【安田記念】1995年はハートレイクが豊マジックで接戦制す サイレントウィットネスなど外国馬の活躍を振り返る

高橋楓

安田記念の海外調教馬の成績(1993年以降),ⒸSPAIA

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1993年の門戸解放以降、勝利した外国馬は3頭

今週の日曜日は東京競馬場で安田記念が開催される。今年は6年ぶりに外国馬が出走を予定しており、例年以上に盛り上がりを見せそうだ。出走予定は香港馬のロマンチックウォリアーとヴォイッジバブル。2頭とも香港で活躍するトップホースだ。

安田記念ではじめて外国馬に門戸が解放されたのは1993年。この年にはアメリカのロータスプール、フランスからキットウッドが参戦し5、6着だった。その後、1995年にUAEのハートレイク、2000年に香港のフェアリーキングプローン、2006年に同じく香港のブリッシュラックが外国馬として安田記念を制した。

外国馬の通算成績は【3-3-3-47】勝率5.4%、連対率10.7%、複勝率16.1%。全体成績としては強調できる数字ではないが、単勝回収率101%、複勝回収率71%で全くのノーマークにはできない成績だ。

香港馬2頭が出走予定ということで、今回は外国馬の参戦で沸いた過去の3レースを振り返ってみたい。

UAEからの刺客 1995年ハートレイク

1994年に設立されゴドルフィン軍団の名声を日本に広く伝えたのがハートレイクだろう。鮮やかなロイヤルブルーの勝負服はこのとき認知されたといっても過言ではない。

ハートレイクは年明けデビューながら欧州の重賞で好走を続け、暮れの香港国際ボウル3着、1995年の一般競走を快勝。その後、休養を挟んで日本にやってきた。前哨戦の京王杯SCを4番人気で5着とし、本番の安田記念へ挑んだ。

この年の安田記念は上位拮抗。1番人気は重賞3勝のトニービン産駒で末脚が武器のサクラチトセオー。2番人気が前年の天皇賞(秋)の勝ち馬ネーハイシーザー。この2頭が単勝一桁台で、以下ホクトベガ、そして武豊騎手騎乗のハートレイクと続いた。

ゲートが開くと外国馬のドゥマーニがやや立ち遅れるも、すぐに馬群にとりつき一団となり、外からタイキブリザードが先手をうかがった。ハートレイクは中団内目でジッと我慢、その集団を後方からサクラチトセオーが見るという展開。後方5番手あたりにネーハイシーザーがつけ、ホクトベガも脚を溜めていた。大欅を過ぎても逃げ馬が飛ばし、馬群は縦長で進んで各馬進路取りが一段と難しくなった。

ハートレイクの前には2枚3枚の壁が築かれ動ける状況ではなかった。しかし、ここで豊マジックが炸裂。1頭分の進路を見つけると、スルスルと内を突っ込んでいった。タイキブリザードも必至の抵抗で並びかけ、外からは小島太騎手の右鞭が飛び、サクラチトセオーが凄い末脚で迫った。ゴールにほぼ同時に入線。ハナ差の攻防をハートレイクが制し、史上初の外国調教馬による安田記念制覇を飾った。

1995年 安田記念,ⒸSPAIA


香港の歴史的スプリンター来日 2005年サイレントウィットネス

2005年は当時の香港スプリント界で無類の強さを見せていたサイレントウィットネスが参戦。大いに盛り上がったレースとして記憶に残っている。香港表記で「精英大師」。海外競馬に詳しくないファンの中でも、当時グレード制導入以降の世界記録であるデビュー17連勝を果たした馬の参戦として注目を集めた。

とはいえ、当時の日本のファンはその実力を疑わざるを得なかった。まず歴史的スプリンターではあるが、前走で初めてマイル戦に挑戦し、2着に敗れていたこと。年明けからすでに5戦し、疲労が懸念されていたこと。前走573kgだった馬体がレース当日はマイナス23kgの550kgとなっており、初の海外遠征の影響がもろに出てしまっていた。結果、このレースの単勝1番人気は5.8倍のテレグノシス。単勝一倍台が5頭もいた。

