【オークス】前哨戦でうまく試運転できた馬は?デアリングタクトは本当に盤石なのか?

東森カツヤ

2020年オークス、過去10年の3着以内馬の前走レースⒸSPAIA

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3着以内数は桜花賞組がトップ

5月24日(日)に東京競馬場で行われるのはオークス(GⅠ・芝2400m)。桜花賞を豪快な差し切りで制したデアリングタクトが無敗での牝馬2冠に挑む一戦だ。

今回の記事ではオークスを予想する上で大きなヒントとなる前哨戦4レースを振り返る。本番で馬券を買うべき“試運転”ができたのは果たしてどの馬だったのか。 まず、路線別のオークス成績について見ていこう。

オークスの前走レース別成績ⒸSPAIA

過去10年、前走レース別の3着内回数をカウントすると桜花賞組が16回、フローラSが9回、忘れな草賞が3回。スイートピーSと皐月賞がそれぞれ1回ずつで、これで計30頭。フラワーC組を始めとする、これ以外のステップを踏んできた馬は合計で41頭出走しているが1頭も馬券に絡んでいない。

皐月賞からの臨戦は14年3着のバウンシャッセだけの例外的ローテで、今年も該当馬がいない。したがって、オークスを予想する上では桜花賞、忘れな草賞、フローラS、スイートピーSの4レースについてどう順列をつけるか、それぞれの路線からどの馬をチョイスするかがほとんど全てといっていい。

それでは、さっそくその4レースそれぞれの内容を振り返っていく。

桜花賞組の序列は距離が延びても変わらず?

オークスに出走した桜花賞組について、桜花賞での着順別に成績を分けると1~3着馬の丁度半数がオークスでも3着以内に入っており、高い好走率を誇っている。800mも距離が異なる舞台だけに少々意外なデータだった。

桜花賞での着順別、オークスでの成績ⒸSPAIA

この原因として、距離が明らかにダメな桜花賞好走馬はNHKマイルCという受け皿が用意されているのでそちらに行く傾向があることが挙げられる。実際、今年も桜花賞2着馬のレシステンシアはNHKマイルへ。去年の桜花賞馬グランアレグリアも同様。

オークスに出走した近10年の桜花賞馬で大敗したのは、レッツゴードンキとレーヌミノルだけ。両馬はその後、短距離を主戦場にした馬として知られている。この2頭のようなコテコテの短距離馬でなければこの時期の2400mは意外とこなせるようだ。

裏を返せば、距離延長が歓迎できそうな桜花賞4着以下の馬についてはオッズの妙味も含めてついつい手を出したくなるのだが、この狙いが案外ハマらないので注意したい。

前置きが長くなってしまったがレースについて回顧する。今年の桜花賞はかなりの雨量で馬場が著しく悪化。レースラップの12.4-11.2-11.3-11.6-11.5-11.7-12.6-13.8を見ても、レース上がり38.1秒、最後の1ハロンは13.8と各馬死力を尽くしての一戦だったことが分かる。前述したように桜花賞大敗からのオークス巻き返しはデータ上難しいのだが、重馬場に泣いた馬が今の軽い東京の芝に替わって一変する可能性は意識しておきたい。

整理すると、桜花賞組から狙いをつけるならば(1)コテコテの短距離馬を除く3着以内馬、(2)重馬場に泣いた、軽い馬場巧者、の2通りということになる。

1着デアリングタクトは中団の外にじっくりと構え、最後の直線で完全に抜け出した2頭を力強く追い詰めて捕らえきった。特に短距離向きという馬ではないので、桜花賞上位勢の好調にもれず好走が見込めるだろう。当然ながらこの路線では最上位の評価。

3着スマイルカナは逃げてしぶとさを活かす自分の競馬で、ペース的には厳しい流れでも健闘。ただ、前走で逃げていた馬のオークス成績は【0-0-1-11】と苦戦傾向。マイルでハナを切れるようなスピードのある馬が東京の2400mにぶっつけで対応するのはなかなか難しい。

4着クラヴァシュドールは3コーナーで外から他馬が上がってきたときにひるんだのか、大きくポジションを下げる事象があった。それがあってやむなく進路も最内に切り替えながら4着まで巻き返した内容は地力の高さを伺わせる。昨年のサウジアラビアRCではサリオスに同タイムの上がりで食らいついた馬でもある。

5着ミヤマザクラは早めに上がっていく競馬で最後までジワジワと伸びていて、スタミナのあるところを見せた。全兄に菊花賞3着馬のポポカテペトルがいて、同馬自身も2000mで好走実績があるように、距離延長は魅力的。東京も経験&勝利済み。気になる1頭。

