【2歳馬ジャッジ】マジックサンズとジョバンニはロスがありながらも好内容で勝利 重賞戦線での活躍に期待
山崎エリカ
ⒸSPAIA
7月1週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は同日の函館芝中距離で古馬含めて最速の上がり3Fタイムを記録したマジックサンズ、前評判の高かった2頭を撃破したジョバンニなどが出た、7月6、7日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
7月6日(土) 福島5R 優勝馬 マーズオデッセイ 指数-2 評価B
7番枠から好スタートを決め楽に2番手を確保。このレースは5F通過64秒4のスローペース。ほぼ理想的なポジションで進めることができた。3角で先頭のクレプスクルムとの差を詰め、3~4角の中間地点で逃げ馬に並びかけ、直線序盤で先頭。同馬がしぶとく抵抗したが1馬身差で勝利した。
マーズオデッセイはスローペースでも折り合いがついており、とても優等生なレースぶりだった。同日同距離の2歳未勝利戦と比較するとペースが遅く、当然ながら走破タイムも遅かった。ならば上がり3Fタイムは上回って欲しかった。ラスト2Fも11秒6-11秒9でそこまで評価はできない。勝ったり負けたりしながら上昇していきそうだ。
7月7日(日) 福島5R 優勝馬 ジェットマグナム 指数-5 評価A
2番枠からまずまずのスタートで先行したが、外の馬たちのほうが行きっぷりが良く、すっと好位の内に控えた。1~2角でペースが落ちると、掛かり気味にじわっと押し上げ前にプレッシャーをかけに行ったが、その後はしっかり折り合って前にスペースを作って3角へ。4角では前のスペースをじわっと詰めながら仕掛け、出口で外に誘導し3番手で直線を迎えた。
序盤はマイペースで逃げたリトルジャイアンツとは2馬身半差あったが、じりじり詰めて2馬身差の2番手に上がった。ラスト1Fでもしぶとく伸び続けて粘る同馬を半馬身差で競り落とした。
上位2頭で3着馬に3馬身半以上の差をつけ、この2頭はなかなか良い指数を記録。勝利したジェットマグナムの上がり3Fタイム34秒7はこの週の福島芝中距離としては、古馬と比較してもかなり優秀な数字で高評価だ。上位2頭はスムーズなレースができており、次走に向けての上積みがやや小さいかもしれないが、順調に使われながらなかなか強くなりそうだ。
7月7日(日) 福島6R 優勝馬 セイウンビッグバン 指数-3 評価B
4番枠からまずまずのスタートを切り、外から前を主張する馬を行かせて2列目の最内を追走。前のショウナンバシリスが下がってきたので、いったん控えて3~4角で外に誘導。4角出口で前3頭の外に誘導し、直線でさらに外に出されると、グングン伸びて残り100mで先頭。そのまま押し切って2馬身差で完勝した。
上がり3Fタイム34秒8はこの週の福島としてはまずまず良い。2着以下にしっかりとした差をつけているので、指数は悪くないものとなった。走破タイムは平凡なので疲れを残しにくく、この後の上昇は見込めそうだ。順調に使われながら上を目指す馬となりそうだ。
7月6日(土) 小倉2R 優勝馬 ジャルディニエ 指数-5 評価A
4番枠からまずまずのスタート。序盤は3番手を追走していたが、1~2角で外のニシノオーブがするする上がって行ったので、それをじわっと追いかけて2列目の外を追走。3角手前で今度はオーシンエスが被せてくると、それに抵抗して3角から進出した。4角で先頭に並びかけ、直線序盤でじわじわ伸び3/4差のリードを奪うと、ラスト1Fで抜け出し3馬身半差で完勝した。
ジャルディニエは単勝オッズ1.3倍の圧倒的1番人気に支持されていた。前走の新馬戦はサニーサルサが緩みない流れでレースを引っ張った一戦。ジャルディニエは差す競馬で好タイムの2着。いかにも2戦目で疲れが出てしまいそうな内容であり、果たしてどうなるかと見ていた。
前走で緩みない流れの芝1600mを使われたこともあって、前走より前のポジションが取れた。そして今回も緩みない流れ。3角手前でオーシンエスが被せてきたことでやや早仕掛けになったが、それでも結果は3馬身半差の圧勝だった。
上がり3Fタイムは37秒2。ラスト2Fは12秒3-12秒8と完全にスタミナ比べとなった一戦を、なかなかの好指数で勝利した。新馬戦の疲れが懸念された一戦だったが、あっさりクリア。このことから能力の天井がかなり高いところにあると推測される。また今回の厳しいスタミナ比べを制したことは、流れが厳しい展開でも最後の伸びに繋がってくるだろう。次走が重賞でも面白い存在になりそうだ。
7月6日(土) 小倉5R 優勝馬 タマモティーカップ 指数-3 評価A
