【札幌記念】「スーパーGⅡ」も実際は函館記念と同レベル?春のGI馬の取りこぼしが目立つ一戦でのラッキーライラックの評価とは

山崎エリカ

2020年札幌記念PP指数インフォグラフィック

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ラッキーライラックの取りこぼしもある?

札幌記念は夏季競馬開催では唯一のGII。1着賞金は7,000万円とGII競走の中では最高額が用意されており、過去には同年春のGⅠ馬ハープスターやゴールドシップ、フィエールマン等が凱旋門賞のステップレースとして出走したこともあったことから「スーパーGII」と表現されることもある。

こう書くと札幌記念は、限りなくGIに近いハイレベルの一戦と感じるかもしれない。しかし、実際はGⅢの函館記念と同等レベルの指数で決着することも少なくない。実際、昨年の春の天皇賞馬フィエールマンはこのレースで3着と、本来の能力を出し切れずに取りこぼしている。つまり、今春の大阪杯を制したラッキーライラックの取りこぼしも十分に考えられるということだ。

2020年札幌記念出走馬のPP指数


ただ、札幌記念が休養明けだったフィエールマンとは異なり、宝塚記念を使っている点は好ましい。しかも、宝塚記念は直前の10レースの発走前に降ったゲリラ豪雨の影響を受け、稍重発表以上にタフな馬場。そのうえ前半3F34秒6のタフな流れにもなった。もちろん1コーナーと2コーナーの間でペースが緩んでいるものの、前へ行った馬にとって厳しい流れだったのは間違いない。

ラッキーライラックはスタミナが不足する休養明けで、前半からポジションを取りに行ったのだから、最後の直線で息が持たずに失速したもの無理もない。宝塚記念が厳しい競馬になったことで能力値を下げたが、それでも2位タイ。しかし、中間の調教が軽く、鞍上もGⅠ史上主義のM・デムーロ騎手。この先の天皇賞(秋)が目標ということを考えると、過大評価はできない。そのうえ1番人気が予想されるとなると、あくまでも相手候補の一頭だろう。

能力値1位、ノームコアの評価は?

昨年のヴィクトリアマイルの覇者で、今年の同レースで3着、安田記念で4着と好走したノームコアがここでは能力値1位だ。この馬は東京芝1600mのレコードボルダーであるように、超絶高速馬場が得意。3歳時には、秋の中山開催開幕日に行われた紫苑Sを圧勝した実績もあるように、芝2000mも悪くなく、超絶高速馬場のマイル戦だと出負けすることからも、距離延長が好転する可能性もあると見ている。

ただし、理想的なのは超絶高速馬場の芝2000m戦であって、開催の進んだ洋芝の札幌は、減点材料だろう。ただ、札幌は雨に祟られた先週はタフな馬場だったが、今週末は晴天。少なくとも先週よりは高速化するのは好ましい。また、この馬は横山典騎手の進言によって、芝2000mのこのレースに出走することになったようだが、「騎手の言うことを信じで食いつくと痛い目に合う」それが競馬である。

函館記念の勝ち馬アドマイヤジャスタの評価は?

ラッキーライラックと並ぶ能力値2位は、巴賞を逃げ切り、前走の函館記念でも逃げて4着のトーラスジェミニだ。逃げ馬は負けても負けても行き切ることを繰り返すことで、どんどん持久力がつき、気がつけば番狂わせの勝利をあげることがある。

函館記念は、2回函館開催の最終日で時計を要した中、前半5F58秒8のオーバーペースで逃げて、勝ち馬アドマイヤジャスタと0.4秒差。後半5Fが11秒8-12秒0-12秒1-12秒4-12秒6とゴールに向かって失速していることからも、明確にオーバーペースだったのがわかる。この流れで善戦しているトーラスジェミニは間違いなく地力をつけていると言える。逃げ馬だけに常にペース次第のところはあるが、函館記念時よりも同型が手薄で、ペースが上がる要素がないのは評価できる。

一方、函館記念で前が失速する展開を差しただけの、能力値5位のアドマイヤジャスタは評価できない。しかも、前走は直線で1番人気に支持されたカウディーリョの進路をしっかり塞いでの、100点を通り越すレベルの騎乗による優勝だった。

