【安田記念】今年は波乱必至!?「4歳」「ディープインパクト産駒」が振るわないワケとは?

鈴木ショータ

2020年安田記念データインフォグラフィックⒸSPAIA

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瞬発力よりも持久力を重視

6月7日に安田記念が行われる。例年上がりの速い瞬発力勝負にはなりにくい。なぜなら、道中のペースが非常に速く、息が入る区間がないからだ。同じくマイルのGⅠレースとなる、秋のマイルCSと比較したラップの差が、以下のようになる。

・安田記念
中盤3F:34.3、上がり3F34.9、ラップ差-0.6
・マイルCS
中盤3F:34.9、上がり3F34.7、ラップ差0.2

このようなラップ構成になっていることから、様々な予想ができるので、上記の流れを理解した上で、以下の章もご覧いただきたい。

マイルGⅠのラップ差ⒸSPAIA



持久力勝負に強いのは高齢馬

瞬発力と聞くと、人間でも想像しやすいが、若い方が長けていることが多い。馬にもそれは当てはめることができる。年を重ねるごとに、速い上がりを使えなくなり、芝の一線級では通用しなくなる。スプリント路線などでは、すぐに王者が変わるのがいい例だろう。

逆に上がりのかかるダート戦では、瞬発力が不要となるため、ヴァーミリアンやカネヒキリ、スマートファルコンなど、高齢になっても活躍していた馬が多い。安田記念もダート戦のような傾向があり、高齢馬の活躍が目立つレースになっている。

年齢別データⒸSPAIA



6歳馬の好走率や回収率は、4歳馬に匹敵するほどで、高齢でも侮れないことがわかる。ぱっと見は3歳馬の爆発力が凄まじく見えるが、これは9番人気で勝ったリアルインパクト1頭が引き上げているだけで、上記のラップ構成を考えても、年長馬に利があるととらえた方がいいだろう。

サンデー系は持久力勝負が苦手

瞬発力を武器とするサンデーサイレンス系は、持久力勝負の安田記念は苦手であることが予想できる。

実際にサンデーサイレンスの直子は、瞬発力勝負のマイルCSではデュランダルなど計6勝を挙げているのに対し、持久力勝負の安田記念は、たった1勝のみ。しかもその1勝が、サンデー系の中でも持久力タイプであったダイワメジャーであることも興味深い。

このことを踏まえると、サンデーサイレンスの後継種牡馬であるディープインパクトも、安田記念には不向きではないか、という仮説が成り立つ。実際に調べてみたところ、ディープインパクト産駒は、安田記念では他のGⅠと比べて、好走率が低いというデータが出てきた。

ディープインパクト産駒のGⅠ成績ⒸSPAIA



単勝回収率は115%と高く見えるが、これは先ほども指摘したように、人気薄で勝利したリアルインパクトが引き上げているもの。複勝率でみると、他のGⅠレースよりも半分ほどの数値になっており、「ディープインパクト産駒は安田記念が苦手」という仮説は、おおむね当たっていると判断できる。

出走を予定しているディープインパクト産駒は、グランアレグリア、ケイアイノーテック、ダノンキングリー、ダノンプレミアム、ヴァンドギャルドなど、人気上位となりそうな馬も複数含まれており、穴党は波乱を期待したくなるレースだ。

初めての斤量58キロは走らない!?

安田記念では高齢馬が強い、というデータを示したが、そのデータは見方を変えると、「4歳馬が不振」ということも挙げられる。その背景には、4歳馬のほとんどが初めて58キロの斤量を背負う、ということがある。

馬は経験をしたことがない時に、思うような結果を出せないことが多い。初めてのレース、初めての遠征競馬、初めての騎手、初めての左回り、初めての距離…etc。はじめての”おつかい”くらいなら、失敗も笑いや感動になるので問題ないが、競馬の場合はそうもいかない。

過去10年で、3着以内に好走していた20頭(4歳以上牡馬)を分析すると、そのうち16頭は安田記念より前に58キロの斤量を経験していた。1度経験しているアドバンテージがどれだけ大きいかは、過去の安田記念を振り返ってみてもわかる。

コスモセンサーは初めての58キロとなった1度目の安田記念では16着に大敗したが、2度目の安田記念では3着に激走。サトノアラジンも同様に、1度目は4着に敗れたが、2度目で1着。フィエロは、3度出走し、8着→4着→3着と経験を積むごとに前進した。

今年初めて58キロを背負うのは、アドマイヤマーズ、ストーミーシー、ダノンキングリー、ダノンスマッシュ、ヴァンドギャルド。データ的には積極的に買いたい馬ではないが、もしそのハンデすらも覆して勝ってしまったら、歴史的な名馬になる可能性が高い。

というのも、初の58キロでも勝った馬には、近年でもインディチャンプやモズアスコットがいるからだ。ご存知のように、2頭はともにその後もGⅠを制覇する活躍を見せている。

データはあくまでおおまかな傾向であり、多くの馬には当てはまるが、当てはまらない馬もいる。それが名馬だ。常識を超えるのが名馬の条件であって、そんな時は馬券はハズレても、勝者に拍手を送りたい。そしてもう何個かGⅠを勝つと見込んで、どこかで負けた分を取り返したい。

ライタープロフィール
鈴木ショータ
競馬伝道師。競馬エイトトラックマンを経てフリーに。オリジナルのweb競馬新聞「PDF新聞」を毎週発行。根っからの大穴党で、馬券格言は「人の行く裏に道あり”穴”の山」

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