4番枠から五分のスタートだったが、軽く促されて前の2頭の外3番手を追走。3~4角の外から徐々に前2頭との差を詰めて直線へ。序盤でセルヴァンスが抜け出し、それを追いかけた。この時点で同馬とは1馬身半差。その差がなかなか詰まらなかったが、ゴール寸前で差し切りクビ差で勝利した。
このレースは芝1200mの新馬戦のわりに6頭立てと少頭数。こういった少頭数の新馬戦は疲労度が小さいことも少なくなく、意外な大物が出ることもある。タマモティーカップの走破タイムは悪くない。3着馬に2馬身半としっかりした差をつけての勝利も評価できる。よって指数はマズマズ良いものとなった。
この馬が今後、面白いなと思わせる点は5月の遅生まれであること。2歳のこの時期に2、3月生まれと5月生まれでは大きな差がある。そのハンデがありながら新馬戦を悪くない内容で勝利した点は面白い。
母チャームポットは平凡なタイムで新馬戦勝ちしたあと、3歳時の紅梅S2着、最終的にはOPまで行った馬。本馬は母と比較して新馬戦を好時計勝ちしたことが疲労度の点でやや気になるが、遅生まれで成長力が期待できる。面白い馬となりそうだ。
7月7日(日) 小倉5R 優勝馬 ジョバンニ 指数-4 評価AA
大外7番枠からもっさりとしたスタートだったが、気合いをつけられると脚の回転が上がり、一気に好位まで上がった。道中は前2頭の外3番手を追走。そのままの隊列で3角へ。3~4角で外からダノンシーマが並びかけてくると、それに抵抗して絶好の行きっぷりで進出。4角では早々に先頭に立って直線に入った。直線序盤で追われると、軽々と抜け出して2馬身差。ラスト1Fでバズアップビートに1馬身差まで迫られたが、最後まで減速することなく完勝した。
このレースは前評判が高かったバズアップビート、ダノンシーマの一騎打ちという様相で、両馬の単勝オッズは1.8と1.9倍だった。しかし、ジョバンニは2着のバズアップビートに1馬身差、3着のダノンシーマには5馬身差をつけて勝利した。
上がり3Fタイム34秒7はこの週の小倉芝中距離としては優秀で、自ら動いてラスト2F11秒6-11秒2の数字も高評価。今回の走りは全能力を出し切ったものではないだろう。今後は重賞戦線での活躍が期待できる。また2着だったバズアップビートも最後の脚には見どころがあり、今後の活躍が期待できそうだ。
7月6日(土) 函館5R 優勝馬 ピコローズ 指数-3 評価B
4番枠から出遅れ。内にヨレる行儀の悪いスタートだったが、ダッシュはついて先頭列4頭の直後を確保。道中で前から1頭下がってきたが、2列目の最内をスムーズに追走。3~4角で前との差を徐々に詰めて直線へ。序盤で先頭列の間をスパっと割って、一気に先頭に立った。ラスト1Fで内から迫られたが、さらにもうひと伸びして1馬身差で勝利した。
走破タイム1分10秒8はこの日の函館としてはなかなか速い。面白いのは残り3F目の11.6からラスト2F12秒4-11秒9と再加速したこと。ラスト1Fの数字自体は平凡だが、最後にもうひと伸びした脚は評価できる。また、ピコローズは5月の遅生まれ。この新馬戦自体はややダメージがありそうな内容だったが、遅生まれの豊富な成長力を生かして使われながら徐々に上昇していきそうな馬だ。
7月7日(日) 函館5R 優勝馬 マジックサンズ 指数-5 評価AA
6番枠から出遅れたが、無理をさせず中団馬群の後方外目を追走。前半3F38秒5、5F通過65秒4で時計の掛かる開催終盤の函館と言ってもさすがのスローペース。レースは団子状態で大きな動きのないまま3角へ。そこから3頭分外を回って進出開始、4角では2列目の外付近。直線では稍重馬場での加速比べとなったが、ラスト1Fで前2頭をかわして2馬身差で完勝した。
マジックサンズは2023年桜花賞2着馬コナコーストの半弟にあたる良血馬で、1番人気に支持されて人気に応えた。上がり3Fタイム35秒3はこの週の函館芝中距離では古馬を含めて最速で、これはかなり評価できる。ラスト2Fも11秒8-11秒6と、時計の掛かる馬場としては評価できるだろう。今回は瞬発力、豊富なスタミナを感じさせる勝利。次走が重賞でも期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)マジックサンズの指数「-5」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.5秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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