アドマイヤジャスタは、前々走の鳴尾記念よりホライゾネット着用で指数を上昇させてきたが、さらに相手が強くなるここで、前走以上の走りをする根拠が見当たらない。あるとすれば成長パターンだが、3歳馬ならともかく、4歳以上でその要素を考えるとキリないので軽視する。

また、ルメール騎手鞍上で、過剰に人気になる能力値4位のポンデザールも軽視したい。同馬は前走の札幌日経オープンでは、先行策から突き抜けて圧巻の勝利だったが、昨年の札幌芝2600mの丹頂S後から前走まで大敗の連続だったように、洋芝の長距離が得意条件の馬。今回は洋芝という条件はいいが、2000mはさすがに距離不足。速い流れになるほどテンに置かれる可能性が高い。しかも、外目の枠となると好ポジションが取れず、ロスの大きい競馬になりそうだ。

今回の穴馬候補はトーセンスーリヤ

面白い存在なのは、前々走の新潟大賞典で、重賞の壁をあっさりと突破したトーセンスーリヤ。ある程度レースが流れた中、やや後手を踏んだものの3列目の内々を追走し、3~4コーナーでは最短距離を通って優勝。今回は3番枠と内枠を引き当て、逃げ馬トーラスジェミニに行かせて、その番手、2列目をロスなく立ち回れそうなのが好材料。

前走の宝塚記念は、オーバーペースの逃げ。逃げ馬が不在だったこともあるにせよ、スタートも良くなかった中、かなり激しく押してハナを主張と、さすがに無茶をさせすぎた。ただし、厳しい流れの経験は、後の持久力強化へと繋がる。自分のリズムで走れれば、しぶとい粘りで巻き返せると見ている。数ある穴馬の中でも一推しだ。

その他のダークホースは?

今回はアドマイヤジャスタ、ポンデザールを軽視するうえに、人気のラッキーライラック、ノームコアも本命にはしづらいため、他にも穴馬を3頭挙げておくことにする。

まずは昨夏の札幌・HTB賞と今年2月の時計の掛かる小倉の馬場で行われた関門橋Sを制してオープン入りを果たしたカウディーリョ。同馬は前々走のメトロリタンSでは、コントロールに苦労して折り合いを欠きながらレースを運び、さらには3~4コーナーから包まれまま直線を向かえ、直線序盤で位置を下げる不利。ラスト2Fで進路が開いた内から追い上げて勝ち馬と0.1秒差の4着だった。

また、前走の函館記念は、スタート後に内に刺さって接触。そこからコントロールしてハイペースの好位の中目を立ち回り、3~4コーナーで激しく手を動かして、直線ではレイエンダの直後へ。しかし、ペースが厳しくなったことでレイエンダが後退。外からアドマイヤジャスタに蓋をされ、進路が全くなくなってブレーキをかけて後退。最後に外に誘導して、そこから伸びたものの7着だった。

オーバーペースを先行した前走は、3~4コーナーが厳しい手応えで、どのみち勝ち負けは厳しかったと見ているが、近2走とも不完全燃焼の競馬だったのも事実。グレーな要素を抱えている馬ではあるが、人気がないのなら買っておきたいところだ。

2頭目は、3歳時にマイルCSを制し、一昨年のマイルCSでも2着の実績はあるものの、PP指数の最高値は一昨年の大阪杯2着時のペルシアンナイト。宝塚記念はやや距離が長いうえに、オーバーペースを先行、加えて馬場の悪い最内を通ったために15着に失速した。厩舎&牧場の使い分けでマイル路線を歩んだものの、本来は中距離でこその馬。この距離と前走で厳しい流れを経験した効果で、変わり身が見込める。

最後に、昨秋の京都大賞典で大番狂わせを成し遂げたドレッドノータスを超絶大穴馬として推奨する。昨秋の京都芝コースは例年ほどの超絶高速馬場ではなく、ただの高速馬場のレベル。レースが平均ペースで流れた中、正攻法の競馬で優勝した。

また、ドレッドノータスは雨の影響を受けた一昨年の京都芝2000mのアンドロメダSを勝利しているように、水準馬場でジワジワと前との着差を詰めて行くようなレースが向いている。つまり、今の札幌で緩急のない流れなら、どストライクゾーンである可能性が高い。近走は距離云々よりもシンプルな調子落ちで大敗しているが、立て直された今回は変わり身があっても不思議ではない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ノームコアの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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