【阪神大賞典】ゴールドシップ3連覇にオルフェーヴル「逸走2着」など 存在感放つステイゴールドの血 

緒方きしん

阪神大賞典過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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上がり馬と昨年、一昨年覇者が激突

金鯱賞は重賞初挑戦のジャックドールがレコードで逃げ切り勝ち。福島記念、中山記念を逃げ切ったパンサラッサはロードカナロア産駒、ジャックドールはモーリス産駒と、日本を代表する快速馬から有力な逃げ馬が輩出され、競馬界が盛り上がってきた。

さて、今週は阪神大賞典。歴代の勝ち馬にはマヤノトップガンやスペシャルウィーク、テイエムオペラオーやディープインパクトなど歴代屈指の名馬たちが名を連ねる。ここから1年を始動する名馬も数多くいる、非常に重要な一戦だ。

過去にはメジロマックイーンやナリタブライアン、ナリタトップロードが連覇した一戦であり、今年も前年覇者のディープボンドが出走する。さらには一昨年の覇者ユーキャンスマイル、8歳の白毛馬シロニイ、連勝中の上がり馬マカオンドールなど多士済々なメンバーが集まった。今回はそんな阪神大賞典の歴史を振り返る。

ここ数年はやや波乱傾向

阪神大賞典過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気馬は2勝。2019年シャケトラ、2017年サトノダイヤモンドが人気に応えた。過去にはゴールドシップが3年連続で単勝1倍台の支持を受けて勝利している。

2009年にオウケンブルースリが7着に敗れて以降、1番人気が馬券圏外に沈むことはしばらくなく、2010年代には全ての1番人気馬が3着以内。しかし2020年になり1番人気キセキ(単勝1.6倍)が7着に敗れると、2021年も1番人気アリストテレス(単勝1.3倍)が7着と敗北した。

2017年サトノダイヤモンド、シュヴァルグランによる馬連1.4倍決着など手堅い決着が続いた2010年代と比べると、ここ2年はやや波乱。2010年代の馬連最高配当は2019年の27.0倍、次いで2010年18.2倍だったのに対して、ここ2年の馬連は37.2倍、35.1倍と、2010年代で一度も超えなかった30倍のラインを超えている。

悲運の名馬、シャケトラ

2019年の勝ち馬はシャケトラ。AJCCから2連勝を飾り、大目標である天皇賞(春)に向けて弾みをつけた。

シャケトラは若駒時代から素質を評価されつつも、デビュー前の骨折などで満足にレースに出走できない時期が続いた馬だった。3歳シーズンは4戦3勝、明け4歳シーズンは日経新春杯2着→日経賞制覇と実力は見せるものの、宝塚記念4着などG1タイトルには手が届かずにいた。また5歳シーズンは骨折により全休、上述した2019年AJCCは17年有馬記念6着以来となる「中391日」ぶりの実戦となった。

AJCCでの勝利はフィエールマン、ダンビュライトといった実力馬を相手にした上での価値ある白星であり、長期休養明けの重賞制覇としては史上2位の記録(1位は中461日でオールカマーを制したスズパレード)でもあった。続く阪神大賞典では単勝2.2倍の1番人気に5馬身差の快勝で応え、天皇賞(春)では父マンハッタンカフェとの親子制覇も期待された。

しかしシャケトラは、天皇賞(春)に向けた調教中に左前第一指骨粉砕骨折し、この世を去ってしまう。美しい見た目に、力強い走り。ブランクをものともせず連勝する姿は多くのファンの心を掴んでいただけに、急逝はファンや関係者を悲しませた。そしてシャケトラ不在の天皇賞(春)はフィエールマンが制して幕を閉じた。

2019年阪神大賞典の3着馬ロードヴァンドールは、地方・川崎に移籍後レース中の開放骨折により安楽死の措置が取られた。2016年の3着馬アドマイヤデウス、2017年の3着馬トーセンバジルはともに、オーストラリア移籍後に故障発生し、現地で安楽死の措置が取られている。2016年の2着馬タンタアレグリアもまた、2019年に調教中の故障発生によりこの世を去った。改めて、競走馬が無事に走り切ることの難しさを痛感させられる。

ステイゴールドの血が騒ぐか

過去にはゴールドシップの3連覇のほかに、同じくステイゴールド産駒のレインボーラインがここを制して次走の天皇賞(春)でGⅠ馬になっている。さらに、今でも語り草となっているオルフェーヴルが逸走しながらも2着に食い込んだのも、阪神大賞典。これまでステイゴールドの血がここで存在感を見せてきた。

今年はゴールドシップ産駒の4歳馬マカオンドールが出走を予定している。京都新聞杯で3着に食い込んだ素質馬が条件戦、万葉Sを連勝してタイトルを狙う。昨年のステイヤーズS2着馬アイアンバローズ、3着馬シルヴァーソニックも参戦を予定しており、どちらもオルフェーヴル産駒。こちらは父のリベンジを狙う。

2015年2月5日、21歳でこの世を去った名種牡馬ステイゴールド。2022年になってからも、京都記念でアフリカンゴールド、レッドシーターフHでステイフーリッシュ、春麗ジャンプSでマイネルヴァッサーが勝利し、今もなお存在感を示している。その後継種牡馬たちが父の得意とした阪神大賞典に産駒を送り込むことに注目しながら、全馬の無事を祈り、レースを楽しみたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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