穴からは16着のウーマンズハート。右にモタれてしまう面がある馬で右回りのレースはイマイチな上、重い馬場は苦手なのだろう。デビューからの2戦は左回りの軽い馬場という条件で高いパフォーマンスを見せていた馬なので、ガラリ一変があるとすれば今回か。

過去10年で3勝の忘れな草賞だが……

忘れな草賞からは勝ち馬ウインマイティーと3着馬リリーピュアハート(抽選対象)がエントリー。こちらも雨で渋った馬場で施行され、レースラップは12.7-11.6-13.1-13.1-13.1-12.6-12.2-11.9-11.5-11.8と、スローペースからの後半4ハロン勝負になり、勝ち時計も遅め。2着、4着馬がその後の1勝クラスで敗戦しており、レースレベル自体に疑問符がつく。

1着ウインマイティーは中団のインにポジションをとり、コーナーから手が動きながらも直線で狭いスペースをキレイに割って勝利。ゴールドシップ産駒なので重めの馬場が合っていたこと、ロスなく立ち回れたことが大きい印象だ。距離延長は良さそうだが、エルフィンSではデアリングタクトに1.5秒差で完敗を喫しているのも事実。

3着リリーピュアハートは4番手から終始スムーズな競馬も、最後の追い比べで案外。相手強化でも、という魅力を感じられるものではなかったか。

レースレコード決着のフローラS

レースラップは12.5-11.3-11.3-11.6-11.9-11.9-12.5-11.8-11.8-12.1で、シャンドフルールが1000m通過58.6秒というハイペースでガンガン飛ばしていき、1番人気に推されたスカイグルーヴが伸びあぐねるのを尻目にウインマリリンが最内から突き抜け、鞍上の横山武史騎手ともども重賞初制覇。

ハイペースと馬場の軽さに因る面も大きいとはいえ、勝ち時計1.58.7はフローラSのレースレコード。この日は開幕週にしてはイン一辺倒の馬場傾向ではなく、勝ち馬を枠に恵まれただけと片付けるのは早計。

1着ウインマリリンは内枠も活かして積極的にポジションをとりにいって内の4番手。徹底的にコースロスをなくした競馬で抜け出し、最後はステッキを落とすアクシデントもありながら追撃をしのぎ切った。

2着ホウオウピースフルはウインマリリンを斜め後ろから見るような位置で競馬を進めたが、直線はなかなか進路が空かず。残り200m少々から追い出してゴール前で急追したものの、わずかに間に合わなかった。本番にむけて期待の持てる内容で、オッズ込みだとこちらの方が魅力的か。

4着ショウナンハレルヤは東京芝2000mで不利な15番枠からの発走。直線では内からフアナに馬体を接してこじ開けられるような場面もあっての4着善戦。GⅠで即通用かどうかは置いておくとして、地力は示した。

極限の上がり勝負になったスイートピーS

最後にスイートピーS。昨年のカレンブーケドールが出るまでは長らくオークスの好走馬を輩出できず、トライアルとしての存在感が落ちていたレース。過去10年でスイートピーS組は本番【0-1-0-17】と苦戦している。したがって、本来ならこの組はそれほど強調できないのだが今年は勝ち馬の内容が秀逸。

ラップタイムが12.7-11.2-12.0-12.7-12.5-12.5-11.4-10.9-11.2と、いわゆる「ヨーイドン」の競馬。レース上がり3ハロンも33.5と速く、普通ならそうそう後方からは届かない。

1着デゼルはそんなレースを4角13番手からの差し切り。他馬も延びている分、見た目だけではそこまで豪快さが伝わらないが、東京芝1800mの世代限定戦で上がり32.5というタイムは歴代最速タイ(もう1頭はクロノジェネシス、アイビーS)。相手関係は強化されるが、超大物の可能性も秘めた馬。

4着クリスティは内枠を活かして絶好のポジションかと思われたが、なかなか進路が空かなかった。ただ、進路が空いてからも伸び負けていたのは少々物足りなかった。

前哨戦のまとめ

前哨戦回顧からの推奨馬はデアリングタクト、ウーマンズハート、ホウオウピースフル、デゼルの4頭。この中で1頭本命を決めるならホウオウピースフル。極悪馬場を走った桜花賞組にはダメージが残っていることも考えられるので、今年は3着内数で次点のフローラS組にチャンスが巡ってくると見た。

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