【エリザベス女王杯】最低20番人気で勝利のサンドピアリス、最重量で連覇ラッキーライラック 秋の女王決定戦の「記録」を振り返る
緒方きしん
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名実況も多いエリザベス女王杯
今週はエリザベス女王杯が開催される。過去にはメジロラモーヌやメジロドーベル、ヒシアマゾンやアドマイヤグルーヴといった名牝が勝利を挙げている。大波乱が起こることも多い一戦で、これまで数々の驚くべきレースが繰り広げられてきた。
今回は3歳限定戦時代(1995年まで)も含めたエリザベス女王杯の記録を振り返る。データは1986年以降のものを使う。
二桁人気の勝利も5回あるように、大穴の勝利も多いレース。勝ち馬の単勝高配当ランキングでは、5位がホクトベガ(9番人気30.4倍)、4位がアカイイト(10番人気64.9倍)、3位がクィーンスプマンテ(11番人気77.1倍)、2位がタケノベルベット(17番人気91.3倍)、1位がサンドピアリス(20番人気430.6倍)となる。
1993年の勝ち馬ホクトベガは、勝利の際の「ベガはベガでもホクトベガ」という実況で有名だ。この時の2番人気3着のベガはアドマイヤベガ、アドマイヤボス、アドマイヤドンの母、ハープスターの祖母として名を残したが、ホクトベガは1997年にドバイの地でこの世を去っている。
2021年の勝ち馬アカイイトは、デビューから4勝をあげていたが、重賞では2度の7着があるのみで好走実績はなかった。当レースで新コンビとなった幸英明騎手の好判断もあり、直線で見事な末脚を発揮して2馬身差の快勝を見せた。
3位のクィーンスプマンテは2009年の勝ち馬。エリザベス女王杯が古馬戦になった1996年以降では最高の単勝オッズでの勝利だ。2009年は3歳の二冠牝馬ブエナビスタが単勝1.6倍の圧倒的人気を集めていた。
スタートすると11番人気のクィーンスプマンテと12番人気のテイエムプリキュアが2頭で大逃げ。2頭の上がりは36.8、36.9。ブエナビスタは32.9と、猛然と追い込んだがとらえきれず、大逃げした2頭のワンツーで決着した。馬連配当は1020.3倍の10万馬券となった。
2位の1992年勝ち馬タケノベルベットはエルカーサリバー、メジロカンムリ、ファンタジースズカ、サンエイサンキューの4頭が人気を集めた一戦で、上がり最速で勝ち切った。2着のメジロカンムリにつけた差は3馬身半。タケノベルベットは続く鳴尾記念でも牡馬相手に上がり最速タイで勝利をあげ、その強さを証明した。
「二度あることはサンドピアリス」の横断幕でも有名なサンドピアリスは、1989年の勝ち馬。父は伝説的なアイドルホース、ハイセイコーだ。ダートで3連敗中だったサンドピアリスはエリザベス女王杯に挑戦するも、20番人気という出走馬最低人気だった。
鞍上は、デビュー2年目で重賞未勝利の岸滋彦騎手。道中、後方で脚を溜めると、先行勢のトラブルもあり外から猛然と追い込んだ。予想外の追い込みに実況が発した「しかしびっくりだ! これはゼッケン番号6番、サンドピアリスに間違いない!」の叫びとともに1着でゴールした。
その後、サンドピアリスは京都大賞典で5番人気3着、京都記念で9番人気2着と実力を見せ続けた。
最重量での勝利はラッキーライラック
サンドピアリスは馬体重414kgでの勝利。これは1986年以降の優勝馬では最軽量だ。逆に最重量は4位サクラキャンドルの510kg、3位アカイイトの514kg、1、2位はどちらもラッキーライラックで、馬体重は2019年518kg、2020年522kgである。
馬体重の増減でいえば、馬体重を減らした勝ち馬は12頭、増減なしでの勝ち馬は13頭、馬体重増で勝利した馬は10頭となっている。馬体重増といっても2kg増が5頭、4、6kg増が2頭ずつと大幅増の馬も少なく、馬体を絞っている馬の方が上位に進出する傾向にある。
一方、6kg以上の馬体重減で勝利した馬は7頭。1988年の勝ち馬ミヤマポピーは14kg減、2015年の勝ち馬マリアライトは10kg減で勝利している。連覇したメジロドーベル、ラッキーライラックの2頭はどちらの年も馬体重を減らしての出走だった。
この秋GⅠ戦線で絶好調のC.ルメール騎手、武豊騎手はそれぞれ当レースで3勝、4勝をあげている。これは同レースの勝利数では2位、1位。今年でルメール騎手が並ぶのか、武豊騎手が差をつけるのか、それとも他の騎手が勝利を挙げるのか。今年のエリザベス女王杯の行方を見守りたい。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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