【阪神牝馬S】神騎乗で良血開花! 本番も楽しみ、メイショウミモザ

勝木淳

2022年阪神牝馬Sのレース結果,ⒸSPAIA

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2年半ぶりのマイル戦出走だったメイショウミモザ

秋華賞馬アカイトリノムスメ登場も、アクシデントで競走除外。核になる馬がいなくなった。牝馬重賞常連組デゼル、マジックキャッスルにアンドヴァラナウト、ジェラルディーナの4歳勢が中心。以下は格下馬もおり、やや上下差がある印象。それでもデゼルやマジックキャッスルに昨年の勢いはなく、アンドヴァラナウト、ジェラルディーナは久々のマイル戦出走と、上位陣安泰といった状況でもなかった。

そのスキを突く形で重賞タイトルをさらっていったのが9番人気メイショウミモザ。1200mを中心に使われ、冬の小倉、巌流島Sでは初ブリンカーで一変、11番人気で勝利、オープン入りしたばかり。20年9月5日の日高Sで芝1500mに出走して以来、12戦連続スプリント戦に使われていたスプリンター。最後のマイル戦は19年10月京都の未勝利戦6着。GⅡ阪神牝馬S勝利は予測が難しかった。

徹底して1200mに出走していたが、ブリンカー着用の効果なのか、落ち着いて走れるようになり、マイル戦でもスムーズだった。レースはクリスティが番手クリノフラッシュを離し気味に逃げるも、前半800mは12.7-11.2-11.4-11.5、46.8と見た目ほど飛ばしていない。直前の10R芝2000mの京橋Sは前後半1000m1.00.2-58.1、1.58.3。素質馬プログノーシスが上がり33.1で差し切った。芝のレース数を抑えたため、ロングラン開催でも阪神芝は絶好の状態。重賞で半マイル46.8は速くない。

こうしたゆったりした流れを察知した2着アンドヴァラナウトはインの3番手付近。かつてはマイル戦でも折り合いを欠く場面があったが、この日は我慢できた。本番に向けてこれはプラス材料。さほど速くならないヴィクトリアマイルでも流れに乗れそうだ。

インにこだわった神騎乗

メイショウミモザはその背後のインに潜んでいた。鮫島克駿騎手のコース取りの巧さがここでも光った。3月高松宮記念ではトゥラヴェスーラで4着。このときもイン有利な馬場で内に潜り、絶妙なタイミングで進路を切りひらいた。馬場を読み、最善手を繰り出す騎乗は本当に頼りになる。

メイショウミモザ自身もマイル戦の流れに戸惑わず、立ち回った。揉まれても怯む場面はなく、最後の直線に向くまで、とにかくラチ沿いをキープ。鋭いコーナリングで最短距離を進む。そこからクリスティのインには行かず、その外にわずかに出す。必要最少手で進路を作るあたりは唸るばかり。

母メイショウベルーガは現役時代、日経新春杯、京都大賞典と京都芝2400m重賞2勝。半兄メイショウテンゲンは19年弥生賞、20年ダイヤモンドS、阪神大賞典2、3着のステイヤー。メイショウミモザが短距離中心という方がむしろ違和感。気性的な問題がブリンカー着用で解決したのであれば、距離適性は今後広がるだろう。

後半800m11.3-11.2-11.4-12.1、46.0。11秒台前半をコーナーで刻み続けるラップは、インで立ち回る組に味方し、外を回った組には辛かった。メイショウミモザ、アンドヴァラナウトと外を回ったデゼル、マジックキャッスルの差はここにあった。アンドヴァラナウトは急坂で伸びが鈍った。これは休み明けの分か、それとも坂適性の差か。切れ味勝負の馬で、馬体もシャープな印象。平坦ベストである可能性はある。それも本番の東京のダラダラ坂ならばそこまで響かないのではないか。

3着デゼルは出遅れた昨年よりは全体的なパフォーマンスは安定していた。その昨年はインがいい馬場で外から差し切ったが、今回は届かず3着。競馬の形はよくなった反面、勢いや能力は平行線といった感じか。高速馬場だとちょっと厳しいところがあるので、今後も坂がある条件、ちょっと最後に時計を要する条件で狙っていきたい。

5着マジックキャッスルはデゼル以上にここ最近冴えず、今回もメイショウミモザやデゼルを上回る上がり2位33.6を繰り出したものの、5着。勝負圏内に食い込む場面はなかった。若い頃から前半で位置をとれるタイプではなかったが、最近はさらに後ろから競馬する場面が多い。東京の高速馬場は昨年のヴィクトリアマイル1.31.7、3着と実績はある。デゼルよりは本番で上積みを見込めそうだが、どうだろうか。昨年ほどではないかもしれない。

ジェラルディーナは21年エルフィンS10着以来のマイル戦で、メイショウミモザとは対照的に距離変化に戸惑った。上がり最速33.4を繰り出すも、4コーナー11番手は流れを考えると、絶望的だった。それでも終いで脚を使ったように充実期にはある。母ジェンティルドンナ、こちらは中距離で期待したい。

2022年阪神牝馬Sのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


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