【東京新聞杯】スローペースの瞬発力勝負の傾向 例年通りならマスクトディーヴァも対応可
坂上明大
ⒸSPAIA
傾向解説
GⅠシーズンまでは少々時間があるため、大舞台への出走に向けて実績の足りない馬が賞金加算のためにステップとして使うのが東京新聞杯。安田記念と同じ東京芝1600mで行われますが、レースの質が大きく異なるため好走する血統にも違いが出てきます。本記事では血統面を中心に、東京新聞杯のレース傾向を整理していきます。
最初に紹介したいデータは年齢別成績。前述の通り、GⅠシーズンまで間隔が空く2月頭に行われる東京新聞杯では、GⅠ上位勢が休養中の間に賞金を加算したい若手の台頭が目立ちます。そのため、4歳>5歳>6歳>7歳以上という傾向は明確で、賞金が足りない若手の素質馬を狙うのが本レースのテーマといえるでしょう。
<年齢別成績(過去10年)>
4歳【4-5-4-27】勝率10.0%/連対率22.5%/複勝率32.5%/単回収率49%/複回収率69%
5歳【2-3-5-29】勝率5.1%/連対率12.8%/複勝率25.6%/単回収率49%/複回収率98%
6歳【4-1-1-31】勝率10.8%/連対率13.5%/複勝率16.2%/単回収率123%/複回収率63%
7歳以上【0-1-0-31】勝率0%/連対率3.1%/複勝率3.1%/単回収率0%/複回収率10%
特に注目したいのがノーザンファーム生産の4~5歳馬。東京芝1600mは3つのGⅠが行われる日本の主流条件のひとつのため、ノーザンファーム系の末脚強化型の血統や育成がマッチします。そのなかでも4~5歳馬の成績は非常に優秀で、昨年も3頭の出走馬から2着ナミュール、3着プレサージュリフトと2頭の好走馬を輩出しました。
<ノーザンファーム生産馬の年齢別成績(過去10年)>
4歳【3-4-1-8】勝率18.8%/連対率43.8%/複勝率50.0%/単回収率91%/複回収率108%
5歳【1-2-2-6】勝率9.1%/連対率27.3%/複勝率45.5%/単回収率70%/複回収率153%
6歳【0-1-0-8】勝率0%/連対率11.1%/複勝率11.1%/単回収率0%/複回収率87%
7歳以上【0-0-0-10】勝率0%/連対率0%/複勝率0%/単回収率0%/複回収率0%
血統面では芝中長距離血統に注目。過去10年の平均前後半3Fラップは35.2-34.3の後傾0.9秒で、スローペースの瞬発力勝負になりやすいのが東京新聞杯の特徴です。となれば、スプリント寄りの適性よりも中長距離寄りの適性が必要。道中で脚をタメる資質が求められ、実績面でも血統面でも中距離に強い馬が走りやすいレースとなっています。過去10年の勝ち馬の父は9/10頭が現役時代に芝2400m以上の重賞勝ちがあり、3着以内に広げても28/30頭が該当。ディープインパクトやハーツクライを中心とした芝中長距離種牡馬の産駒には要注目です。
<父別成績(過去10年)>
ディープインパクト【3-5-1-23】勝率9.4%/連対率25.0%/複勝率28.1%/単回収率73%/複回収率76%
ハーツクライ【2-2-1-3】勝率25.0%/連対率50.0%/複勝率62.5%/単回収率135%/複回収率211%
ステイゴールド【1-0-1-5】勝率14.3%/連対率14.3%/複勝率28.6%/単回収率38%/複回収率174%
スクリーンヒーロー【1-0-1-2】勝率25.0%/連対率25.0%/複勝率50.0%/単回収率237%/複回収率152%
トゥザグローリー【1-0-1-0】勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率100%/単回収率580%/複回収率260%
クロフネ【1-0-0-1】勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回収率1030%/複回収率270%
タニノギムレット【1-0-0-0】勝率100%/連対率100%/複勝率100%/単回収率640%/複回収率160%
血統解説
・マスクトディーヴァ
母母ビハインドザマスクは芝1200~1600m重賞3勝馬で、母マスクオフはLyphardの4×4を持つ機動力型ディープインパクト産駒。ルーラーシップを父に配した本馬も立ち肩の機動力型で、ルーラーシップ×ディープインパクトらしい小柄な中長距離馬の体型に出ています。ベストは2000m以上ですが、2018年にはリスグラシューが制している通り中長距離馬でも走りやすいのが本レースの特徴。例年通りの流れであればマイル戦にも対応できそうです。
・ジャスティンカフェ
エピファネイア×ワークフォース×サンデーサイレンス×リアルシャダイという字面だけ見れば長距離馬と評価したくなる血統表。サンデーサイレンスの4×3を中心に、Sadler's Wellsの4×4、Robertoの4×5など中長距離向きの血筋を掛け合わせており、胴の長い馬体からも本質は中距離向きの印象です。逆に言えば、マイル重賞を勝ち切るなら東京新聞杯のような中距離戦に近いレースではないでしょうか。ただ、今年は既に水準以上の賞金を獲得しているため、何が何でもという感じではないかもしれません。
・コナコースト
ノーザンファーム生産馬では本馬に注目。特に4歳牝馬の出走はリスグラシュー、シャドウディーヴァ、ファインルージュ、プレサージュリフト、ナミュールと5/6頭が好走しており、期待のローテーションと言えるのではないでしょうか。キタサンブラック×キングカメハメハの中距離血統でもあり、ペースが緩みにくい中山芝1600mからのコース替わりもプラスに働きそうです。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
《関連記事》
・【東京新聞杯】3~5番人気が近10年8勝と上位混戦 注目は好成績の「4歳牝馬」マスクトディーヴァなど
・【東京新聞杯】参考レース振り返り 好相性の「牝馬」マスクトディーヴァやマイルCS組ジャスティンカフェが優勢か
・【東京新聞杯】過去10年のレース結果一覧
おすすめ記事