【天皇賞(春)】複勝率88.9%データに該当、サンライズアースを本命視 ジャスティンパレスら実績馬には不安要素あり
勝木淳

ⒸSPAIA
長距離戦にしかない息づかい
長距離戦には他にはない息づかいがある。スタートから思い切って突っ込む人気薄の激しさ、中盤では来るべき勝負へ向け、静かに整えるような呼吸。そして、ゴールへ向け、最後の力を振り絞るように食いしばる。
動から静へ、静から動へ。そして極限へ。長距離戦は各馬の思惑と呼吸がたまらない。それを立体化するために欠かせないのが京都3コーナーの丘。京都の春は競馬の息づかいを後世に伝えていく。レース中の息づかいを想像し、その果敢なる挑戦を堪能しよう。
ここからは天皇賞(春)を過去10年のデータとともに展望する。なお、データは阪神開催だった2回(2021、22年)を含む過去10回分を使用する。
まずは人気別成績から。1番人気【4-3-0-3】勝率40.0%、複勝率70.0%、2番人気【5-0-1-4】勝率50.0%、複勝率60.0%、3番人気【1-0-1-8】勝率10.0%、複勝率20.0%とさすが古馬国内唯一の3000m超GⅠだけあって、人気どころは簡単には負けない。
勝ち馬はすべて3番人気以内で、4番人気以下も好走確率はほぼ人気順。かつて波乱も目立った春の盾だが、最近は波乱が少ない。10番人気以下【0-2-1-72】複勝率4.0%と油断すると人気薄の大駆けにあうが、とはいえ、大振りはできない。
年齢は4歳【4-2-4-31】勝率9.8%、複勝率24.4%、5歳【4-4-1-41】勝率8.0%、複勝率18.0%と主力世代中心も、6歳【2-3-1-31】勝率5.4%、複勝率16.2%、7歳以上【0-1-4-32】複勝率13.5%とベテラン勢も侮れない。
長距離は経験がモノをいう駆け引きの世界であり、ベテランの巧みな押し引きが逆転の機を探る。人気の主力世代は素直に評価しつつ、長距離で浮上する6歳以上も狙っていこう。
最有力はサンライズアース、マイネルエンペラー
2年前の勝ち馬ジャスティンパレスや、昨年の2着で宝塚記念勝ち馬ブローザホーンに対し、阪神大賞典を勝ったサンライズアース、ダイヤモンドSを勝ったヘデントール、日経賞を制したマイネルエンペラーにレッドシーターフハンデキャップを勝ったビザンチンドリームらが挑む。
続いて前走レース別成績を確認する。2020年に有馬記念から直行で連覇を決めたフィエールマンがいるものの、基本線は前哨戦ひと叩きからの本番だ。
各前哨戦では前走阪神大賞典が【4-6-5-50】勝率6.2%、複勝率23.1%で着度数別トップ。今年はサンライズアース、ブローザホーン、ショウナンラプンタ、ワープスピード、ウインエアフォルクと5頭が該当する。
阪神大賞典組はズバリ着順。1着【4-2-2-1】勝率44.4%、複勝率88.9%、2着以下【0-4-3-48】で、買うなら断然勝ち馬だ。サンライズアースは有力視できる。
今年の阪神大賞典は1000mごとのラップが1:03.1-1:02.4-57.8、3.03.3。後半1000mの速さが目立つが、残り1200m11.7-11.2-11.5-11.5-11.5-12.1というラップ構成がすばらしい。
逃げて一旦、先頭を譲り、差しかえす形で勝ったサンライズアースはスケールとしては申し分ない。挑戦者らしく周囲に構わず、ロングスパートを仕掛け、勝負に出てほしい。阪神大賞典はそれだけの価値ある競馬だった。
ほかでは前走日経賞が【2-1-2-37】勝率4.8%、複勝率11.9%。こちらは阪神大賞典より間口が広く、3着以内なら【2-1-2-16】、4着以下【0-0-0-21】。評価できるのは勝ったマイネルエンペラーだ。
稍重だった日経賞は1000m通過1:02.8のスロー。後半1000mは12.1-12.0-12.3-12.2-12.7と道悪の影響もあり、極端なペースアップはなかったが、それだけスタミナを問う競馬だった。好位から抜け出したマイネルエンペラーはゴールドシップ、ロージズインメイ、ブライアンズタイムと血統表に散るスタミナの血が魅力的だ。
ヘデントールの前走ダイヤモンドSは【0-1-1-16】複勝率11.1%と必ずしも主流ローテとはいえない。1着【0-1-1-4】、さらに着差0.3以上なら【0-1-1-2】なので、ヘデントール(0.7秒差勝ち)が好走する可能性は残る。
最近では22年テーオーロイヤルが同ローテで3着だった。その後、同馬は昨年に阪神大賞典1着から悲願のGⅠにたどり着いた。ヘデントールもこの流れに続きたい。
最後に脚質に関する全体のデータを見る。前走逃げた馬は【2-1-0-10】勝率15.4%、複勝率23.1%、先行【6-3-5-47】勝率9.8%、複勝率23.0%と前走で前にいた馬が断然優位だ。差し【1-5-3-52】勝率1.6%、複勝率14.8%、追込【0-0-0-25】、まくり【1-1-1-1】勝率25.0%、複勝率75.0%なので、差すなら途中で動き、機動力を見せた馬がいい。
前走、差しに回ったというだけで評価を下げないといけない。データ上でも有力だったサンライズアース、マイネルエンペラーは本命視できる。反対に、前走差しだったブローザホーン、ジャスティンパレスはちょっと心配だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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