【菊花賞】ダノンデサイルに立ちはだかる「3つのジンクス」 クリフジ以来の「81年ぶりV」の記録に挑む

逆瀬川龍之介

ダノンデサイルの2冠に立ちふさがる3つの壁,ⒸSPAIA

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ダノンデサイルに立ちはだかる「3つのジンクス」

先週の秋華賞は1番人気のチェルヴィニアが制し、堅い決着になったが、菊花賞はどうなるだろうか。皐月賞馬のジャスティンミラノが不在とあって、ダービー馬のダノンデサイルが主役と目されている。確かにメンバー中唯一のGⅠ馬なので、実績では一枚上。しかし、休み明けでの参戦となることに加え、全馬に言えることでもあるが3000mは初めて。絶対視は危険ではないだろうか。

そうでなくても、ダノンデサイルには多くのジンクスが立ちはだかる。これまでに牡馬三冠を達成した馬はディープインパクト、オルフェーヴルなど8頭。これは多くのファンが知るところだろう。

では、牡馬二冠を達成した馬はどうか。「皐月賞&ダービー」はトウカイテイオーやドゥラメンテなど16頭、「皐月賞&菊花賞」はキタノカチドキやゴールドシップなど8頭いる。しかし、「ダービー&菊花賞」は43年のクリフジ、73年のタケホープのわずか2頭。〝どうしてダービー&菊花賞の二冠は難易度が高いのか〟という問いに明確な答えは見つけられないが、少なくともダノンデサイルにとって気になる数字ではある。

もう一つ、紹介したいデータがある。過去84回の菊花賞のうち、皐月賞馬が不出走、かつダービー馬が出走していたのは14回。その成績が実に興味深い。

<皐月賞馬不出走時の菊花賞 ダービー馬の成績>
43年 1着 クリフジ 1番人気
55年 2着 オートキツ 1番人気
58年 9着 ダイゴホマレ 3番人気
59年 6着 コマツヒカリ 3番人気
69年 15着 ダイシンボルガード 4番人気
77年 15着 ラッキールーラ 1番人気
78年 5着 サクラショウリ 1番人気
80年 10着 オペックホース 7番人気
86年 2着 ダイナガリバー 5番人気
89年 10着 ウィナーズサークル 2番人気
95年 6着 タヤスツヨシ 5番人気
96年 3着 フサイチコンコルド 2番人気
01年 4着 ジャングルポケット 1番人気
14年 9着 ワンアンドオンリー 1番人気

そうそうたるメンバーが牡馬二冠を目指して出走しながら、勝ったのは43年のクリフジの1頭のみ。クリフジは通算成績11戦11勝。牝馬として史上2頭目のダービー馬となった名牝中の名牝である。戦前と現在では競走体系が大きく異なる上、オークスを制していることから「変則三冠馬」でもある。参考外といっていいだろう。

戦後に限ると13頭で未勝利。1番人気の5頭を含め、9頭が3番人気以内の支持を受けながら、【0-2-1-10】だから物足りない。ちなみに人気を上回る着順だったのは86年のダイナガリバー(5番人気→2着)の1頭だけとなっている。

そして最後にもう一つ、逆風データを挙げておこう。ダノンデサイルはダービー以来の実戦となるが、春からの休み明けで菊花賞を勝てば、87年のサクラスターオー(前走・皐月賞1着)以来の偉業となる。昨年は同じくダービー馬のタスティエーラが2着に敗れているので、やはり簡単ではない。

果たしてダノンデサイルは数々のジンクスを克服し、51年ぶりとなるダービー&菊花賞の二冠を達成できるのか。個人的にはデータに従い、他の馬から本命を探すつもり。いずれにしてもダノンデサイルの取捨が馬券のカギを握ることは間違いなさそうだ。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。


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