【皐月賞】データはキラーアビリティ筆頭 逆転候補はダノンベルーガとジャスティンロック
勝木淳
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上位拮抗、馬格も重要
皐月賞はここ数年で一気に難しくなった。3歳初戦の有力馬が多く、トライアルでの対戦がなくなり、戦力比較ができなくなったからだ。これはもはや想像で埋めるしかない。ここでは過去10年間のデータから各トライアルを振り返る。
この10年で1番人気【3-1-1-5】勝率30%、複勝率50%が皐月賞の難しさを物語る。2番人気【2-3-0-5】勝率20%、複勝率50%、3番人気【1-2-3-4】勝率10%、複勝率60%、4番人気【1-2-1-6】勝率10%、複勝率40%まで上位人気拮抗。上記のように力量比較がつきにくく、買う側は想像力を問われる。今年もキラーアビリティ、イクイノックスの年明け初戦組とトライアル組の力関係が難しい。
中山の重賞は大きな馬を狙え。これが定石だが、3歳同士の皐月賞もこれが当てはまる。480~498キロ【5-4-3-42】勝率9.3%、複勝率22.2%、500~518キロ【2-2-4-23】勝率6.5%、複勝率25.8%と大きな馬のデータがいい。小回り中山は機動力も必要だが、パワーも同時に試される。大きすぎてモタつく馬は厳しいが、この480~518キロというゾーンは頭に入れておきたい。
ホープフルS【2-0-0-1】勝率、複勝率66.7%
ここからは前走成績に注目し、前哨戦を振り返りつつ、戦力を極力比較してみたい。
まず前走レース別成績。前走ホープフルSは【2-0-0-1】でもはや皐月賞黄金ローテ。サートゥルナーリア、コントレイルが連勝で一冠目を手にした。この2頭はいずれもホープフルSで先行、かつ2着に0.1以上着差をつけた。キラーアビリティはこれにすべて該当。少なくともホープフルSでのパフォーマンスは上記2頭と同等と考えていい。
そもそもホープフルS出走馬はその後、マテンロウレオ(きさらぎ賞)、オニャンコポン(京成杯)、ボーンディスウェイ(弥生賞ディープインパクト記念3着)と活躍。今年も中心視したい。
共同通信杯【5-0-2-8】勝率33.3%、複勝率46.7%
エフフォーリアが昨年勝ったローテとあって、今年もメンバーがそろった共同通信杯。ダノンベルーガが上がり最速33.7を使い、1.47.9で勝利。最後の600m11.3-11.2-11.8と今年もレベルの高い一戦だった。
その着差別成績はホープフルSと同じく0.1以上つけて勝つと、【4-0-1-2】勝率57.1%、複勝率71.4%。2着ジオグリフに0.2差だったダノンベルーガはパターンに合致。未対戦キラーアビリティの対抗格はこの馬ではないか。負けたジオグリフも0.1~0.2差負けは【1-0-0-1】。15年ドゥラメンテと同じパターンではある。時計を要する馬場になってほしいところだろう。
弥生賞ディープインパクト記念【0-5-2-32】複勝率17.9%
皐月賞とはすっかり相性が悪くなったトライアルが弥生賞ディープインパクト記念。この10年勝ち馬はゼロ、それでも2着5頭なので、切り捨てられはしない。今年は1~4着、10、11着馬が登録してきた。
アスクビクターモアが2.00.5で勝利。前半1000m通過1.01.1のゆったりした流れは皐月賞とのリンクが薄そうだが、後半800m11.8-11.5-11.4-12.3とロングスパート型ラップで、スローの割に持続力が問われる展開だった。これを番手から押し切ったアスクビクターモアは派手さこそないが、侮れない。
その着順別成績は1着【0-3-0-6】複勝率33.3%、2着【0-0-0-8】、3着【0-0-2-7】複勝率22.2%、4着【0-2-0-2】複勝率50%。1着はわかるとして、2着の好走なしは気になる。今年はドウデュースがこれに該当する。いかにも脚を測った試走、という2着だけに軽々に判断できないが……。
ここで穴っぽいのは4着。今年は京都2歳Sを勝ったジャスティンロック。こちらも休み明けで賞金的にも試走。ドウデュースと同じ意味合いの出走だったことは気に留めておきたい。
スプリングS【2-1-3-33】勝率5.1%、複勝率15.4%
18年エポカドーロ、20年ガロアクリークと隔年で穴を提供するのがスプリングS、今年は好走の番か。その勝ち馬はビーアストニッシド。1.48.4で逃げ切った。残り400~200m11.3の瞬発力は評価できる。ビーアストニッシドは京都2歳S2着、共同通信杯3着と重賞で複数回好走、それぞれの勝ち馬ジャスティンロック、ダノンベルーガの評価を際立たせるとともに、自身の価値も証明する。いずれも逃げて好走しており、本番の戦法はライバルの出方次第であるが、レースレベルを担保する存在でもある。
その着順別成績はほかの前哨戦以上にシビア。1着【1-0-2-6】勝率11.1%、複勝率33.3%、2着【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%、3着以下【0-0-0-21】。2着馬の登録がない今年ならビーアストニッシドのみ。
若葉S【0-2-1-21】複勝率12.5%
すっかり影が薄くなったトライアルが若葉S。とはいえ、最後に馬券に絡んだのは19年ヴェロックス2着。完全にノーマークでいいともいえない。念のため振り返る。デシエルトが2.00.2で逃げ切り。1000m通過1.00.8、後半800m11.7-11.5-11.4-12.4。最後200mで時計を要してはいるが、先手をとってこのラップで勝った点は価値ありとみたい。ビーアストニッシドとの兼ね合いはカギだが、マイペースの逃げさえ打てれば一発あってもいい。
しかし若葉S組はその人気できっちりわかる。若葉Sで1番人気だと【0-2-1-4】複勝率42.9%。2番人気以下は【0-0-0-17】。若葉Sで1番人気にならないようだと厳しい。デシエルトは2番人気だった。
非トライアルでは、京成杯【0-0-1-3】は0.1以上勝ちが必要であり、1番人気が理想。オニャンコポンは前者をクリアするも、人気は6番人気。真の進撃はあるか。
最後に今年はイクイノックスが前走東京スポーツ杯2歳Sから挑む。さらに間隔をとったローテが出現した。これはやってみないとわからないところだが、後半1000mすべて11秒台のハイレベル戦だったことは事実。一方でその反動があったのか、アサヒ、テンダンス、ダンテスヴュー、レッドベルアームは年明け重賞を勝っていない。イクイノックスのローテは狙ったものなのか、間を開けざるを得なかったのか、解釈はわかれる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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