2023年下半期のGⅠデータまとめ  イクイノックスやドウデュースら「最強4歳世代」が躍動

東大ホースメンクラブ

2023年下半期GⅠのデータまとめ,ⒸSPAIA

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盛り上がりを見せた2023年の秋GⅠ

年内最後のJRA・GⅠホープフルSをレガレイラが制し、2023年の中央競馬が幕を閉じた。3歳三冠のフィナーレ、秋古馬三冠をはじめとする3歳馬と古馬との直接対決など、盛り上がりがピークに達する時期とあって、今年の下半期GⅠも白熱のレースが繰り広げられた。今後さらなる活躍が期待できるスターホースも数多く出現し、来年以降にも楽しみが広がる。

今回のコラムでは下半期のJRA・GⅠの9レースと、地方JpnⅠ、海外GⅠを振り返る。まずはJRA・GⅠから古馬混合戦について振り返っていく。

イクイノックスやドウデュース「黄金世代」が大活躍

まずは古馬混合GⅠ・8レースについて確認する。

2023年下半期のJRA・古馬混合GⅠデータ,ⒸSPAIA



<2023年下半期のJRA・古馬混合GⅠ 主なデータ>
1番人気【5-0-1-2】勝率62.5%/連対率62.5%/複勝率75.0%
4歳世代【5-5-3-31】勝率11.4%/連対率22.7%/複勝率29.5%
ルメール騎手【3-1-0-2】勝率50.0%/連対率66.7%/複勝率66.7%
坂井瑠星騎手【1-1-1-2】勝率20.0%/連対率40.0%/複勝率60.0%

昨年は1番人気が苦戦していたが、今年はとにかく1番人気が強かった。成績は【5-0-1-2】で勝率62.5%、単勝回収率は135%でベタ買いするだけでプラスという驚異的な成績だ。一方、6番人気以下は【0-4-3-72】で複勝率8.9%、複勝回収率も57%にとどまった。本命党にとっては稼ぎ時、穴党にとっては受難の秋競馬だったと言える。

昨年の秋に好成績を残した現4歳世代。その好調ぶりは今年の秋競馬でも健在だった。ママコチャ、イクイノックス、ナミュール、ドウデュースでGⅠ計5勝を挙げるという大活躍。スプリント路線から古馬王道路線まで隙がないのだから、まさに黄金世代といっても過言ではないだろう。惜しくもこの秋はGⅠに手が届かなかったが、スターズオンアースやジャスティンパレスもいるというのだから末恐ろしい。「黄金世代」の来年の活躍にも期待だ。

ジョッキー別では、今年もルメール騎手が頭一つ抜けていた。成績は【3-1-0-2】で勝率はなんと50.0%。イクイノックスで圧勝した天皇賞(秋)やジャパンCはもちろん、GⅠ初挑戦の3歳牝馬ブレイディヴェーグで見事1番人気に応えたエリザベス女王杯、有馬記念では歴史上1頭も馬券に絡んだことのない8枠16番からスターズオンアースで2着に入るなど、素晴らしい騎乗でファンを驚かせた。

ルメール騎手以外で活躍が目立ったのが坂井瑠星騎手だ。スプリンターズSのマッドクール(6番人気2着)や、マイルCSのジャスティンカフェ(7番人気3着)といった人気薄を馬券圏内に持ってきた。そしてチャンピオンズCは、1番人気のレモンポップでしっかり勝ち切った。特に同レースは、好スタートから大外枠の不利を打ち消す今年屈指の好騎乗だった。今秋の古馬混合GⅠでは複勝回収率224%と非常に優秀な成績を残し、来年以降も注目したい。

来年以降の飛躍へ、若駒たちの決戦

次に世代限定GⅠ・5レースを振り返る。

牝馬三冠最終戦、秋華賞でリバティアイランドは牝馬3冠を達成した。4コーナーで早め先頭に立ち、そのまま押し切るという横綱相撲。2着は上がり最速の脚で猛然と追い込んだマスクトディーヴァ、3着には内枠から上手く立ち回ったハーパーが入った。秋華賞当日は偶然にも川田騎手の38歳の誕生日だった。「競馬の神様がくれた最大、最上のプレゼント」と評したリバティアイランドと、来年はどんな競馬を見せてくれるだろうか。

23年ぶりの皐月賞馬vsダービー馬に注目が集まった菊花賞。制したのは夏の上がり馬ドゥレッツァだった。このレースはルメール騎手の手綱捌きが光る一戦に。ルメール騎手は序盤で大方の予想を裏切る逃げの手に出ると、ロスの少ない内ラチ沿いを確保。向正面では一度馬群に飲み込まれる場面もあったが、最後の直線では上がり最速の末脚で2着に3馬身差をつける圧勝劇を見せた。2着はダービー馬のタスティエーラが入り、3着には外から追い込んできた皐月賞馬ソールオリエンスが入った。3歳牡馬の真打・ドゥレッツァ。遅れてきた大器は、来年もこの世代で「最も強い」菊花賞馬としてどこまで活躍するか楽しみだ。

