【エルムS】斤量を背負った実力馬は複勝率40% 注目血統フジキセキ持ちのプロミストウォリアに妙味あり

坂上明大

2024年エルムテークスの有力血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

札幌競馬場で行われる唯一のダート重賞・エルムS。直線距離は264mと短いものの、コーナーの半径が大きいためマクリが決まりやすく、立ち回り次第ではどの馬でも能力を発揮しやすいコース条件といえるでしょう。本記事では血統面を中心に、エルムSのレース傾向を整理していきます。

最初に紹介したいデータは斤量別成績。前述の通り、後方勢も立ち回り次第では能力を発揮しやすいのが札幌ダ1700mの大きな特徴。さらにエルムSは別定戦のため、ハンデ戦ほど能力面を均されることもありません。もともとJRAのダート重賞は数が少ないため、地力上位馬の好走率が高いことで有名ですが、エルムSも例に漏れず実績馬が好走しやすいレースといえるでしょう。

ちなみに、一昨年までは56kg(牝馬:54kg)が古馬の負担重量に設定されていましたが、昨年からは57kg(牝馬:55kg)に変わっているため、斤量58kg以上(牝馬:56kg以上)の馬が実績上位の注目馬といえそうです。

エルムテークスの斤量別成績,ⒸSPAIA


<斤量別成績(過去10年)>
基本重量-1kg【8-6-4-76】勝率8.5%/連対率14.9%/複勝率19.1%/単回率89%/複回率54%
基本重量±0kg【1-3-3-23】勝率3.3%/連対率13.3%/複勝率23.3%/単回率40%/複回率93%
基本重量+1kg【1-1-3-7】勝率8.3%/連対率16.7%/複勝率41.7%/単回率43%/複回率200%

「地力上位馬が走りやすい」という傾向は最重要ステップレースであるマリーンSの着順別成績からも明白です。マリーンSはハンデ戦のため斤量変化には要注意ですが、マリーンS上位馬は今年も軽視できないでしょう。


マリーンSの着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<前走マリーンSの着順別成績(過去10年)>
1着【3-1-0-4】勝率37.5%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回率365%/複回率126%
2着【2-2-0-3】勝率28.6%/連対率57.1%/複勝率57.1%/単回率145%/複回率154%
3着【2-0-0-4】勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率33.3%/単回率273%/複回率86%
4着以下【0-0-2-24】勝率0%/連対率0%/複勝率7.7%/単回率0%/複回率28%

血統面ではDeputy Ministerに注目。前述の通り、地力上位馬が走りやすいレースのため血統面からの適性評価の重要度は高くありませんが、それでもダート中距離の主流血統であるDeputy Ministerの血を持った馬の活躍が目立ちます。同血脈とともに数多くのダートGⅠ馬を出すフジキセキの血を持つ馬も複数好走しており、ダート中距離の主流血脈を持った実績馬を狙うのが理想形といえるでしょう。


血統別成績(21年函館開催を除く直近9回),ⒸSPAIA


<血統別成績(21年函館開催を除く直近9回)>
Deputy Minister【3-2-3-17】勝率12.0%/連対率20.0%/複勝率32.0%/単回率183%/複回率107%
フジキセキ【1-0-2-7】勝率10.0%/連対率10.0%/複勝率30.0%/単回率122%/複回率64%

血統解説

・ドゥラエレーデ
母母マルペンサは亜GⅠ・3勝の名牝で、繁殖牝馬としても数少ない産駒からサトノダイヤモンド(2016年菊花賞、有馬記念)やリナーテ(2019年京王杯SC2着)などを輩出。本馬の母マルケッサはリナーテの3/4同血の妹で、ドゥラメンテ産駒の本馬は母父オルフェーヴルが主張した手先の強いマルチランナーに出ています。

豊富なスタミナと先行力が持ち味で距離はもっとあってもよさそうですが、斤量57kgとはいえ地力上位は明白。仕上がりさえ良ければ勝ち負け濃厚の一頭でしょう。

・ナチュラルハイ
スクリーンヒーロー×Pulpit×Alhaarthという軽い血統構成で、芝の新馬戦を制していることからもダートでは軽い馬場向き。稍重~不良馬場で3勝を挙げており、今回も馬場状態がカギとなりそうです。前走はマリーンSを勝利していますが、直近2年は前走ダート重賞組が3頭ずつしかいなかったのに対して、今年は7頭もいるハイレベルな顔ぶれ(サーマルソアリングは除外対象)。連勝のハードルはなかなか高そうです。

・プロミストウォリア
母プロミストスパークは芝とダートで5勝を挙げたフジキセキ産駒で、本馬はマジェスティックウォリアー産駒の大型馬。父の産駒らしいストライド走法で、コーナー角の緩い札幌のダートコースはピッタリの舞台です。斤量58kgも実績馬の証。1年以上のブランクがどうかですが、シルクレーシングの馬であれば緒戦から態勢を整えてくる可能性は決して低くはありません。長期休養明けが嫌われるようなら馬券妙味は十分です。


エルムテークスの有力馬と血統、評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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