1番人気 テレグノシス(5.8倍)
2番人気 ダイワメジャー(6.8倍)
3番人気 ダンスインザムード(7.5倍)
4番人気 アドマイヤマックス(7.6倍)
5番人気 サイレントウィットネス(8.6倍)

1986年以降、このレースまでにGⅠレースで単勝1番人気のオッズが5.0倍以上だった例は7例しかなく、歴代2位タイの高オッズになっていた(1位は1989年、日本ダービーのロングシンホニー)。

レースはサイレントウィットネスがポンと好スタートを決めた。しかし、ローエングリン、オレハマッテルゼが先手を奪いに行き、サイレントウィットネスも一瞬掛かったように前を行くと、2番手まで再浮上。そのまま400m通過時点でも楽な手応えで手綱を持っていた。直線に入るとバランスオブゲームが早め先頭に躍り出るも、F.コーツィー騎手は焦る素振りも見せず、坂を駆け上がりラスト200mでは再度先頭を奪い返した。しかし、外から伸びてきたアサクサデンエンに抜け出され、最後はスイープトウショウにもかわされ3着。ただ最後まで垂れることはなかった。

何より驚いたのは先行馬総崩れの展開になりながら、ただ1頭最後まで追い込み馬たちと競り合ったその実力だ。この走りを受け、秋にはスプリンターズSで堂々の1番人気に支持され、デュランダルなどを封じて日本のGⅠを制した。

2005年 安田記念,ⒸSPAIA


連続参戦で手にした勝利 2006年ブリッシュラック

サイレントウィットネス参戦の翌年、2006年の安田記念を優勝したのは香港馬ブリッシュラックだった。何といってもサイレントウィットネスに初黒星をつけたのが同馬だった。ブリッシュラックは2005年の安田記念にも出走、後方15番手から上がり最速の末脚で追い込み4着だった。そして翌年2006年も参戦してきた。この年の安田記念の単勝1番人気は5.7倍のオレハマッテルゼ。また単勝一倍台が7頭もいて、昨年以上に混戦模様だった。

1番人気 オレハマッテルゼ(5.7倍)
2番人気 ダイワメジャー(5.8倍)
3番人気 ブリッシュラック(6.4倍)
4番人気 ダンスインザムード(7.3倍)
5番人気 テレグノシス(7.4倍)
6番人気 カンパニー(8.5倍)
7番人気 ハットトリック(9.7倍)

またブリッシュラック以外にも4月にGⅠを初制覇したジョイフルウィナー、前年の香港マイル2着のザデュークらも参戦。日本馬も計7頭がGⅠ馬という超豪華メンバーで誰が勝ってもおかしくなかった。

ゲートが開くと1番人気のオレハマッテルゼが好スタートを決めるも、メイショウボーラーが押してハナを奪った。ダイワメジャーとローエングリンがこれをピッタリとマーク。3番人気のブリッシュラックはこれら先団を見る形でレースを進めた。1000mは58.1秒で通過、1ハロン目以外は全て11秒台のラップが刻まれるハイペースかつ息の入らない戦いとなった。ラスト200mでブリッシュラックが堂々と抜け出すと、追い込んできたのは昨年覇者のアサクサデンエンと香港のジョイフルウィナー。しかしこれらを全く寄せ付けず2馬身半差の圧勝劇を見せた。

2006年 安田記念,ⒸSPAIA


冒頭でも述べたが今年は香港から強豪馬が2頭やってくる。ロマンチックウォリアーはここまで19戦14勝。クイーンエリザベス2世Cを史上初の3連覇。他にも香港カップ連覇などGⅠを7勝する世界的トップホースだ。もう一頭のヴォイッジバブルは香港ダービーを制してからはドバイターフ以外、常に安定した成績を残し、3走前の香港ゴールドカップではロマンチックウォリアーとクビ差の接戦を演じている。ブリッシュラック以来の18年ぶりの外国馬の優勝なるか。この2頭からは目が離せない。

《ライタープロフィール》
高橋楓
秋田県出身。サクラローレルの馬体の美しさに魅せられ毎週競馬を見るようになる。他に好きな馬はホクトベガ、サイレンススズカ。一口馬主を趣味とし、楽しさを伝える事にも注力している。 競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

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