年内最後のGⅠ・ホープフルSは真のクラシックへの登竜門となるか

SPAIA編集部

競馬

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ホープフルSとは?

今年を締めくくるJRAラストGⅠホープフルS。昨年からGⅠへと格上げされた2歳の頂上決戦が行なわれるのは、クラシック1冠目の皐月賞と同じ舞台。前身とされるラジオNIKKEI杯2歳Sの勝ち馬にはアドマイヤベガ、ロジユニヴァース、ワンアンドオンリーなど後のダービー馬が名を連ね、クラシックへの登竜門として今年も熱戦が期待される。

ただ、こういったあおりを目にした時、違和感を覚える競馬ファンは多いのではないだろうか。

その昔、2歳牡馬が覇を競う唯一のJRA・GⅠとして朝日杯フューチュリティSを中心にすえた番組を整備するも、施行される条件は中山のマイル戦。

暮れの最終週に阪神で行なわれるラジオNIKKEI杯2歳ステークス(GⅢ)へと矛先を向ける素質馬が多くなると、朝日杯FSのGⅠとしての格は形骸化し、レベル低下が懸念されることとなる。

さらなる番組改編が断行されたのは2014年。ラジオNIKKEI杯2歳Sを同じ週に中山で行なわれていたオープン特別、ホープフルSと統合し、先のGⅠ昇格を示唆しつつGⅡとして一気に賞金を増額。

阪神から中山開催へと移行しても、レース名はそのままだが、輝かしい歴史だけはラジオNIKKEI杯2歳Sから引き継ぐ形となった。交換する形で朝日杯FSは阪神での開催と改め、3歳となってマイルGⅠを目指すか、クラシック路線を歩むかの住み分けを2歳時から明確にさせるという名目で、2つのGⅠを置く意義が生じることにも期待された。

ホープフルSは2歳馬にとって酷なコース

2016年優勝のレイデオロがダービー馬となったことで、一応の成功を見せたかとも思われた荒療治の改革だが、GⅠ昇格初年度の勝ち馬タイムフライヤーをはじめ、2014年シャイニングレイ、2015年ハートレーのその後の成績、他の出走メンバーの顔触れを見渡しても、胸を張ってGⅠと呼べるレベルには達していないというのが現状であろう。

なぜ素質馬が出走を敬遠するのか。まず挙げられる要因は中山での開催ということ。内回りでコーナーがきつい上に起伏が激しいし、短い直線に急坂の待ち受けるコース設定。まして開催が進んで馬場が荒れていることも懸念され、成長途上の2歳馬にとっては過酷な条件である。

さらに有馬記念前にも語り尽くされたように、枠順、展開に結果が大きく左右されるコースで、クラシックに出走するためには賞金加算が至上命題の2歳馬が勝ち星を計算するには難しくては、素質馬が取りこぼしのリスクを負いかねるレースは見合わせるのも無理はあるまい。

ダービー目標の馬には意味のないレース?

「全てのサラブレッドはダービーを目指して」

競馬の形、携わる関係者の意識が様々に変化しようとも、その根底に生き続けるこの言葉を忘れてはならない。

かつて〝マツクニローテ〟と呼ばれた先進的な取り組みがあった。松田国英厩舎が取ったこのローテーションは、クロフネ、タニノギムレットを経て、キングカメハメハで結実した、NHKマイルCから日本ダービーを目指すというものである。

当時から賛否両論の物議をかもしたが、ダービーを最高の状態で迎えるためにはどうあるべきかを考えてとられた策であったことは確かだろう。

皐月賞の結果はどうであれ、もはやそこをスキップしてでもダービーを狙いにいく。それほど関係者の間で、皐月賞とダービーに対する温度差がある中、その皐月賞に直結させようと試みる2歳GⅠを勝つことに大義は見いだせない。

馬場整備の技術が飛躍的に向上し、中山出走のリスクが軽減された近年。このレースがGⅠに昇格した時の初代覇者が松田国英厩舎のタイムフライヤーであったことは皮肉とも思えるが、一線級の素質馬が集まりつつあることも事実である。

ただし、レイデオロにおいても、ホープフルSを勝った後に一頓挫あり、皐月賞参戦をステップにしてダービー制覇を成し遂げた過程がある。2歳頂上決戦のGⅠとしてではなく、来年のダービー出走へ向けて賞金を加算する上でのステップレースとして、レベルアップが図られる可能性は十分にある。

あくまで賞金加算をするレース?

まだ過渡期にあるレースがホープフルSの現状であり、阪神で行なわれていた頃の傾向を分析しても結果に直結させることは難しい。さらに2010年代に入ると、2歳戦や春の3歳戦の番組が充実し中、長距離を勝って早々に賞金を加算した馬たちは、余裕をもってダービーを目指すローテーションを選択することが多くなった。

よって、無敗馬同士が大舞台で初めてあいまみえる興味を作り出すも、個々のレースの空洞化は避けられない。

そうした中で行なわれるのは、いわば勝ち抜け戦。そもそもホープフルSはオープン特別だった頃から、ウイニングチケットやエアシャカールといったクラシックホースを輩出してきた由緒あるレースでもある。 賞金を加算するには、当時は勝つことが必然だったが、2着まで賞金が加算される重賞となったのなら、打ってつけのレースとなったともいえよう。

現況での傾向からはそのコース設定も踏まえて、ある程度の経験を重ねていたり、機動力に勝る早熟傾向の馬を狙うべきであろうが、そろそろキャリアの浅い大物が出現する頃かもしれない。少なくとも関係者の間にその空気は生まれつつあり、これから数年の優勝馬の活躍によっては、歴史の浅いGⅠは真にホープフルなものとなるのかもしれない。

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