【チャンピオンズC】本命はまだ衰えていない一昨年の覇者テーオーケインズ 穴はドゥラエレーデ

山崎エリカ

2023年チャンピオンズカップのPP指数,ⒸSPAIA

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近年はややスローから平均ペースで決着

ジャパンカップダートから『チャンピオンズC』と名を改め、中京ダ1800mで行われるようになって今年で10年目。2014年は前後半5F62秒3-60秒6の極端なスローペース、15年は同60秒2-62秒4の極端なハイペースだったが、近年はすべて良馬場で、前半4F48秒中盤から49秒台後半の、ややスローから平均ペースの範囲内で決着している。これは各競馬場のダ1800m戦と比較すると遅い傾向だ。

このレースのペースが上がりにくいのは、坂の上りの途中からスタートするコースの上に、最初のコーナーまでの距離が約300mと短いことが影響している。前半が遅く、向正面でもペースが上がらない場合は、3角手前の下り坂から一気にペースアップするケースが多い。基本的には前半のペースが上がりにくいのがこのレースの特徴だ。

今年は何が何でも逃げたい馬は不在であるが、手強い逃げ、先行型が集結した。それらが外枠に入ったので、1~2角で外に張られないようにペースを引き上げていく可能性も高いと見る。中京ダ1800mの場合、1角までに隊列が決まらないと、2015年のように極端なハイペースになることもあるだけに、どちらのペースでも対応できる馬を中心視したい。


能力値1~5位の紹介

2023年チャンピオンズCのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 レモンポップ】
今年のフェブラリーSを完勝してGⅠ馬になり、前走のマイルCS南部杯では圧巻の走りを見せた。3番枠からまずまずのスタートを切って、枠なりでハナを主張すると、道中はコントロールして後続を引き付けての逃げ。3角では2番手外のイグナイターとはクビ差で回ってきた。3~4角で後続を引き離して約4馬身のリードで直線へ。序盤の上り坂を楽な手応えで駆け上がると、どんどん後続を引き離しての大差勝ちだった。

2着馬イグナイターに2.0秒差。そのイグナイターは次走でJBCスプリントを制しているように、けっして弱い馬ではない。盛岡の超高速ダートで前後半4F47秒4-46秒4のスローペースだったことを考慮しても、あまりの大きな着差に度肝を抜いた。本馬はこれまで折り合いに専念してきたが、本来は逃げてこそのタイプだったということになる。

記録した指数は、馬場と展開に恵まれたとはいえ、圧倒的なもの。前走通りに走ればここも圧勝だが、今回は激走の疲れが懸念される。さらに逃げ、先行型が手強く、大外15番枠となると、本気で主張すれば1角までにハナを取り切れるにせよ、前走ほど楽には逃げられないはず。また1400~1600mで結果を出してきた馬だけに、1Fの距離延長もプラスとは言えない。能力値も最高値もNo.1だが、その辺りの割引が必要だ。

【能力値2位 グロリアムンディ】
デビューからしばらくは芝を使われていたが、ダートに路線転向してから急上昇。1勝クラス勝ちから一気に重賞アンタレスS2着まで駆け上がった。昨年のチャンピオンズCは休養明けで、ゲートでアオり、進みも悪く大敗したが、そこから再度休養明けで挑んだダイオライト記念では圧勝Vを果たした。

ダイオライト記念は1番枠から五分のスタートを切り、軽く促されて好位の内目を確保したが、そこからじわっと位置を下げて、道中は中団中目を追走した。2周目の向正面で徐々にペースが上がっていく中、わりと楽な手応えで内から3角へ。やや詰まりはしたが、砂の深い最内から押し上げて4角ではもう先頭、2馬身差のリードで直線を向いた。そこから後続を5馬身引き離し、ラスト1Fではさらに差を広げ、2着に9馬身差をつけて圧勝した。

前走のコリアCは向正面で先頭に立ったクラウンプライドを捲りにいった結果、大差をつけられる形となったが、休養明けで能力を発揮できなかったのだろう。タフな馬場のダ2400m戦で圧勝しているように、スタミナを生かしてこそのタイプ。前走は前後半4F50秒3-48秒9とかなりのスローペースで、速い上がりを求められたのも敗因のひとつである。

ダ1800mは本馬にとっては短いが、昨年のアンタレスS2着時のように前がペースを引き上げてくれれば通用するはず。仮にペースが上がらないようであっても、前々走の平安S(ダ1900m)のように、向正面で捲って前にプレッシャーをかけていけばチャンスはある。

【能力値3位 アイコンテーラー】
休養明け&初ダートで3走前のBSN賞を完勝すると、前々走のシリウスSでも2着と善戦し、前走ではJBCレディスクラシックを優勝と、一気に上昇した。前走は4番枠から五分のスタートだったが、促されるとスッと行き脚がついて先行。道中は内からハナを主張したヴァレーデラルナにある程度プレッシャーをかけながら追走した。3角手前で同馬に並びかけ、3~4角で先頭。捲ってきたテリオスベルに抵抗しながら2頭で並走して直線を向いた。直線序盤で同馬を振り切り、一気に抜け出して4馬身差をつけ、最後までその差を守りきって完勝した。

