【安田記念】海外GⅠ・7勝馬ロマンチックウォリアー参戦 展開のカギは距離延長で臨むウインカーネリアンにあり

勝木淳

2024年安田記念に関するデータ,ⒸSPAIA

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ロマンチックウォリアー参戦

安田記念に香港勢が出走するのは18年ウエスタンエクスプレス以来、6年ぶりになる。それもクイーンエリザベスⅡ世C3連覇を決めたばかりのGⅠ・7勝馬ロマンチックウォリアーと香港マイル2着、チャンピオンズマイル3着ヴォイッジバブルだから驚く。シーズンを終えたばかりの香港勢が安田記念で猛威を振るったのは、2000年代のこと。勝ち馬にはフェアリーキングプローン、ブリッシュラックの名が残る。宝塚記念までセットの遠征と考えると、検疫明けの安田記念は必ずしも勝負ではないかもしれない。いやいや出るからにはタダでは終わらない。そんな議論もたのしい。

対する日本勢はヴィクトリアマイルで敗れたナミュールが短期放牧を挟み、参戦する方向のようだ。てっきり休養かと思われたが、この中2週はどう出るだろうか。かつては間隔を詰めると力を出せない繊細さがあったが、古馬になり、海外も経験したいま、どう変わってきたのか。非常に興味深いところだ。牡馬勢はおなじみのセリフォス、ソウルラッシュが中心。ちょっと空洞化した感があるマイル路線だからこそ、香港勢が不気味でならない。データは過去10年分を使用する。

安田記念の人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【2-3-3-2】勝率20.0%、複勝率80.0%と堅実な一方、勝ち切れない場面が目立つ。4番人気以内6勝で上位の力差はほぼない年が続く。連覇を達成したソングラインはどちらも4番人気。人気の盲点はいくらでもあるだろう。

さらに7~9番人気も4勝しており、伏兵陣も静かに牙を研ぐ。かつてほどではないが、5週連続GⅠのラストは荒れる雰囲気がある。決めてかからず、出走馬は隅から隅までしっかり分析しよう。

安田記念の年齢別成績,ⒸSPAIA


傾向が強く出ているのは年齢だ。4歳【5-3-2-28】勝率13.2%、複勝率26.3%は中心として頼りになる。しかし、今年の4歳は香港帰りのエルトンバローズ、京都金杯VのコレペティトールとGⅠとしてはやや迫力が足りない。5歳【3-4-3-38】勝率6.3%、複勝率20.8%、6歳【2-2-3-37】勝率4.5%、複勝率15.9%が数字をあげてきそうだ。

距離延長で巻き返すウインカーネリアン

前走海外は【1-3-1-14】、4月終わりの香港チャンピオンズデー出走馬は【0-1-0-5】。シーズンハイライトから約1カ月。その間、検疫もあり、日程は決して楽ではない。だが、この数字をそっくりロマンチックウォリアーに当てはめていいか迷う。検疫期間は変わらないので壁は存在する。しかし、東京競馬場に国際厩舎ができ、移動を伴う検疫はなくなった。この負担軽減がどれほどパフォーマンスを引き出すのか、これもまた注目すべきだろう。

安田記念の前走クラス別成績,ⒸSPAIA


安田記念の前走レース別成績,ⒸSPAIA


国内組の傾向をみていこう。前走GⅠ【4-5-3-35】勝率8.5%、複勝率25.5%の内訳をみると、ヴィクトリアマイルが【2-4-0-10】勝率12.5%、複勝率37.5%。その2着【0-0-0-4】、6着以下【0-0-0-3】。好走馬は勝ち馬か4~5着馬から出ており、フィアスプライド、ナミュールにプラスとはいえない。ただナミュールは例年より1週間遅いドバイ帰りで検疫期間を挟んだ難しい調整での出走だっただけに、中2週とはいえ上積みも考えられる。また、今年のヴィクトリアマイルは前後半800m45.4-46.4のハイペースであり、例年ほど安田記念とのペース差はなさそう。2着に残ったフィアスプライドも前走経験を生かせるのではないか。

ウインカーネリアンが当てはまる前走高松宮記念は【1-0-1-9】勝率9.1%、複勝率18.2%。ここは2着【1-0-0-1】、10着以下【0-0-1-2】。3、4着は【0-0-0-3】。しかし、ウインカーネリアンにとってマイルは主戦場でもあり、距離延長は歓迎だ。先行勢はドーブネぐらいで、マイペースまである。昨年の東京新聞杯は45.8-46.0で逃げ切った。東京マイルはベストといっていい。

安田記念のマイラーズC着順別成績,ⒸSPAIA


前哨戦では前走マイラーズC【1-0-4-33】勝率2.6%、複勝率13.2%に注目する。好走は1着【0-0-2-7】複勝率22.2%、4着【1-0-1-3】勝率20.0%、複勝率40.0%、10着以下【0-0-1-1】。1、2着ソウルラッシュ、セリフォスの実績馬のほかに4着エアロロノア、8着コレペティトールがいる。東京マイルへの適性という意味では、昨年2着セリフォスだろう。ソウルラッシュは安田記念13、9着。格下の富士S2着など適性が高いとはいえない。

格下だが前走ダービー卿CTは【2-0-0-8】。15年モーリス、16年ロゴタイプはそれぞれダービー卿CT1、2着からGⅠをつかんだ。近年は好走馬を送っていないローテーションだが、パラレルヴィジョンの勝ちっぷりは魅力的だ。ほか、フェブラリーS2着ガイアフォースは昨年の安田記念4着、天皇賞(秋)5着など東京なら芝ダートを問わない。持続力勝負なら上位に食い込む力はある。

2024年安田記念に関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。


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