イメージとデータはかなり違う?東大HCが「少頭数」を徹底分析

東大ホースメンクラブ

少頭数レースの枠別インフォグラフィックⒸSPAIA

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寒さの残る時期はメンバーが揃わない重賞も

今週のコラムのテーマは「少頭数」。GⅠ馬5頭が出走する豪華メンバーのGⅡ・中山記念は9頭立て、その他にも今年は8頭立てだったきさらぎ賞、同じく9頭立ての共同通信杯、10頭立ての京都記念など、寒さの残るこの時期はメンバーが揃わない重賞がしばしば見られる。

頭数が少ない分難易度が下がると思いきや、オッズとの兼ね合いで買い目を絞る必要が生じ、ひと筋縄ではいかないレースも多い。少頭数のレースデータを調査し、見えてきた好走条件を探っていこう。なお、「少頭数」の定義は10頭立て以下とした(データ分析には2015年2月28日〜2020年2月23日のデータを使用した)。

意外にも中枠有利

まずは少頭数のレースでの枠別成績を見る。

少頭数のレース・過去5年の枠別成績ⒸSPAIA


少頭数ならば枠は関係なし、という先入観があるだろうが、実は中枠が有利。複勝率で比較すると最も成績の良い4枠(35.8%)と最も悪い7枠(31.4%)には4.4%もの開きがあり、さらに芝のレースに限るとこの差は5.6%にまで広がる。

少頭数に限らない過去5年のJRA全レースで同様にベスト・ワーストを比べると、6枠(21.6%)・3枠(20.8%)と差は1%にも満たない。少頭数での中枠有利は際立っており、頭に入れておきたいデータだ。

少頭数のレース・過去5年の脚質別成績ⒸSPAIA


次に脚質別成績。出走馬が少ない分全体的に率が向上することを加味しても逃げ・先行馬の有利は変わりない。4角3番手以内の複勝率は少頭数:47.8%、全レース:39.9%と1割程度の差がある。

少頭数では道中スローな流れになることが多い印象だ。一例として主場芝2000m戦の前後半5Fラップ平均を見てみると、

(東京・少頭数)62.3-59.6(東京・全体)62.0-59.4
(中山・少頭数)62.5-60.1(中山・全体)62.0-60.1
(阪神・少頭数)62.6-59.8(阪神・全体)61.9-60.0
(京都・少頭数)62.2-59.6(京都・全体)61.8-60.0

と想像通り4場全てで前半が緩いペースになっており、前で運ぶ馬には大きなアドバンテージだ。

しかし条件的に恵まれた少頭数のレースで好走した逃げ・先行馬は次走評価を下げるべきかというとそうでもない。少頭数で逃げ・先行し3着以内に好走した馬の次走成績は複勝率40.0%で、全体成績での複勝率39.8%とほぼ同じ数字。回収率も大差なく、極端に嫌う必要はなさそうだ。

切れ味自慢が台頭も次走は?

少頭数のレース過去5年の上がり3F順位別成績ⒸSPAIA


全体・過去5年の上がり3F順位別成績ⒸSPAIA


前述したとおり少頭数のレースでは逃げ・先行が有利だが、上がり3Fで上位のタイムをマークした馬が馬券になりやすいことも特徴。全体成績と比べれば複勝率でおよそ2割もの大差をつけている。馬群がごちゃつきにくくスムーズに差せること、先行馬との距離が近いことなどが理由として挙げられるだろう。このうち上がり3F最速の馬は16年以降のGⅢに限定すると【20-8-3-0】とパーフェクトだ。

先ほどの逃げ・先行馬と同様、上がり最速をマークして好走した馬の次走成績を調べると、15頭以上の多頭数では少頭数:34.0%、全体成績:36.7%と3%程度の差がついた。このデータ1点で消しとまではいかないが、若干評価を下げたいところだ。

少頭数のレース・過去5年の騎手別成績ⒸSPAIA


次に騎手別成績。全体成績と比べて複勝率を15%程度上乗せしている騎手をピックアップした。あらゆる騎手別成績に顔を出すルメール騎手はここでも例外なく活躍しており、特に2400m以上の長距離戦に限定すると複勝率は74.5%にまで向上する。

福永祐一騎手はルメール騎手との騎乗馬の質の差を考えれば互角以上の成績といっていい。4割以上の連対率は軸としての信頼性の証しだ。単勝回収率が100%を超えている田辺裕信・石橋脩両騎手も買いのジョッキー。田辺騎手は東京・中山の芝中距離に良績が集中し、石橋脩騎手は上がり3F3位以内に限定すると【23-16-15-6】複勝率90.0%と差しで狙える。1番人気での複勝率が83.1%とルメール騎手と肩を並べる好成績を記録し、人気馬を確実に上位へ導いている北村友一騎手も評価が高い。

2010年以降の少頭数で施行された重賞に限定すると、武豊騎手が最多の8勝を挙げるほか複勝率も53.8%の好成績をマークしている。前述の福永騎手はこれをさらに上回る複勝率63.3%、1600m〜2000mでのGⅡに限定すると75.0%と好成績だ。M.デムーロ騎手も2番人気以内で【2-4-2-4】複勝率66.7%。中山記念の騎乗に注目したい。

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