【エルムS】好走には「4角前目」が必須条件 京大競馬研の本命は地力の高さNo.1のドゥラエレーデ

京都大学競馬研究会

エルムSの4角5番手以内馬の成績(札幌開催の直近10回),ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

4角前目が好走条件

8月4日(日)にエルムS(GⅢ)が行われる。昨年は6番人気セキフウが大外から鮮やかに差し切って勝利するなど近年荒れやすい印象がある。今年も例年通りこのレースから秋の大舞台に羽ばたこうとする実力馬が多く集まり、横の比較がかなり難しい。大混戦模様の難解な一戦となった。

以下では、本レースが行われる札幌ダート1700mのコース形態とそれに起因するレース質、そして想定される展開を踏まえ予想する。

まず札幌ダート1700mのコース形態を見る。正面スタンド前右側からスタートし、初角までの距離は約240m。そこからぐるりとコースを一周する。コース全体として高低差がほとんどなく、コーナーは緩やかで大回りとなっている。最後の直線は約264mというのが今回のコースレイアウトだ。

まず注目すべきは初角までの距離が約240mとかなり短い点だ。スタート後すぐに最初のコーナーに入るコースはそこで先手争いが収まるため、基本的に序盤のペースは落ち着きやすい。しかし札幌は話が違う。各コーナーが緩やかで大回りとなっているため、コーナーに入った後も外からの押し上げが効き、序盤、中盤の先手争いは長引きやすい。コーナーでペースが緩みにくいことに加えて、起伏もほとんどないため、コース形態によってペースが緩む地点がない。序盤の熾烈な先手争いからペースが緩まない、というとハイペースで先行負荷が高い差し有利のレース質に思われるが、最終直線もかなり短いため持続力のある先行馬は残ることができ、完全な差し決着にもなりにくいというのがポイントだ。

本レースの馬券を組む上では、この“脱落戦”における先行馬の残り目と差し馬の台頭の塩梅が最も重要だ。そこについては展開予想と先行馬の構成から後述する。ただ先行馬、差し馬どちらも好走するための鉄則は変わらず、「4角で前目の位置にいること」である。先行馬に関しては終盤に脚色が鈍っても残るだけの十分なリードがあること、差し馬は短い直線でも届く中団前目の位置を終始追走する、もしくは道中マクって4角で押し上げていることが必須である。先行負荷が大きいからと言って、最後方付近から大外を回して差す競馬ではまず馬券内まで届かない。

エルムS、4角5番手以内で通過した馬の成績,ⒸSPAIA


この傾向は数字からも明らかだ。札幌競馬場で行われたエルムSの直近10回で4角5番手以内の馬の成績は【9-10-7-36】勝率14.5%、連対率30.6%、複勝率41.9%、単勝回収率131%、複勝回収率132%と非常に優秀だ。直近10回で勝ち馬9頭、馬券内となった30頭中26頭が4角5番手以内。やはり4角で前目の位置まで押し上げていることが必須条件だと言える。

序盤、中盤の負荷が大きい脱落戦を残れる地力の高い先行馬、中団好位を追走できる、または道中マクっていける差し馬が恵まれやすいのがこのコースが持つレース質だ。この点を重視して思い印を打っていきたい。

続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位(海外レースを除く)に3番手以内のある先行馬が6頭と、出走馬全14頭に対して多い。この他にも先行意識の高い馬が数頭いる上に、前述の6頭中5頭は徹底先行。テーオードレフォン、プロミストウォリア、ミトノオーが絶対にハナまで取り切りたいタイプで、先行争いは間違いなく激化する。この3頭を中心に馬群はかなり引っ張られ、縦長の隊列になることが想定される。

この展開で最も恵まれるのは、序盤で前が先手争いをしているところに無理に参加せず、少し控えて中団好位を追走できる地力の高い先行馬だ。その次に道中マクって位置を押し上げられる追走力の高い差し馬が恵まれると考える。またこの展開では騎手の仕掛けどころが重要であるため、鞍上にも注意して印を打っていく。

格が違う地力の高さ

◎ドゥラエレーデ
前走ドバイワールドCは逃げた勝ち馬以外は差し馬が上位を占める中、3番手で積極的に先行して5着。展開不利の中でも高い地力で掲示板を確保した。本馬とタイム差なしの4着だったウィルソンテソーロが次走帝王賞2着ときっちり巻き返しており、やはり世界最高峰のレベルの高いレースだった。2走前フェブラリーSは前半1000m通過57.9秒という類を見ない程の超ハイペースを4番手で積極的に先行したことが敗因で、完全に度外視可能だ。その前はチャンピオンズC、東京大賞典と2走連続ダートGⅠ最上位馬に対して僅差の3着に好走した。今回のメンバーでは一頭だけ格が違う地力を誇る。

これに加えて、序盤の先手争いに無理に参加せず少し控えて中団好位を追走できる脚質でもあり、今回の展開で最も恵まれると考える。鞍上も札幌ダート1700mを得意とする武豊騎手だ。実力を発揮できれば勝ち負けは必至と見て本命を打つ。

◯サヴァ
前走大沼Sは差し有利な展開が向いたとはいえ、4角6番手からスムーズな追い出しで抜け出し、最後まで脚色が衰えず上がり3位の脚で差し切り勝ち。次走マリーンSを勝って今回も人気が想定されるナチュラルハイより1kg重い斤量を背負いながらの勝利。今回はナチュラルハイと同斤量ながら人気薄想定となる。中団から堅実な末脚を使えるのが強みで、前走から一変したスタートで中団好位を追走し持ち前の瞬発力を発揮できれば好走可能。オッズ妙味も加味して2番手評価する。

▲ミトノオー
今回のメンバーではドゥラエレーデに次ぐ実績馬。前走平安Sはハイペースで差し有利の展開の中、一度も先頭を譲らず勝利。ハピやミッキーヌチバナ、ハギノアレグリアスといった実力馬を完封した。2走前のマーチSは1000m通過60.9秒というハイペースを逃げ粘って0.1秒差2着と地力の高さを見せた。近2走で見せたハイペース戦における持続力は強みで、200mの距離短縮で前目から粘り込めると考えて3番手評価とする。

△ペイシャエス
前走マーチSは前記の通りハイペース。2番手から0.6秒差3着と高評価できる内容だった。2着のミトノオーとは0.5kgの斤量差もあった。2走前ポルックスSでは斤量60kgを背負いながら、今回上位人気が想定されるナチュラルハイ(当時斤量56kg)に先着している。その斤量差が今回は1kgとなるものの人気がなさそうで、高いオッズ妙味が期待できる。距離短縮を生かした粘り込みに期待する。

×フルム
今回のメンバーでも上位の瞬発力を持つ一頭。前走大沼Sは内で詰まってしまい持ち味を生かせず5着。東京実績がある馬で差しが決まりにくい函館から札幌に替わるのはプラスだ。

×ナチュラルハイ
前走マリーンSは内で前が壁になり追い出しが遅れるロスがありながらも、キレイに馬群を捌いて差し切り勝ち。しかし相手関係の割にやや過大評価されていると見て6番手評価とする。

×ユティタム
前走アハルテケSは超差し有利な展開を4番手追走。0.9秒差10着に敗れたが評価を下げる内容ではなかった。2走前の内容だけ走れば好走できる。

買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△×馬連6点、◎-◯▲△-◯▲△×3連複12点で勝負する。(花田)

▽エルムS予想▽
◎ドゥラエレーデ
◯サヴァ
▲ミトノオー
△ペイシャエス
×フルム
×ナチュラルハイ
×ユティタム

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。


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