【函館記念】二桁人気の好走が目立つ重賞 1994年はワコーチカコとホクトベガが激突

緒方きしん

函館記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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今年も荒れるか、函館競馬場をアツくする一戦

プロキオンSは上位人気3頭が10着~12着に沈み、馬連296.3倍、三連単7196.5倍という波乱が巻き起こった。七夕賞も6番人気のエヒトが完勝するなど、今年の夏競馬も盛り上がりを見せている。

今週は荒れる重賞・函館記念。頻繁に高配当が飛び出す一戦に、今年も激戦を感じさせるメンバーが集結する。昨年の天皇賞(秋)やジャパンCで4着となったサンレイポケット、前走の目黒記念で2着と好走したマイネルウィルトス、天皇賞(春)15着から巻き返しを目指す白毛馬ハヤヤッコなど、個性豊かな面々が火花を散らす。

過去にはエリモジョージやニッポーテイオー、サッカーボーイらが勝利。近年もトウケイヘイローやマイネルスターリー、トーセンスーリヤといった馬たちが勝利してきた函館競馬における伝統の一戦である。今回は、函館記念の歴史を振り返る。

伏兵の好走が多く、1番人気は大苦戦

函館記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


この5年間で、1番人気は1勝のみ。それ以外の4年ではいずれも掲示板外に敗れている。そもそも2019年マイスタイルが1番人気に応えたこと自体が2006年エリモハリアー以来。1番人気馬にとっては厳しい一戦であると言えるだろう。

昨年は2番人気トーセンスーリヤが勝利したものの、2着アイスバブルは14番人気、3着バイオスパークは12番人気と、人気薄が上位に食い込んだ。2020年には1着アドマイヤジャスタ(15番人気)と2着ドゥオーモ(13番人気)の馬連が1316.7倍と、10万馬券が飛び出している。2018年3着エテルナミノルは13番人気、2017年2着タマモベストプレイは14番人気と、伏兵の好走は多い。

また上述のエテルナミノルのように、牝馬で好走するパターンも見られる。2020年では馬券圏内に届かなかったが、14番人気レイホーロマンスが5着と好走。2007年には9番人気ロフティーエイムが2着に食い込み、馬連186.2倍を演出した。人気が割れた2002年にも、8番人気トーワトレジャーが3着でゴールしている。

1992年にヒガシマジョルカ、1996年にブライトサンディー、1998年パルブライトといった牝馬たちが勝利。古くは1966年にも、名牝メジロボサツが勝利を収めている。

2頭の名牝が激突した1994年・函館記念

1994年の勝ち馬も牝馬だった。この年は4番人気のツインターボこそ11着に沈んだものの、1着は2番人気のワコーチカコ、2着が3番人気タイキブリザード、3着に1番人気ホクトベガと人気馬で決着した。

勝ち馬のワコーチカコは、オークス馬ベガやユキノビジンらと同世代の93年クラシック組。ホクトベガとはオークスで対決していて、ワコーチカコが9着、ホクトベガが6着と、ともに掲示板外に敗れている。

翌年6月、エプソムCでオークス以来の重賞挑戦となったワコーチカコは、前年のセントライト記念2着ロイスアンドロイスらを相手に快勝。さらに続くオープン競走・道新杯も勝利、そして函館記念制覇と、3連勝を達成した。翌年にも重賞を2連勝するなど、実力派の良血牝馬として愛されていた。引退後は母として中央3勝馬を2頭輩出。今もなお、その血を受け継ぐ馬が走っている。

一方、ホクトベガは93年に「ベガはベガでもホクトベガ」の実況で有名なエリザベス女王杯で、GⅠホースの仲間入りを果たしていた。さらに94年になってからも札幌記念などを制していたが、次走の函館記念で敗れるとそこから連敗続きになった。 95年に交流重賞のエンプレス杯で圧勝して連敗は止まったが、その後の芝レースは5戦全敗。96年からは芝レースに見切りをつけダート路線へ転向した。それからは川崎記念やフェブラリーS、帝王賞や南部杯など7連勝と圧倒的な強さを見せつけた。

しかし海を渡って挑んだドバイWCでレース中に故障が発生し、現地でこの世を去ってしまう。現役時代だけでなく繁殖牝馬としての活躍も期待されており、無念の最期だった。

リピーターは現れるか

ワコーチカコの鞍上は藤田伸二騎手。ゴールデンアイで制した93年に続く連覇となった。藤田騎手は翌年もインターマイウェイで制し、函館記念3連覇を達成。その後、連覇した騎手は現れておらず、素晴らしい記録であることがわかる。

ちなみに、函館記念を3連覇したエリモハリアーは、北村浩平騎手、安藤勝己騎手、武幸四郎騎手と、それぞれ別のジョッキーを背に勝利している。こちらも並ぶ馬は現れていない。今でも「函館記念といえばエリモハリアー」というファンは多いだろう。

エリモハリアーに限らず、2020、2021年と2年連続で3着となったバイオスパーク、2006年に3着になり2009、2011年に2着となったマヤノライジンのように、リピーターも少なくない一戦。今年は、昨年2着のアイスバブル、一昨年の勝ち馬アドマイヤジャスタといったレース実績のある馬が参戦を予定している。

昨年3番人気に推されたが8着に敗れたマイネルウィルトスもリベンジを目指す。果たしてリピーターは現れるのだろうか、それとも新興勢力が勝利を掴み取るのか。函館の夏を盛り上げる一戦に、ご注目いただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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