【函館2歳S】スピードより決め手が重要! 開催最終週の馬場に合う馬を探せ

勝木淳

函館2歳Sインフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

1番人気でも危険なパターンとは

22年北海道シリーズ函館も早くも開催最終週を迎える。夏の北海道はもう半分終わったのかと思うと、早くも一抹の寂寥感すらある。それを忘れさせ、未来を見せてくれるレースが函館2歳S。函館デビュー馬たちにとってひとつの集大成。世代初の2歳重賞、一番星をつかみたい。そのポイントになるのは開催通じて変化してきた函館の芝とその適性にある。ここでは過去10年間のデータをもとにその傾向を探っていく。


過去10年函館2歳S人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【3-1-0-6】勝率30.0%、複勝率40.0%と案外期待に応えられていない。まずここがポイント。昨年は変則日程で札幌3週間のあと、このレースは函館3週目に行われたが、例年だと同舞台同条件の新馬を早めに勝った馬が、開幕直後の絶好馬場での好時計勝ちを評価されて1番人気に推される場合が多い。しかし1番人気、前走函館芝1200m新馬勝ち、かつ中3週以上は【1-1-0-5】。新馬戦で逃げ切り勝ちが多い舞台だけに重賞のここで先行争いが激しくなる点、また馬場が使い込まれ、時計を要するようになったことで、新馬戦でのパフォーマンスを発揮できないケースには注意だ。

とはいえ、勝ち馬は4番人気以内が9勝、10番人気以下1勝(20年リンゴアメ10番人気)。2、3着も5番人気以内が大半も、人気薄の3着も可能性としては十分ある。


過去10年函館2歳Sキャリア別成績,ⒸSPAIA


同舞台の新馬勝ち直後は1番人気を裏切るケースが多いとはいえ、キャリア1戦は【7-8-9-75】勝率7.1%、複勝率24.2%でほとんどがこのキャリア1戦組から出ている。好走は2戦【3-2-1-33】勝率7.7%、複勝率15.4%まで。さすがに3戦以上は【0-0-0-14】と苦しい。


大切なのは控えた経験と決め手

今回は新馬勝ちの取捨が最大のポイント。ここからは前走新馬組について詳しく掘り下げてみたい。


過去10年函館2歳S前走新馬組馬場別成績,ⒸSPAIA


まずは芝、ダート別。さすがに前走ダートの新馬は【0-1-0-14】複勝率6.7%で芝【7-7-9-62】勝率8.2%、複勝率27.1%。ここは芝に絞る。


過去10年函館2歳S前走芝新馬組距離別成績,ⒸSPAIA


では芝の新馬距離別成績をみる。鞍数が少ない1000m【2-1-0-13】勝率12.5%、複勝率18.8%や他場からの転戦組1400m【0-1-1-2】複勝率50.0%もいいが、1200m【5-4-7-47】勝率7.9%、複勝率25.4%が中心。

開催序盤の新馬勝ちは人気で信用できないとしながらも、やはり前走芝1200m新馬勝ちは重要。スプレモフレイバー、クリダーム、ゴキゲンサンなどが候補であり、芝1000m新馬勝ちのニーナブランドも視野に入れたい。ただこの4頭の新馬勝ちはすべて開幕から2週目以内。冒頭のデータに当てはまる馬がいるので、1番人気に支持されるとなると慎重に考えたい。


過去10年函館2歳S前走芝新馬組脚質別成績,ⒸSPAIA


芝新馬勝ちの目安に位置取り別成績がある。前走芝の新馬を逃げ切った馬は【2-1-3-25】勝率6.5%、複勝率19.4%で先行が【5-5-6-29】勝率11.1%、複勝率35.6%、後方【0-1-0-4】複勝率20.0%。中団は【0-0-0-4】だが、新馬を控える競馬で勝ちあがったセンスが必要になる。

さらに前走芝の新馬で上がり3ハロン1位は【4-5-3-24】勝率11.1%、複勝率33.3%、4~5位【2-1-2-10】勝率13.3%、複勝率33.3%。重賞のここは前半のスピードより後半で速い脚を使った経験に重きを置きたい。もちろん、4~5位にも好走ゾーンがあり、厳しいペースのなかで逃げ、先行で踏ん張った経験も活きることはある。

前走芝1200m新馬勝ち、かつ前走上がり3ハロン最速で今回1~3番人気は【2-2-2-2】勝率25.0%、複勝率75.0%。また前走上がり3ハロン4~5位でも【2-0-1-0】と好成績。前走上がり3ハロン最速に該当はブトンドール、前走上がり3ハロン4~5位に該当はクリダームがいる。今回3番人気以内となるとインゼルレーシングに初出走初勝利をもたらし、話題もあるクリダームか。

スプレモフレイバーやニーナブランドなど逃げて上がり2位だった馬はペースや開幕直後の馬場の恩恵もあったクチ。最終週の馬場に合うかどうか多角的に検討したい。


過去10年函館2歳S前走芝新馬組脚質別成績,ⒸSPAIA


最後に未勝利組について。ここも芝1200m未勝利勝ちが【3-2-1-23】勝率10.3%、複勝率20.7%と好成績。ミシェラドラータなどが該当する。こちらも前走位置取りは逃げ【1-2-0-10】勝率7.7%、複勝率23.1%、先行【2-0-1-10】勝率15.4%。複勝率23.1%で控えた馬が優勢。

ただし、前走上がり3ハロン1位【2-1-1-8】勝率16.7%、複勝率33.3%、2位【1-0-0-8】勝率、複勝率11.1%。ミシェラドラータの前走上がり3ハロンは2位。重賞で問われる決め手をやや欠くといったところか。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


函館2歳Sインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



《関連記事》
3連単の最高額は2073万8890円 2021年中央競馬の高額配当ランキング
セレクトセール高額取引馬のその後は?取引価格1000万円から凱旋門賞2着に登り詰めた名馬も
1位は「1.8秒差」つけたサイレンススズカ&メジロブライトの伝説2レース! JRA平地重賞の着差ランキング

おすすめ記事