このレースはタフな馬場でペースも速かったため、逃げたヴァレーデラルナは12頭立ての11着、3番手を追走したノーブルシルエットは12着と、ともに大失速した。その中で唯一前で粘れたのが本馬だ。それも捲ってきたテリオスベルを振り切って、2着のグランブリッジに4馬身差をつけ、展開に恵まれた3着アーテルアストレアには4馬身半差をつけての圧勝だから高い評価ができる。

ただし、本馬は前走が大目標。過去のチャンピオンズCでは牝馬のサンビスタが優勝したことがあるが、JBCレディスクラシックで2着に敗れた後の参戦だった。また、前走が消耗戦でもあっただけに疲れが残りそうだ。芝で長らく使われていたダート馬は上昇が大きいものだが、さらに相手が強化されるここは、やや苦しいのではないかと推測する。

【能力値4位 クラウンプライド】
昨年の当レース2着馬。当時は10番枠から五分のスタート。ゲートが上り坂の途中にある影響でペースは速くなく、軽く促されると勢いがついて先頭集団に混じった。外のレッドソルダードがハナへ行くのを待ち、それを行かせて2番手を追走した。道中はペースが遅く、しばらく掛かり気味だったが、3~4角でも仕掛けを我慢して直線へ。直線序盤で追い出されるとスッと抜け出し、ラスト1Fで2列目の馬たちを振り切ったが、外からジュンライトボルトに差され、クビ差で敗れた。

今年の帝王賞でも2列目追走から、最後の直線で早め先頭に立ったところを、外からメイショウハリオ、テーオーケインズに強襲された。結果、メイショウハリオにハナ差先着されての2着だった。しかし、テーオーケインズをアタマ差で退けているように、能力は高い。前走のコリアCでも14番枠から楽に2番手の外まで上がって追走し、向正面先頭からそのまま押し切って、2着グロリアムンディに大差をつけて完勝している。

立て直されてはいるが、前走が強烈な勝ち方だっただけに、疲れが取り切れているかどうかが不安である。今回は逃げ、先行型が手強く、昨年のチャンピオンズCや前走のように、楽に前へは行けないはず。よって昨年ほどの走りは期待できないだろう。

【能力値5位 テーオーケインズ】
一昨年の覇者。同レースでは6番枠からまずまずのスタートを切って、外から前を主張する各馬を行かせ、好位の中目を追走した。向正面でスペースを作って、3~4角では早めに動いた前のインティを追いかけて2列目まで上がって直線へ。直線序盤で外に出されるとグンと伸びて一気に先頭、6馬身差で完勝した。昨年もJBCクラシックを優勝しているように、能力は高い。

前々走の帝王賞は海外遠征直後で調整が難しく、接戦での3着。このレースでは1番枠からやや出遅れて中団の最内を追走したため、3~4角で包まれて最後の直線で馬群を捌きながらの競馬になった。これも敗因のひとつである。

前走のJBCクラシックは3番枠からまずまずのスタートを切って内のノットゥルノを行かせて2番手を追走、この馬をマークする形で進めた。直線では、3~4角で外から上がったキングズソードに前に出られ、ノットゥルノとの叩き合いにもアタマ差敗れての3着だった。スタミナが不足する休養明けで、タフな馬場となった大井で、かなりのハイペース。最後に苦しくなっての3着と、敗因は明確だ。

今回は前走で能力を出し切れていないので疲れもなく、その前走で厳しい流れを経験したことで順当に息持ちの良化も見せるだろう。本馬は年内引退の予定で、これがラストランになる可能性もある。年齢を重ね、一昨年のこのレースで見せたような末脚は使えなくなっているが、そのぶん、持久力が強化されており、まだまだやれる。また、ペースに関しても前走でハイペースの中3着、一昨年の当レースで前後半4F49秒3-48秒3のスローに対応して1着。ペースへの対応力と、ここでの変わり身に期待して、今回の本命候補だ。


穴馬はダート適性が高いドゥラエレーデ

デビュー3戦目、初ダートの未勝利戦を2番手外から3角で先頭に立ち、3着以下には大差をつけて勝利した。当時記録した指数は1クラス上のものだったことから、ダートでの高い潜在能力を感じていた。その後は芝のホープフルSを優勝。次走のUAEダービーではダート2戦目ながら、後にBCクラシック2着と好走したデルマソトガケの2着に入線した。

UAEダービーは8番枠から五分のスタート、そこからは押してハナを主張しにいったが、内のデルマソトガケのテンが速く、同馬の外2番手でレースを進める。道中はコントロールしながら、デルマソトガケをマーク。3~4角では同馬に食らいつくが3/4差にリードを広げられ、直線序盤では2馬身差つけられた。ラスト1Fまでしぶとく食らいついたが、結果は5馬身半差の完敗だった。

しかし、3着コンティノアールには4身半差をつけており、そこからさらに3馬身半差の4着がペリエールだから、とても価値の高い2着だったと言える。それもレースがかなりのハイペースで流れた中の結果だから侮ってはいけない。

日本のパサパサのダートにどこまで対応できるか、という課題はあるが、初ダートの札幌ダ1700m戦で高い潜在能力を見せていることから、日本のダートが滅法苦手ということはないだろう。近2走は芝で凡退しているが、ダートのキャリアは2戦と浅く、まだまだ上昇が期待できる。逆転劇に期待したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)レモンポップの前走指数「-47」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも4.7秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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