【ホープフルS】凱旋門賞馬の全弟シンエンペラーが挑む「15度目の正直」 鍵握る世界のYAHAGI

逆瀬川龍之介

Galileoが母父の競走馬のJRA成績,ⒸSPAIA

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世界のYAHAGIの手腕に期待

GⅠに昇格して7回目となるホープフルS。短い歴史の間にサートゥルナーリア、コントレイル等の大物を輩出してきたクラシックの登竜門らしく、今年も好素材が顔を揃えた。中でも話題性で一歩リードしているのはシンエンペラーだろう。新馬→京都2歳Sと2戦2勝の戦績はもちろんだが、何より20年凱旋門賞馬ソットサスの全弟という血統がインパクト抜群だ。

シンエンペラーは父Siyouni、母Starlet's Sister、母の父Galileoという血統。全兄のソットサスは19年の仏ダービー、20年のガネー賞、凱旋門賞とGⅠを3勝した名馬だ。半姉シスターチャーリーも18年のBCフィリー&メアターフなどGⅠを7勝した名牝。シンエンペラー自身は22年のアルカナ・ドーヴィル1歳セールにて210万ユーロ、日本円にして約3億円で落札された。

コテコテの欧州配合とあって、日本の高速馬場への適性を不安視する声もあったが、杞憂に終わった。11月4日の新馬(東京芝1800m)はスローペースを好位で運び、上がり3F33秒8で突き抜けて完勝。一転、続く京都2歳S(京都芝2000m)は締まった流れを後方追走と楽ではない形だったが、直線で馬群の中から伸びて差し切り。着差は僅か半馬身でも〝強い!〟と思わせる内容だった。血統背景も踏まえれば、レース後に矢作芳人調教師が英国ダービー参戦をほのめかしたのも納得といえる。

ならば、GⅠ初挑戦となるホープフルSも通過点としたいが、ここではあえて「血統の不安は一掃できていない」ことを伝えたい。その原因は母の父Galileoにある。Galileoは歴史的名馬にして、11年連続で欧州リーディングサイアーに輝いた歴史的種牡馬。直仔こそJRAで重賞未勝利だが、母の父としてはJRAで169頭が走り、67頭が勝ち馬。重賞は7勝で、ヴァンキッシュランが16年の青葉賞、カンタービレが18年のフラワーCとローズS、キングオブコージが20年の目黒記念と22年のAJCC、ヴィクティファルスが21年のスプリングS、そしてシンエンペラーが今年の京都2歳Sを制している。ただ、GⅠでは延べ14頭で、18年秋華賞・カンタービレの3着が最高着順。戴冠には手が届いていない。

果たして〝15度目の正直〟なるか。そこで頼りになるのは「世界のYAHAGI」のタクトだ。矢作芳人調教師が成し遂げてきた「日本馬初」は数多く、一昨年はマルシュロレーヌがブリーダーズCディスタフ、ラヴズオンリーユーがブリーダーズCフィリー&メアターフを制覇。他にもリスグラシューで19年のコックスプレート、パンサラッサで今年のサウジCを制するなど、日本のホースマンの夢を次々に叶えてきた。そう考えると、これほど「母の父Galileo」のJRA・GⅠ初制覇にふさわしい人物もいないのではないか。日本馬として史上初となる英国ダービー制覇の大偉業に向けても、ここはきっちりと決めてほしい。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。

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