【安田記念】「サンデー系×5歳以下」のリピーター狙いが有効 昨年2着馬セリフォスは今年も大チャンス
坂上明大
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傾向解説
上半期の芝マイル王決定戦・安田記念。短距離から中距離、ダート路線からも有力馬が参戦し、さらに今年は香港からも強豪が集結する難解な一戦で、例年以上に適性評価が重要になりそうです。本記事では血統面を中心に、安田記念のレース傾向を整理していきます。
まず、ポイントとして挙げたいのはトップマイラーのリピート好走が非常に多いということ。芝のマイル路線は中長距離路線とは異なり、国内外を含めても安田記念に有力馬が集中しやすい番組構成にあります。また、他路線組も参戦しやすいスケジュールとなっているため、今年のように短距離から中距離、さらにはダート路線からも有力馬が参戦してくるケースは少なくありません。
適性面に関しては当然マイル路線を歩んできた馬に分があり、さらにマイル路線のライバルが少ない安田記念では前年上位馬のリピート好走が多発する、という構図が出来上がっているわけです。
アエロリット:2018年2着→2019年2着
インディチャンプ:2019年1着→2020年3着
アーモンドアイ:2019年3着→2020年2着
グランアレグリア:2020年1着→2021年2着
シュネルマイスター:2021年3着→2022年2着→2023年3着
ソングライン:2022年1着→2023年1着
また、ハイレベルなメンバーが集まりやすいレースのため、世代交代が激しい点も大きな特徴。過去5年の3着内馬はすべて3~5歳馬で、特にピーク期に近い4歳馬の活躍は無視できません。リピーターを狙う際も年齢には注意が必要です。
<年齢別成績(過去5年)>
3歳【0-0-1-3】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率25.0%/単回収率0%/複回収率60%
4歳【3-2-1-19】勝率12.0%/連対率20.0%/複勝率24.0%/単回収率157%/複回収率50%
5歳【2-3-3-22】勝率6.7%/連対率16.7%/複勝率26.7%/単回収率183%/複回収率73%
6歳【0-0-0-13】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
7歳【0-0-0-6】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
8歳【0-0-0-2】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
適性面については、近年のペース変化に要注意。10年ほど前の安田記念は「ハイペースの消耗戦」というイメージが強くありましたが、近年の安田記念は「平均~スローペースの末脚勝負」というレース質に変わってきています。これは5年ごとの前後半3F平均を比較すれば明らかで、超スローペースにならない限り後方勢にもチャンスがある近年の馬場状態がペースに影響していると考えられます。
2009~13年:33.7-35.2(前傾1.5秒)
2013~17年:34.5-35.0(前傾0.5秒)
2018~22年:34.5-33.9(後傾0.6秒)
それに伴って、サンデーサイレンス系の好走率も上昇。芝中距離の瞬発力勝負では無類の強さを誇る日本の主流血統ですが、以前のようなハイペースの消耗戦ではなかなか同血脈の良さが生きていない印象でした。しかし、ペースが落ち着いた近年の安田記念ではサンデーサイレンス系の好走が目立ち、孫、曾孫世代が多くなる今後はさらにこの傾向に拍車がかかりそうです。Storm Catなどの北米血脈やRivermanなどのフランス血脈との組み合わせで末脚を強化したサンデーサイレンス系産駒には要注目です。
<サンデーサイレンス系(過去15年)>
2009~2013年【1-2-1-26】勝率3.3%/連対率10.0%/複勝率13.3%/単回収率97%/複回収率57%
2014~2018年【2-1-4-45】勝率3.8%/連対率5.8%/複勝率13.5%/単回収率27%/複回収率51%
2019~2023年【5-2-2-32】勝率12.2%/連対率17.1%/複勝率22.0%/単回収率230%/複回収率64%
血統解説
・ロマンチックウォリアー
母Folk MelodyはStreet Cry×シングスピールという日本適性の高い組み合わせで、Haloの4×4を持つ点が最大の魅力。さらに、父Acclamationは欧州の短距離種牡馬Dark Angelを出したトライマイベスト系種牡馬で、Dark Angel産駒のマッドクールは今年の高松宮記念を制しています。香港の芝2000m戦で無類の強さを発揮する同馬ですが、マイル適性も高く、さらには日本の馬場適性も十分。安田記念ではあくまでもチャレンジャーの立場ですが、好走の可能性は決して低くはないでしょう。
・ソウルラッシュ
母母キャットアリの快速血統を武器にマイル路線で堅実な走りを見せるルーラーシップ産駒。安田記念では13、9着と良いところがありませんが、どちらも不利を受けての敗戦で、決して安田記念適性が低いというわけではありません。ただ、蹄底が厚く道悪馬場が得意という側面もあり、相対的には雨馬場の方がいい結果に繋がりやすいでしょう。
・セリフォス
先行粘着型が多いダイワメジャー産駒ですが、本馬はLe Havre産駒の母シーフロントの影響が強く、フランス牝系らしい鋭い切れ味が強みです。スローペースの芝1600~2000mがベスト条件で、昨年の安田記念でもソングラインの2着。5歳馬でもあり、今年も大注目の1頭です。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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