【弥生賞】3着ダノンザキッドの評価は?牡馬クラシック戦線は一転して主軸なき大混戦に

勝木淳

弥生賞ディープインパクト記念結果2021ⒸSPAIA

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タイトルホルダーの気性をつかんだ横山武史

ホープフルSがGⅠになって4年。その勝ち馬が春のトライアルレースに出走したのは17年タイムフライヤーと20年ダノンザキッドの2頭。前者は若葉Sで5着敗退。そしてダノンザキッドは弥生賞ディープインパクト記念で3着。どちらも単勝1倍台前半で勝てなかった。

反対に年明け緒戦を勝ったのは、皐月賞直行だったサートゥルナーリアとコントレイルの2頭。2歳で皐月賞と同舞台を走るホープフルSは、予想以上に消耗が激しく、間隔をとるローテがベストなのかと考えるも、勝ったのはそのホープフルS4着だったタイトルホルダーなので、断言はできない。

タイトルホルダーはここまで東京スポーツ杯2歳S2着、ホープフルS4着でダノンザキッドに2戦2敗。ダノンザキッド以外は、重賞未勝利馬といった組み合わせであり、タイトルホルダーこそ逆転候補筆頭ではあった。だが、弥生賞ディープインパクト記念と同舞台のホープフルSで着差が開いてしまった結果からここで逆転は?と考えるのも無理はない。それをやってのけた代打・横山武史騎手の戦略に注目しよう。

タイトルホルダーは、東京スポーツ杯2歳SやホープフルSでは発馬直後から前に行きたがり、それを鞍上が抑えていた。横山武史騎手はこの前進気勢を逆手にとり、逃げを選択。陣営の仕上げもあっただろうが、先頭に立つと馬は納得し、リズムをつくった。600~800mの13.0という遅いラップも自然に踏み、前半1000mは1分2秒6。中山のスローペースを後ろから逆転するのは難しい。

ダノンザキッドを意識したトライアルとなれば、後続も遅いと感じてもうかつに動けない。こういった金縛り状態を横山武史騎手は読んでいた。まくってくる馬もいなければ、後半1000mもタイトルホルダーのリズムでラップを徐々に上げて行き、残り600mでスパート。前半でリズムよく脚をため、後半もマイペースでギアチェンジしたため、11.6-11.0-11.9とタイトルホルダーは自分の脚力をしっかり使い切った。会心の逃げ切りだった。

3着ダノンザキッドの評価は

2着シュネルマイスターはルメール騎手がこういった流れを読み、前半で積極的に前へ行かせ、2番手で流れに乗れた。タイトルホルダーを交わすだけという競馬を作りながら、捕らえられなかったあたり、チューリップ賞1着同着のエリザベスタワーと同じキングマン産駒だけに若干距離が長かった。頭が高く、走りにロスが多いので、現状では距離はマイル前後がベストだろう。

最後はいい脚を見せたダノンザキッド。この3着は悩ましい。川田将雅騎手はトライアルを意識、今回はダノンザキッドに中山の1コーナーまでに外目で折り合えるかという課題を与えたようにみえる。先行争いが激しくなかったこともあるが、折り合いという課題はクリアできず、ペースがじわりと上がった残り1000m付近まで行きたがる状態が続いた。

休み明けのトライアルという臨戦過程もあったが、勝負所での反応の悪さは前半の消耗も影響したのではないか。ここを叩いて反応がよくなると踏むか、この結果から皐月賞で評価を下げるか、これは意見がわかれるところだろう。

ダノンザキッドの戦歴を整理すると、東京スポーツ杯2歳Sが1分47秒5、ホープフルSは2分2秒8。個人的には馬場状態の差もあるが、走破時計はどちらも平凡であり、昨秋からダノンザキッドの評価を保留しつづけた。そしてこの弥生賞ディープインパクト記念の記録と内容では、正直、皐月賞で疑いたくなる。

ここまで無敗で世代をけん引したダノンザキッドが怪しくなると、春のクラシックは一転して大混戦に陥る。

ホープフルS3着ヨーホーレイクは、きさらぎ賞でラーゴムに敗れ、ラーゴムはアイビーSでオーソクレースに敗退。そのオーソクレースはホープフルSでヨーホーレイクを抑えるも、ダノンザキッドに負けた。そのダノンザキッドが弥生賞ディープインパクト記念でホープフルS4着のタイトルホルダーに遅れをとった。共同通信杯のエフフォーリア(こちらも前走は横山武史騎手)もおり、牡馬クラシック戦線は昨年とは対照的な大混戦になりそうだ。

弥生賞ディープインパクト記念結果2021ⒸSPAIA

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ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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