【ニュージーランドT】逃げて差しかえした好素材ジャングロ、“試走”マテンロウオリオンの今後の可能性

勝木淳

2022年ニュージーランドTのレース結果,ⒸSPAIA

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詰まったローテでここまできたマテンロウオリオン

NHKマイルCトライアルは関西圏アーリントンCが移設され、ニュージーランドTは難しい立場にある。今年の出走馬はフルゲート割れの11頭。関東馬6頭、関西馬5頭。1勝馬2頭という組み合わせだった。

実績上位はシンザン記念Vマテンロウオリオン。本番出走は決めており、ここは試走というスタンス。間隔をとる傾向がある昨今だが、あえてここに出走してきた。ダイワメジャー産駒は使いながら調子を上げる。本番にピークを持っていくための出走と推測できた。実際、マテンロウオリオンは中1週、格上挑戦で1勝目、シンザン記念も中1週と頑健。馬の個性をつかんだローテだった。

そういった意味でも2着という結果は上々といったところ。うまく立ち回って、末脚をきっちり使った。最後にやや伸びきれなかったのは間隔をとった分であり、本番を見据えた余しでもある。理想的な上昇曲線を描き、NHKマイルCへ向かってほしい。

マイル戦でも余裕があったジャングロ

マテンロウオリオンを破ったのがジャングロ。この世代から馬主デビューの藤田晋氏、初年度から重賞ウイナーを出した。なかなかの馬運の持ち主。今年の2歳はセレクトセール高額取引馬がズラリ、期待が高まる。

ジャングロは1200mを逃げて連勝中のスピードタイプ。マイル戦は昨秋ベゴニア賞6着以来の挑戦。ここも身上のスピードを生かすべく、武豊騎手はハナを狙う。競りかけてきそうなエンペザーが外枠だったこともあり、無理しなかったためマイペースに持ち込めた。2走前の1200m戦では前半600m33.7で逃げていたが、制御が効くタイプで、リズムを乱すことはなく、今回は34.7。前半800m46.8は厳しくなかった。

向正面で12秒台を2度続け、息を整え、後半600mは11.7-11.4-11.6、34.7。じわりとペースを上げ、後続に脚を使わせ、4コーナーから坂下11.4でスパート、マテンロウオリオン以下を退けた。坂をあがって11.6でまとめたあたり、急坂も苦にしない。最後は前に出られたマテンロウオリオンを差しかえしており、闘争心も強い。完成度はかなりのものだ。前後半800m46.8-46.7、このバランスで逃げられる3歳馬はそうはいない。溜めをきかせなければ乗り切れない東京マイルをどう攻めるか。本番のカギを握る一頭になるだろう。

3着は6番人気リューベック。リステッド若駒S勝ちは1、2着馬とそん色ない実績。6番人気はやや甘く見られたか。クラシック路線のトライアルから矛先を変えてくるローテは昨年2着タイムトゥヘヴンとそっくり。今後もこういった早々に見切りをつけ、一旦マイル路線へ転換してくる馬には注意したい。

展開がそこまで速くならなかった点もリューベックには味方した印象。それでも最後に甘くなったのは初のマイル戦出走の影響だろうか。だとすれば、今度はもっと伸びる可能性がある。マイルへのシフトチェンジであっさり控える競馬をし、ある程度結果を出したように、こちらも好素材。ディアドラの全弟、いずれ小回りなら中距離をこなしてくるだろう。


2022年ニュージーランドTのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


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