【有馬記念】過去10年でLyphard内包馬は7勝 好相性の血を複数持つジャスティンパレス
坂上明大
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傾向解説
2023年を締めくくるグランプリレースである有馬記念。東京開催の天皇賞(秋)やジャパンCとは異なり、中山芝2500mというトリッキーなコースで行われる本レースは、地力だけでなく立ち回りも重要となる一戦です。本記事では血統面を中心に、有馬記念のレース傾向を整理していきましょう。
まず紹介したいデータは年齢別成績。日本競馬が芝1600~2500mを中心に形成されていることはGⅠの数や賞金額からも明白で、それは競走馬の生産自体が強い芝中距離馬をつくることをメインテーマにしていることを意味します。そして、層が厚いゆえに世代交代のスパンが短くなり、過去10年の有馬記念では、6歳以上での好走が2018年3着馬シュヴァルグラン(当時6歳)の1回のみとなっています。逆に菊花賞からローテーションを組みやすく、斤量面の恩恵も大きい3歳馬の活躍が目立つため、菊花賞や天皇賞(秋)からここを目標に参戦してきた3歳馬には大注目です。
<年齢別成績(過去10年)>
3歳【4-3-2-16】勝率16.0%/連対率28.0%/複勝率36.0%/単回収率63%/複回収率95%
4歳【2-4-2-37】勝率4.4%/連対率13.3%/複勝率17.8%/単回収率43%/複回収率38%
5歳【4-3-5-45】勝率7.0%/連対率12.3%/複勝率21.1%/単回収率33%/複回収率54%
6歳【0-0-1-18】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率5.3%/単回収率0%/複回収率19%
7歳以上【0-0-0-14】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
血統面ではLyphardの血に注目。Lyphard直仔では凱旋門賞馬ダンシングブレーヴが有名ですが、ディープインパクトの母父AlzaoもLyphard直仔であり、ハーツクライの母母父にも名を残す日本競馬とも関係の深い種牡馬です。
Lyphardは母父Court Martialに馬体の輪郭が似ており、Lady Juror→Fair Trial→Court Martialと受け継がれたスピードと持続力が特徴といえます。その特徴を強く表現していたのが、Lyphardを4×4でインブリードした2017年勝ち馬キタサンブラックであり、同じくLyphardの4×4を持つ2014年勝ち馬ジェンティルドンナだったのではないでしょうか。
50年以上前に生まれた競走馬であるため、キタサンブラックやジェンティルドンナ、リスグラシュー、イクイノックスのように同血脈を刺激する必要はありますが、現在においても有馬記念で重要な血筋であることは間違いないでしょう。
<Lyphard(5歳以下・過去10年)>
該当馬【7-7-5-54】勝率9.6%/連対率19.2%/複勝率26.0%/単回収率45%/複回収率66%
→インブリード【4-2-2-2】勝率40.0%/連対率60.0%/複勝率80.0%/単回収率196%/複回収率167%
また、Lyphardと同じくFair Trialの血を内包する種牡馬は総じて有馬記念と相性が良く、特にNorthern Dancer直仔であるDanzigの血はLyphardに負けず劣らずの好成績を残しています。そのほかでも、NureyevやBe My Guestなどと組み合わせるパターンでも同様の効果が見込め、昨年2着馬ボルドグフーシュの血統表はその参考になるのではないでしょうか。
<Danzig(5歳以下・過去10年)>
該当馬【4-3-2-20】勝率13.8%/連対率24.1%/複勝率31.0%/単回収率128%/複回収率105%
血統解説
・スターズオンアース
母母スタセリタは2009年仏オークスなどGⅠ・6勝の名牝で、母サザンスターズの半妹には2017年オークス馬ソウルスターリングがいる良血。父ドゥラメンテはクラシック二冠の主流血統馬ですが、スタセリタがHyperionやLady Jurorを刺激しており、競走馬としてのバランスの良さが本馬の持ち味といえるでしょう。ジャパンCでは過去最高馬体重ながら3着と善戦。有馬記念でも大崩れは考えづらい一頭です。
・タスティエーラ
母母フォルテピアノはダ1400m以下で3勝、母パルティトゥーラは芝1600mで3勝を挙げたスピード豊かな一族。仕上がりに時間がかかるサトノクラウン産駒でありながら日本ダービーに間に合ったのは、まさに牝系譲りの早熟性とスピードがあってこそです。本質は芝中距離のバランス型で、中山芝2500mへの距離短縮はプラス材料。菊花賞からのローテーションも魅力大の3歳馬です。
・ジャスティンパレス
母パレスルーマーはアメリカで2013年ベルモントS勝ち馬Palace Maliceを出し、日本でもステイヤーズS勝ち馬アイアンバローズなどを出すスタミナ豊富な繁殖牝馬です。父にディープインパクトを配し、470キロ前後の馬体重からも超長距離適性の高さは現役屈指。天皇賞(秋)からの距離延長はプラス材料です。また、Lyphard、Nureyev、Robertoなど有馬記念と相性の良い血も複数内包。馬体重を増やして、しっかり成長した跡が見えるだけに、昨年のリベンジを果たす可能性は決して低くはないでしょう。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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