【宝塚記念】3着以下を11馬身突き放したクロノジェネシス 春のグランプリレースを「記録」で振り返る

緒方きしん

宝塚記念に関する「記録」,ⒸSPAIA

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前回の京都開催では伏兵の7歳馬2頭が激走

今週は上半期の総決算、グランプリ宝塚記念が開催される。今年は例年の阪神競馬場ではなく京都競馬場での開催。条件が異なる一戦で、どのようなドラマが生まれるか注目が集まる。牝馬か牡馬か、新興勢力かベテランか。今回は宝塚記念の記録を振り返る。データは1986年以降を使用する。

1986年以降、京都競馬場で宝塚記念が開催されたのは3度。1991年(勝ち馬:メジロライアン)、1995年(勝ち馬:ダンツシアトル)、2006年(勝ち馬:ディープインパクト)と、いずれも2番人気以内の馬が勝利している。

1991年の1番人気メジロマックイーンは2着に食い込んだが、1995年の1番人気馬サクラチトセオーは7着と馬券圏外に敗れている。ただし、メジロマックイーンは単勝オッズ1.4倍、ディープインパクトは1.1倍と圧倒的な人気だったが、サクラチトセオーの場合は4.4倍とやや割れた中での1番人気だった。勝ち馬の2番人気ダンツシアトルは5.1倍、3番人気のライスシャワーは6.0倍と、ファンの苦悩が伝わるオッズだった。なお、ライスシャワーは故障による競走中止で予後不良となっている。

京都開催だった3度の宝塚記念で馬券圏内に入った馬の性齢を並べると、3位が5歳牡(1頭)、2位が7歳牡(2頭)、1位が4歳牡(6頭)で、牝馬や6歳馬は全て馬券圏外に敗れた。特に6歳馬はリンカーン(2006年2番人気9着)、バンブーメモリー(1991年4番人気10着)と上位人気馬も苦戦、上述のライスシャワーも6歳での出走だった。

一方、阪神開催ではスズパレード、メジロマックイーン、エイシンデピュティ、アーネストリーと期間内で4頭の6歳馬が勝利をあげている。

また、京都開催で馬券圏内に食い込んだ7歳馬2頭はナリタセンチュリー(2006年10番人気2着)とバランスオブゲーム(2006年9番人気3着)。この2頭のワイドは97.4倍という高配当に。大本命ディープインパクトが0.7秒差の圧勝劇を披露する裏で、ベテラン2頭が波乱を演出していた。

異なる5名の騎手と挑み続けたヒットザターゲット

ディープインパクトが2着につけた0.7秒差は、阪神開催を含めても1986年以降で第3位の記録である。

2位の記録は1994年ビワハヤヒデで0.8秒差。ナイスネイチャやネーハイシーザー、サクラチトセオーといった実力派が集う中で、デビューから全レースで連対を続けていた前年の年度代表馬ビワハヤヒデは単勝1.2倍の圧倒的支持を得る。鞍上・岡部幸雄騎手に導かれ、好位から早めに仕掛けると、2着アイルトンシンボリらを置き去りにして5馬身差での圧勝だった。

そして、最大タイム差を記録したのが2020年のクロノジェネシス。なんと1.0秒もの差をつけて勝利をあげている。

前年は桜花賞とオークスで3着、秋華賞で1着の世代上位牝馬が前走の大阪杯2着を経て本格化。2着のキセキに6馬身、3着のモズベッロにはそこから5馬身と、3着以下に11馬身以上の差をつけて突き抜けた。

クロノジェネシスが2分13秒5でゴールする中、13頭が2分16秒以上を要してゴールするという結果だった。なお、クロノジェネシスは翌年も宝塚記念に出走。2着に0.4秒差をつけて連覇を達成した。

クロノジェネシス同様、連覇を達成したゴールドシップは3連覇を目指して2015年の宝塚記念に出走したが、大出遅れを喫して15着と惨敗。同一GⅠ・3連覇の偉業とはならなかった。

また、ゴールドシップの宝塚記念への挑戦は上述の3戦だったが、これよりも多く宝塚記念に挑戦をした馬は1986年以降で4頭いる。

挑戦回数2位タイとなる「4度出走」はステイゴールド、コスモバルク、キセキの3頭。キセキは2度の2着、ステイゴールドは2着1回、3着1回、4着2回と好走を続けた。

一方、最高着順が8着であり、他3戦は2桁着順だったコスモバルクだが、こちらは4年連続の出走だった他2頭と違い、間に未出走の年を経ての挑戦だった。

そして、最も多く出走したのがヒットザターゲット。実に5度も宝塚記念に出走した。

初出走は4歳時で、鞍上は古川吉洋騎手。翌年は福永祐一騎手、6歳では武豊騎手で挑戦。7歳シーズンは目黒記念の後に札幌記念へ向かったため未出走、8歳で小牧太騎手、9歳で川田将雅騎手と出走。5回全てが別々の鞍上であった。

ヒットザターゲットは6歳時に4着と好走するが、遂に馬券圏内へ食い込むことは叶わなかった。しかし、宝塚記念への挑戦を続ける傍ら、5歳時に京都大賞典を制覇(11番人気)、7歳時には目黒記念を制覇(11番人気)するなど、波乱の立役者として愛され続けた。まさに無事是名馬と言える。

18年ぶりとなる、京都での宝塚記念。どの馬も無事で怪我なく走り切ることを信じて応援したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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