【NHKマイルC】かつてクロフネなど外国産馬が活躍 近年はマイラーが躍動する3歳マイル王決定戦

緒方きしん

NHKマイルC過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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今年もドラマが生まれるか

天皇賞(春)は、タイトルホルダーが完勝。鞍上の横山和生騎手にとって、初のGⅠタイトル獲得となった。スタートの落馬でカラ馬となったシルヴァーソニックが2番手でゴールしその後転倒するなど、印象的なシーンの多いレースだった。

さて、今週はNHKマイルCが行われる。かつてはクロフネやエルコンドルパサー、イーグルカフェやシーキングザパールといったマル外の名馬たちを輩出。さらには藤岡佑介騎手(ケイアイノーテック)や藤岡康太騎手(ジョーカプチーノ)、秋山真一郎騎手(カレンブラックヒル)や柴田大知騎手(マイネルホウオウ)、勝浦正樹騎手(テレグノシス)らがこのレースで初めてのGⅠ勝利を経験するなど、非常にドラマチックなレースでもある。今回はNHKマイルCの歴史を振り返る。

1番人気よりも2番人気が好調

NHKマイルC過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で1番人気は全敗。グレナディアガーズやレシステンシア、タワーオブロンドンといった名馬たちが1番人気に推されつつ、敗北を喫してきた。ただし10年単位で見れば、 カレンブラックヒルやミッキーアイル、メジャーエンブレムが1番人気で勝利している。

一方で、近年好調なのは2番人気。この5年だけでもシュネルマイスター、アドマイヤマーズ、アエロリットと3勝をあげているほか、2020年2番人気タイセイビジョンは4着、2018年2番人気ギベオンは2着と、掲示板を外していない。

最後に2番人気が掲示板を外したのは2012年に失格となったマウントシャスタを除けば、2009年アイアンルック(8着)まで遡る。その年は1番人気ブレイクランアウトも9着に沈み、10番人気ジョーカプチーノ、5番人気レッドスパーダ、13番人気グランプリエンゼルによる決着で、馬連141.8倍、三連単23816.6倍の大波乱となっている。

2009年に勝利したジョーカプチーノは単勝39.8倍だったが、さらにその2年前の勝ち馬ピンクカメオは17番人気の単勝76倍と、さらなる高配当。18番人気ムラマサノヨートーも3着に食い込み、2着に1番人気馬ローレルゲレイロがいながらも三連単は97398.7倍という、あわや一千万馬券の大荒れとなった。

"松国ローテ"が送り出した名馬たち

波乱の立役者となったピンクカメオはオークスにも出走し、5着と好走。翌年のNHKマイルC勝ち馬ディープスカイはダービーも勝利し変則二冠馬になると、ジャパンCや安田記念で2着、天皇賞(秋)や宝塚記念で3着など、幅広い距離で安定した戦績を残した。

ディープスカイが歩んだ、NHKマイルC→ダービーの所謂"松国ローテ"は、数多くの名馬、名種牡馬を送り出してきたローテだ。NHKマイルCでディープスカイの2着に食い込んだブラックシェルがダービーで3着になったのは、そうした流れの集大成と言えるかもしれない。

それ以前も、皐月賞(3着)→NHKマイルC(3着)を経てダービーを制したタニノギムレット、毎日杯(1着)→NHKマイルC(1着)でダービーを制したキングカメハメハ、毎日杯(1着)→NHKマイルC(1着)からダービー5着のクロフネなど、多くのNHKマイルCの出走馬がダービーで活躍した。

こうしたローテで活躍する馬は、マイル経験が少なくても能力でカバーするタイプが多い。クロフネはデビュー戦でマイルを使っているものの、キングカメハメハは現役時代における唯一のマイル戦がこのNHKマイルCだった。

ディープスカイもNHKマイルC制覇までにあげた2勝のうちマイル戦は未勝利戦のみ。ダービーを意識した馬がマイルを走るレースという印象を持つファンも少なくないのではないか。

しかしジョーカプチーノがダービーで18着になると、翌年の勝ち馬ダノンシャンティはダービー前日に右後脚の骨折が判明して出走取消。2013年勝ち馬マイネルホウオウがダービー15着になったのを最後に、ダービーやオークスに挑戦したNHKマイルC勝ち馬はいない。

かわりに台頭しているのが、マイルに専念する名馬たちだ。2019年勝ち馬アドマイヤマーズは、デビューから4戦連続でマイル戦を使い、朝日杯FSを制覇。3歳になると共同通信杯(2着)、皐月賞(4着)を使い、NHKマイルCを制するとダービーを回避しそのまま休養。そこから引退まで6戦したが、マイルCSの前哨戦として使ったスワンS(芝1400m)を除いた5戦がマイル戦という徹底ぶり。香港マイル制覇など、近年屈指の名マイラーとして活躍した。

時代の移り変わりを感じながら

2014年の勝ち馬ミッキーアイルも、同様にマイル路線を主戦場とした一頭だった。5戦4勝2着1回、シンザン記念、アーリントンCを制し、1番人気でNHKマイルCを優勝。その次走の安田記念(16着)まで徹底してマイル戦のみを走っていた。古馬になって高松宮記念、スプリンターズSで2着などスプリントでも才能を見せたが、古馬GⅠで制したのは5歳秋のマイルCS。やはりマイル路線で一段と輝いた名馬だった。

他にも、デビューから7戦連続マイル戦に出走していたケイアイノーテックや、デビュー2戦目以降連続でマイル戦だったアエロリット、メジャーエンブレムなど、マイル経験が豊富な馬たちが制することが多くなった印象を受ける。

かつて、クラシック競走に外国産馬が出走できず、NHKマイルCが「マル外ダービー」と呼ばれていた時代、タイキフォーチュンやエルコンドルパサー、イーグルカフェといったマル外の名馬がここを制してきた。

この三頭はいずれもダートでデビューしている。ダート経験のある馬がNHKマイルCを制したのも2009年ジョーカプチーノがラストと、時代の移り変わりを感じる。さらにはマル外も、2001年クロフネの勝利を最後に、勝ち星から遠ざかっていた。

しかし、昨年はマル外のシュネルマイスターが優勝。しばらくぶりのマル外によるNHKマイルC制覇となったが、 マイル実績もデビュー2戦目のひいらぎ賞のみと、新しい時代の到来を予感させるレースとなった。

今年も、マル外であり、ダート経験もあるジャングロが出走を予定している。オーナーは藤田晋氏と、新しい時代を感じさせる勢いあるオーナーだが、果たして今年はどのような風が吹くだろうか。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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