【シンザン記念回顧】持続力勝負に強いパレスマリス産駒 距離延長も面白いノーブルロジャー
勝木淳
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パレスマリスの母はパレスルーマー
パレスマリスの産駒が立て続けにマイル重賞を勝ち、その注目度が増した。同世代の持ち込み馬ジャンタルマンタルとマル外ノーブルロジャーの活躍はこの春から日本でスタッドインするパレスマリスにとって追い風でしかない。お父さんもさぞ北海道で気分よく過ごせそうだ。ダーレー・ジャパンはヨシダも導入し、アダイヤー、フクムもラインアップに加わる。戦略的にダートや短距離などが中心だったダーレー・ジャパンがいよいよクラシックに本腰を入れてきそうだ。やはり一強は仕方ないにしても、味気ない。
パレスマリスはマイル路線を担うことになるのか。だが、この馬の名を日本のファンが認知したのはジャンタルマンタルより少し前のことだ。パレスマリスの母はパレスルーマーと聞けばピンとくる方も多いだろう。天皇賞(春)を勝ち、有馬記念1番人気のジャスティンパレスと、その兄アイアンバローズの母だ。パレスマリスはこの2頭の兄にあたる。日本での成功もうなずける。しかし、自身も勝ち鞍には12ハロンのベルモントSがあり、日本で走る弟はともに長距離砲。マイルがベストでもなさそうだ。同じ川田将雅騎手でタイトルを獲得したジャンタルマンタル、ノーブルロジャーはどちらもNHKマイルCでなくてもいい。
中距離もこなせそうなノーブルロジャー
中距離の適性を感じるのはノーブルロジャー。開幕週からタフな馬場状態だった京都で前後半800m46.4-48.1のハイペースのなか、上がり35.7で大外を伸びた。レースの後半600mは12.0-12.2-11.9。急流を追走して抜け出したラスト200mで11.9を記録しており、スタミナに可能性を感じる。
ジャンタルマンタルはスピードがあり、好位で流れに乗れるが、ノーブルロジャーはそこまでスピードに特化していない印象だ。ならば、距離を延ばしても面白いだろう。1.34.5の勝ち時計もマイラーのそれではない。だが、競馬の基本ともいえるマイル戦を経験し、重賞を勝ったことは中距離挑戦の根拠にもなる。スピードと少しの緩急を必要とするマイルは、現代競馬に必要な資質を多く詰め込める。軽さがない分、2000mでも戦えそうだ。皐月賞は緩急を問うスローになりにくく、タフな流れになりやすい。
ジャンタルマンタルの朝日杯FSは前後半800m46.1-47.7、1.33.8だった。パレスマリスは明らかに底力型で、持続力勝負に強い。長距離で活躍する弟たちもそれを裏付けている。東京の高速決着への対応は未知数だが、ハイペースのマイル戦なら、出番もありそうだ。ノーブルロジャーの勝利で、ジャンタルマンタルの得意ゾーンもみえてきた。海外種牡馬は輸入前とあとでは繁殖牝馬の血が異なるため、傾向が変わる可能性もある。3年後は頭を悩ますかもしれないが、現状はマイルで実績を残す持続力型で2000mもこなせる可能性があるという評価でよさそうだ。
京都の芝は想像以上にタフ
2着エコロブルームはハイペースのマイル戦に強いダイワメジャー産駒。キャリア3戦目でこの流れを好位からしっかり残したのは将来楽しみが広がる。厳しい競馬をし、好走しており、価値はある。序盤は馬群で狭くなる場面もあり、まだまだ行きたがる素振りなど、荒削りな面を残す。しっかり、経験と賞金を積み、マイル路線に乗ってほしい。全兄スパイダーゴールドは中距離で4連勝し、オープン入り。2000mでの粘っこさもダイワメジャーらしい。エコロブルームもまた、マイル専門とは決めつけられないか。
3着の17番人気ウォーターリヒトは驚いた。プレゼンターとして来場したミスシンザンの大道心夢さんが地元浦河出身ということで、絶対来ると予言したそうだが、恐れ入った。距離短縮組はマイル戦のスピードに対応できず、苦戦する傾向があっただけに、前走2000mだったウォーターリヒトはイメージが遠かった。だが、これもハイペースと京都の芝が予想外にタフだったからと考えたい。これらの情報から、来週以降の京都の馬場傾向をあぶり出したいところだ。4着はキズナ産駒の牝馬ラーンザロープスであり、上位は持続力型の血が独占した。京都の芝は来週までAコース、その後Bコース2週、Cコース2週、ラストDコースと移っていく。ラチが外へ出ても、時期的に軽い馬場にならなそうで、今後も持続力型の血に注目していこう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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