【京都金杯回顧】岩田康誠騎手のイン狙いが光る 重賞初Vコレペティトールに飛躍の予感
勝木淳
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ブリンカー装着で先手を奪ったドルチェモア
最終的な1番人気は昇級初戦のトゥードジボンで5.4倍。大混戦で迎えた関西圏の年はじめは、展開も読みにくく、輪をかけて難しかった。セルバーグ、シャイニーロック、トゥードジボンあたりがハナ候補だったが、なにがなんでもというタイプはいない。8歳のシャイニーロック、1番人気のトゥードジボンは行かない公算が高く、セルバーグは発馬でヨレてダッシュを利かせられなかった。好発を切った馬たちが出方をうかがうようなときこそ、思ったよりペースが速くなるのはよくあることだ。
セッションがハナに行くかと思わせたところに、外から先手を主張したのがドルチェモアだ。3連勝で2歳GⅠを勝った後は成績が落ちてしまい、秋にはスプリント戦にも挑戦するなど、試行錯誤のなかにいる。なんとかして復活をという強い願いを感じる。前走の中日新聞杯で折り合いにメドを立てていたが、今回は外枠でさらにブリンカーを装着していた。これが裏目に出たようで、序盤からムキになっていたようにみえた。前半600mは12.2-10.4-11.1で33.7。ドルチェモアがかなりの勢いでハナに立ったため、400~600m地点でペースが落ちなかった。
その後は上り坂で少しペースダウンしたものの、前半の800mは45.3。後ろを離したドルチェモアだけが厳しいペースで突っ込んでしまった。後半800mは11.4-11.8-13.0-12.3と下り区間であっても失速ラップになり、4コーナーから直線半ばは13.0とドルチェモアに余力は残っていなかった。残念ながら、なかなか出口がみえてこない。
コレペティトールに流れる意外性の血
全体としてはハイペースであっても、2番手以下は平均ペース程度。上がりがかかったとはいえ、後方の追い込み勢まで出番は回ってこなかった。2番手から先に抜け出したセッションは、ドルチェモアがもう少しペースを落とし、粘ってほしかったことだろう。早々に先頭に立ち、1頭で踏ん張らざるを得なくなった。併せる相手がいれば、残せたかもしれない。
先行集団の攻防を見るように早々に内ラチ沿いをとり、じっと狙っていたのが勝ち馬のコレペティトールだ。昨年は重賞の壁にはね返されたが、条件戦から再出発して重賞タイトルに手が届いた。母ベガスナイトの産駒は2017年のきさらぎ賞を勝ったアメリカズカップや、昨年の日経新春杯で10番人気2着に入ったキングオブドラゴンなど、意外性のある個性派ばかり。父ジャスタウェイは4歳秋に本格化し、5歳でGⅠ・2勝、ジャパンCでも2着とハーツクライ産駒らしい晩成型。コレペティトールもここにきて明らかにパフォーマンスが変わってきた。次走でもう少し上の相手と戦ったときに、どれほどの走りを見せるか楽しみだ。メドを立てるようなら、本格化ととってもいい。
もちろん、徹底的にインを狙った岩田康誠騎手の得意パターンでもあった。だが、京都の芝は全体的に走るごとに掘れており、少し軟らかいように見えた。見直すと、コレペティトールが通った内ラチ沿いはほかと比べると硬いようだった。最内1頭分だけ状態がよかったなら、岩田康誠騎手の馬場読みの勝利でもある。
馬場も流れも合わなかったトゥードジボン
2着のセッションは昇級2戦目、昨年のNHKマイルC以来の重賞で好走した。アーリントンC2着の実績があるだけに、納得の2着でもある。早々に先頭に立った誤算はあったかもしれないが、よく粘った。ロベルトの血を感じるシルバーステート産駒であり、力のいる馬場と失速するラップも味方した。アーリントンCは阪神の重馬場で1.33.9。今回は京都の良馬場を同タイムで走った。もっとも力を発揮できるゾーンはこのあたりだろう。
3着には1番人気のトゥードジボン。セッションを見ながら上手にレースを運んだが、最後までセッションをとらえられなかったのは物足りなさも感じる。これにはセッションとの適性の差もあった。京都で上がり33秒台を繰り出して逃げ切ってきた馬だけに、今回のような失速ラップは得意とはいえない。イスラボニータ産駒は、その父フジキセキ譲りの軽いレースに強い。最後はやや苦しそうだった。舞台が変われば、当然パフォーマンスを上げてくるだろう。
全体的に掘れる馬場だったことを考えると、外を回ってはロスが大きすぎた。4着のアヴェラーレと5着のフリームファクシは見直す余地がある。シルクレーシングの6歳牝馬だけにアヴェラーレの次走はどうなるか分からないが、4歳馬のフリームファクシはマイルへのシフトチェンジがハマりそうな予感がする。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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