2歳女王決戦・阪神JFはアスコリピチェーノが差し切りを決め、無敗の3連勝で2歳女王に輝いた。鞍上の北村宏司騎手はキタサンブラックの菊花賞以来、8年ぶりのGⅠ制覇。勝ち時計1:32.6はレースレコード。今年の2歳牝馬のレベルの高さが如実に表れた形だ。2着には赤松賞を勝ったステレンボッシュ、3着には京王杯2歳Sを制したコラソンビートが入った。ここにアルテミスSを圧勝したチェルヴィニアや、サウジアラビアRC2着のボンドガールが加わる来年の桜戦線は、かなりハイレベルになりそうだ。

朝日杯FSで2歳マイル王の座に就いたのはジャンタルマンタル。こちらも無敗の3連勝での戴冠となった。レースは早め先頭から後続を突き放して完勝。来年から日本に供用されるパレスマリス産駒であり、まさに親孝行なGⅠ制覇となった。2着は復帰初週の武豊騎手騎乗のエコロヴァルツ、3着には牝馬のタガノエルピーダがキャリア1戦ながら入った。ここでも2歳牝馬のレベルの高さが証明されたことになる。

2歳中距離王決定戦、ホープフルSは紅一点のレガレイラが勝利。牝馬の同レース制覇はもちろん初。繰り返しにはなるが、このレースでも2歳牝馬のハイレベルさが示された。来年は皐月賞を目指すことも示唆され、1948年ヒデヒカリ以来の牝馬による皐月賞制覇にも期待が高まる。2着には2番人気シンエンペラー、3着には13番人気のサンライズジパングが入った。

未知の領域へ、日本馬の挑戦は続く

最後に地方、海外のビッグレースについても触れておく。

JpnⅠのジャパンダートダービーを制したのはミックファイア。2001年のトーシンブリザード以来、22年ぶりの無敗の南関3冠を達成した。地方馬として1番人気を背負い、並いる中央馬たちを打ち破ったそのレースぶりは素晴らしかった。御神本騎手とのコンビでこれからの地方競馬、そしてダート界を背負う馬となってほしい。

マイルCS南部杯を勝ったのはレモンポップ。2着イグナイターに大差をつける圧勝で、その勢いそのままに春秋ダートGⅠ制覇を達成した。JBCスプリントは地方馬の星・イグナイター、レディスクラシックは新星・アイコンテーラー、クラシックはキングズソードがそれぞれ勝利。JBCはどの馬もこれがJpnⅠ初制覇であり、世代交代の波を感じさせるJBCデーとなった。

12月29日に東京大賞典が大井競馬場で開催された。少数精鋭の9頭ながら、ドバイWC勝ち馬ウシュバテソーロや、JBCクラシック勝ち馬キングズソード、そして今年無敗で南関東三冠を達成したミックファイアなど豪華メンバーが集結した。

レースは前走チャンピオンズC2着のウィルソンテソーロが逃げ、ミックファイアは中団、ウシュバテソーロは後方から末脚にかける展開で最後の直線に入った。直線ではウィルソンテソーロが逃げ切りを図ったが、外からウシュバテソーロが豪快に差し切り優勝。暮れの大トリを飾るGⅠを見事に勝利した。

今年の海外GⅠへの挑戦はサウジCからスタート。パンサラッサがアメリカの強豪・カントリーグラマーを抑えて逃げ切り、1着賞金約13億円を獲得。ドバイでは、ドバイSCをイクイノックスが圧勝、ドバイWCをウシュバテソーロが制し、日本競馬のレベルの高さが世界中に示された。

今秋、凱旋門賞にはただ1頭スルーセブンシーズが挑戦し、4着に好走。宝塚記念でイクイノックスを追い詰めたのはフロックではないと証明した。良い馬場状態なら日本馬でも戦えること、直行ローテで結果を残したことなど、多くの成果が得られた今年の凱旋門賞だった。今年の有馬記念を制したドウデュースは来年同レースにリベンジする可能性もあり、悲願達成に向け、日本競馬の挑戦はまだまだ続くことになりそうだ。

アメリカのサンタニアパークで開催されたBCデーには、8頭の日本馬が参戦。芝では、ウインマリリンがBCフィリー&メアターフで4着、シャフリヤールがBCターフで3着に好走。そしてダートでは、総大将のウシュバテソーロがBCクラシックで5着に敗れたが、3歳馬のデルマソトガケが2着に好走。ウシュバテソーロの巻き返しや成長著しいデルマソトガケの今後にも期待したい。

年末の香港国際競走では、5年ぶりに日本馬未勝利という結果に終わった。しかし、香港ヴァーズではゼッフィーロが2着、香港マイルではナミュールが3着、香港Cでもヒシイグアスが3着に入り、日本馬の意地を最低限は見せた。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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