【有馬記念】三冠馬オルフェーヴルが上がり33.3の豪脚でグランプリ初制覇 暮れの大一番を「記録で振り返る」

緒方きしん

有馬記念、思い出の記録,ⒸSPAIA

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勝利数トップに並んだ武豊騎手

今週は暮れの大一番、有馬記念が開催される。国民的なイベントとして、競馬ファン以外からも注目を集める一戦だ。

古くはシンザンやテンポイント、シンボリルドルフといった名馬が勝利。平成以降もトウカイテイオーをはじめグラスワンダー、ディープインパクト、オルフェーヴルといった大物たちが勝利してきた。今年は昨年の覇者ドウデュースが参戦。大注目の一戦となる。

今回は、そんな有馬記念の記録を振り返る。なお、データは1986年以降のものを使用する。

騎手の勝ち数を見ると、一昨年時点では池添謙一騎手が4勝で単独首位だった。2009年にドリームジャーニーで初勝利をあげると、全弟のオルフェーヴルでも2011年、2013年と2勝。さらに2018年にはブラストワンピースで4勝目を掴んでいる。

しかし昨年、武豊騎手がドウデュースと勝利したことでトップの池添騎手に並んだ。

武豊騎手はこれまで1990年のオグリキャップ、2006年のディープインパクト、2017年のキタサンブラックで勝利。なかでも、ディープインパクトは単勝1.2倍、キタサンブラックは単勝1.9倍と1倍台の支持に応える勝利だった。また、ディープインパクトの単勝1.2倍は、1994年のナリタブライアンと並ぶ有馬記念における単勝の最低配当記録でもある。

最多勝の調教師は4勝の池江泰寿師。前記したドリームジャーニーとオルフェーヴルで計3勝をあげたほか、2016年にサトノダイヤモンドで4勝目を記録している。

2位タイとなる3勝は、大久保正陽調教師と藤沢和雄調教師の2名。大久保正師はメジロパーマー、ナリタブライアン、シルクジャスティスと90年代に勝ち星をあげ、藤沢師はシンボリクリスエスの連覇とゼンノロブロイでの勝利だった。藤沢師の3勝は2002〜2004年の3連勝でもあり、鞍上はいずれもO.ペリエ騎手である。

優勝馬の最速上がりはオルフェーヴルの33.3

昨年はドウデュースが上がり3Fタイム34.3で勝利。これは1986年以降の勝ち馬で5番目に速いタイムだった。

同期間内で優勝馬の上がり3Fランキングを出してみると、以下のようになる。

▼ 有馬記念・優勝馬の上がり3F
1位 33.3秒 オルフェーヴル(2011年)
2位 33.8秒 ディープインパクト(2006年)
3位 33.9秒 マンハッタンカフェ(2001年)
4位 34.1秒 ジェンティルドンナ(2014年)
※1986年以降

ジェンティルドンナとディープインパクトはどちらもラストラン。2014年はスロー決着で、ジェンティルドンナの上がり34.1はレース内で見れば特に上位ではなく、上がり最速は4着ジャスタウェイの33.4だった。

それでも、ジェンティルドンナは道中3番手からの競馬。ハナを切ったヴィルシーナが14着、2番手だったエピファネイアが5着に敗れるなか、先行して押し切った実力はさすがと言える。

一方のディープインパクトは上がり最速で、同2位のスウィフトカレントは34.4だからメンバー中断トツの数字だ。スウィフトカレントが12着、上がり3位34.5を使ったスイープトウショウも10着だったなか、後方から異次元の末脚で突き抜けて2着に3馬身差というレースぶりは、まさに伝説の最終章にふさわしい走りだった。

3位のマンハッタンカフェと1位のオルフェーヴルはどちらも3歳での勝利。マンハッタンカフェの2001年といえば、前年の競馬界を盛り上げたテイエムオペラオーとメイショウドトウのラストランでもある。また、同年はアメリカ同時多発テロ事件が発生した年で、2着に食い込んだ最低人気アメリカンボスとあわせて“世相馬券”が話題となった。

1位のオルフェーヴルは三冠達成後の挑戦で、初の古馬相手の戦いでも抜群の走りを披露。ここで引退する名牝ブエナビスタが7着に沈むなか、世代交代を印象付ける圧倒的な走りを見せた。

上がり最速こそ33.2のルーラーシップ(4着)に譲ったが、2着エイシンフラッシュに3/4馬身差をつける快勝。オルフェーヴルは2年後の有馬記念でも2着に8馬身差をつける完勝劇を見せつけ、引退レースを飾っている。

その2013年、2着につけた差は1.3秒。これは1986年以降で2番目のタイム差となる。

▼ 有馬記念・2着につけたタイム差
1位 1.5秒 シンボリクリスエス(2003年)
2位 1.3秒 オルフェーヴル(2013年)
3位 0.8秒 リスグラシュー(2019年)
4位 0.5秒 ナリタブライアン(1994年)
4位 0.5秒 ディープインパクト(2006年)
※1986年以降

シンボリクリスエスは3歳のリンカーンとゼンノロブロイに圧倒的な力を見せつける勝利。前年同様に、天皇賞(秋)1着→ジャパンカップ3着→有馬記念1着という戦績で秋を走り切り、2年連続の年度代表馬に輝いたのであった。

今年はドウデュースが圧倒的な走りで連覇を達成するのか、それとも世代交代となるのか──。豪華メンバーが集った大一番から目が離せない。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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