【函館記念】サマー2000シリーズ王手! 混戦断ったトーセンスーリヤ、その強さとは

勝木淳

2021年函館記念のレース結果,ⒸSPAIA

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まだまだ成長望めるトーセンスーリヤ

波乱必至のハンデ戦である函館記念を制したのは2番人気トーセンスーリヤ。通算6勝目、重賞は20年新潟大賞典に続く2勝目。自身のキャリア最大着差である3馬身差は6歳にして充実期を証だろう。デビューは4年前の大井。新馬で負けた相手はのちに東京大賞典とマイルCS南部杯3着のモジアナフレイバー、ハイレベルなデビュー戦だった。

中央移籍後は札幌、中山芝1800mで3勝。小回り、適度に時計を要するコースで先行して抜け出す形を磨いた。新潟大賞典では課題だった200mの距離延長をクリア、あまり得意ではなかった前半より後半が速くなるスローペースにも対応、着実に階段をあがった。相手が強化されたGⅠ、GⅡでは苦戦を強いられたものの、春後半、使いながら状態を戻した。函館記念は洋芝、小回りの芝2000m、狙いすました一戦だった。

鞍上の横山和生騎手もやるべきことは決まっていた。好位の3、4番手からペースを感じながら仕掛けどころを探る。外枠のレッドジェニアル、マイネルファンロンが先手を主張、切れ込んできたときに危うい場面こそあったが、その後は完璧。2頭が飛ばすペースは1000m通過58.5。後続が切れ味を活かせない速めの流れも味方した。和生騎手にとってこの上ない展開だった。早めにマイネルファンロンがレッドジェニアルをつぶしに行き、それを目標にトーセンスーリヤは進出、残り400mで捕らえた。そこからゴールまでの11.6-12.1はトーセンスーリヤが刻んだラップ。前半で巧みに控えたことで、自身の強みを目一杯発揮できた。

トーセンスーリヤの母トーセンガラシャは兄弟に障害重賞3勝のテイエムハリアー、2歳と6歳で重賞を勝ったテイエムプリキュアを持つ。キャリア最大着差で勝ったトーセンスーリヤ、その成長力はまだまだこれからではないか。次走は札幌記念ではなく、重賞を勝った新潟芝2000mの新潟記念を目指すそうで、サマー2000シリーズ優勝に王手をかけた。

イメージしにくくかった2、3着馬

2、3着は今年も波乱の結末。2着14番人気アイスバブル、3着12番人気バイオスパークとふた桁人気馬が激走した。2着アイスバブルは2000m戦出走が昨年新潟記念以来。目黒記念2年連続2着など広いコース、長めの距離に適性があり、函館記念好走のイメージがわきにくいタイプだった。昨年の目黒記念2着から好走がなく、近走もハンデ戦では55キロで出走、ハンデにも恵まれた。今回は枠順を利して、迷わず後方のインに控え、4コーナーまでとにかく動かなかった。最後だけ馬場の中央へ出したものの、進路が狭くなり、インに切りかえた。腹をくくって他力本願の競馬に徹した結果、展開も向いたといったところか。

3着バイオスパークは昨年の福島記念勝ち馬。人気急落をあざ笑うような激走。盲点になっていた。函館記念で57キロを背負って馬券圏内に来たのは11年アクシオン以来、超久々。57キロ苦戦のデータを根拠に真っ先に切り、痛い目に遭った。現役屈指の決め打ち系・池添謙一騎手らしく、相手はトーセンスーリヤ1頭という競馬が功を奏した。徹底マークを振り切ったトーセンスーリヤを称えるべきだろう。

フェブラリーSの勝ち馬カフェファラオは1番人気9着。はじめての芝で58.5キロはやはり厳しかった。最後にアイスバブルに寄られ、進路が狭くなった不利はあったものの、そもそも勝ち負けには持ち込めなかった。ここに出走した意図はよくわからないが、マイル以上で唯一勝利したシリウスSはメンバーレベルが低く、中距離は距離適性の範囲外かもしれない。

2021年函館記念のレース展開図,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


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