F48秒6-後半5F45秒0の超絶スローペースで逃げて上がり勝負に持ち込み、2着と好走している。

こう表現すると、いかにも展開に恵まれて好走しただけの逃げ馬のイメージだが、スローペースに持ち込めるのも才能である。スタートや二の脚が遅いと他馬に競られるリスクがあるが、他馬より前に出ることさえできれば一気に優位に立てる。

実際に本馬が勝利した博多Sでは大外9番枠だったが、トップスタートから内に切ってハナを主張し、スローペースに持ち込んでいる。今回は14番枠。同型馬のベステンダンクが最内枠に入ったうえでの外枠は厄介な材料ではあるが、ベレヌスは2番手でも問題ない馬。また今回は先行馬が手薄なメンバー構成であることからも侮れない。

穴馬は全ての条件が揃ったアーデントリー

4走前の3勝クラス、虹の松原Sでは13番枠から一度最後方まで下げて内に入れ、向正面半ばで開いた最内から中団まで進出。4角で中目に出されて前の壁が開くと、そこから猛追し、今回で能力値2位のミスニューヨークを明確にハナ差下して勝利した。また、このレースでは能力値4位のダブルシャープも下している。

4走前は今回と同じ小倉芝1800m戦。本馬はこれまでの4勝中3勝が小倉芝の小倉巧者であり、その後の大阪城Sでも2着に好走しているように、オープンでも十分に通用する能力を持っている。屈腱炎による長期休養明けの一戦となった前走の米子Sでは11着に敗れたが、芝の中距離を主体に使われてきた本馬にとって、久々のマイル戦は忙しい条件。好発を切りながらも序盤はやや置かれ気味の競馬だったが、レースの流れにはまずまず乗れており、スピード面は衰えのないことを証明している。

今回はひと叩きされたことで息持ちが上昇する。短い距離を叩かれて、今回は得意の芝中距離戦だけに、よりレースの流れに乗りやすいだろう。高速馬場では有利となりやすい内目の枠を引いたことも好材料だ。条件が揃った今回は激走の可能性は十分あると見る。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ファルコニアの前走の指数「-22」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補


ライタープロフィール
山崎エリカ 類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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