【秋華賞】オークス1着チェルヴィニアと2着ステレンボッシュが断然優位 トライアル組は器用さ武器のミアネーロに注目
勝木淳
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牝馬三冠、関東馬独占はあるか
秋華賞が創設されたのは1996年。勝ったのは長浜博之厩舎(栗東)のファビラスラフィン。第2回を美浦のメジロドーベル(大久保洋吉厩舎)が勝ち、1勝1敗。だが、ここから関西馬が10連勝し、通算は美浦5勝、栗東23勝と地元勢が圧倒している。
馬の成長を待つスタイルが主流の美浦に対し、栗東は早期に仕上げ、3歳で結果を残せるよう作り込む形を目指す厩舎が多い。牡牝の3歳三冠路線は単純な馬質の差というより、東西の馬づくりに対するイデオロギーの違いも下地にある。
今年、桜花賞はステレンボッシュ、オークスをチェルヴィニアが勝ち、牝馬三冠戦線は関東馬が独占中だ。関東馬の5勝のうち、2勝は三冠牝馬によるもの。残り3つは桜花賞かオークス、またはどちらも関西馬が獲った。つまり、異なる関東馬がわけ合ったことはない。関西馬が一矢報いるのか。それとも関東馬が牝馬三冠を独占するのか。ステレンボッシュ、チェルヴィニアが二冠馬となるのか。
昨年、牡馬クラシックを関東馬が独占したのは記憶に新しい。今年、牝馬三冠を関東馬が総どりとなれば、馬の成長を促す美浦のスタイルも大きな前進を遂げるだろう。無事に強くなりながら、競馬で勝利する。根っこは東西関係なく、ホースマン共通のテーマだ。データは過去10年分を使用する(21、22年阪神開催を含む)。
2000年代前半、秋華賞は波乱のGⅠだった。夏の上がり馬が勢いで春の実績馬を凌駕したり、内回りを意識したハイペースで漁夫の利を得る追い込みが決まるなど、非常に難解な結末が多かった。しかし、近年は違う。1番人気【4-1-1-4】勝率40.0%、複勝率60.0%を筆頭に4番人気以内が全勝。波乱は過去の話になってしまった。
複勝率をみても、5番人気【0-2-1-7】複勝率30.0%までで、伏兵が突っ込む確率はかなり低い。もちろん、ゼロはあり得ないので、穴党は懸命に人気薄から激走馬を探すべきだが、無理をして穴を狙うのは得策とはいえない。
主流は直行ローテ
春二冠をわけあったステレンボッシュ、チェルヴィニアはそろってオークスから直行でここに挑む。今夏は昨年に続き猛烈な暑さに悩まされた。その昨年は1、3着が直行ローテで、2着マスクトディーヴァはローズS勝ち馬だが、2走前は6月で夏を休養に充てていた。今年もこういった夏を避けた馬たちが優勢になるのではないか。
前走GⅠ【5-1-2-16】勝率20.8%、複勝率33.3%はすべてオークス。着順ベースでは3着以内【5-1-2-3】、5着以下【0-0-0-13】と当然、実績馬の直行が圧倒的だ。1着チェルヴィニア、2着ステレンボッシュは揺るがない。この10年、前走オークス1着で秋華賞を制したのは3頭。すべて牝馬三冠を獲得した。オークスだけを勝った馬はユーバーレーベンが13着だった。残りは三冠をかけて敗れた3着スターズオンアースだ。桜花賞を勝ち、オークスを落とし、秋華賞で二冠を獲得した馬はいない。
秋華賞創設時まで範囲を広げると、1998年ファレノプシス、2001年テイエムオーシャンの2頭。どちらも三冠1、3、1着だった。春2戦1、2着のステレンボッシュは二冠奪取の可能性がある。ちなみに桜花賞、秋華賞二冠といえば、ダイワスカーレットもいるが、同馬はオークスに出走していない。
一方、トライアルを経由した馬の傾向をみると、紫苑S(GⅢ昇格以降)【3-4-0-32】勝率7.7%、複勝率17.9%、ローズS【1-4-6-48】勝率1.7%、複勝率18.6%と勝ち馬に注目すれば、最近は関東の紫苑Sが優勢だ。トライアルではないが、間隔がとれるクイーンSは【0-0-0-5】。古馬相手に重賞善戦は持ち上げられやすい戦歴ではあるが、好走馬は出していない。単純に夏の重賞でメンバーレベルがそれほど高くないという点と、札幌とはいえ、やはり夏場に調教とレースを経験したことがプラスに働かないのではないか。
紫苑S組(GⅢ昇格以降)は1着【2-1-0-4】勝率28.6%、複勝率42.9%に注目。今年はクリスマスパレードだ。好走馬となると、5着以内【3-4-0-21】。掲示板を外すと【0-0-0-11】。2着ミアネーロ、3着ボンドガールはいいが、6着ホーエリートは厳しい立場にある。
今年の紫苑Sは中山開幕週の超高速馬場で1:56.6のレコードを記録した。前後半1000m58.8-57.8でラップ構成としてはスローに近い。番手から抜けたクリスマスパレードと差したミアネーロ、ボンドガールの差はない。なかでも2着ミアネーロは器用な立ち回りを武器としており、内回りに強い。最後の600m11.6-11.4-11.0の加速ラップも評価ポイントだが、これも馬場と風の影響を差し引いて考えるべきだろう。なんでも強調しやすい材料を扱うときには注意が必要だ。
クイーンズウォークが勝ったローズSも着順の内訳を。全体的に数字があがっていないローテだけに、取り扱いには気をつけたい。1着馬は【0-2-2-5】複勝率44.4%と未勝利だが、そもそもローズS組は10年で1勝止まり。2着【1-0-1-6】勝率12.5%、複勝率25.0%と比べても、差はあまり感じない。ローズS1着馬は未勝利。という読み方をし、クイーンズウォークを軽視しすぎるのは危険だろう。ステレンボッシュ、チェルヴィニアに重い印を打つと、配当を考慮し、クイーンズウォークの印を下げたくなるが、ちょっと我慢してほしい。春二冠8、4着の実績馬であり、関西馬の筆頭格だ。
3着セキトバイーストはチューリップ賞2着好走も、逃げなかった桜花賞では7着敗退。すっかり評価を落としたローズSは11番人気で逃げて3着と反転した。本番でほどよく人気を落としているようなら、またもノーマークの逃げがある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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