【チャンピオンズC】前走大差圧勝も不安データあり レモンポップに立ちはだかる「3つの壁」

逆瀬川龍之介

レモンポップに立ちはだかる3つの壁,ⒸSPAIA

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前走レースは評価できるが……

今年のチャンピオンズC最大の注目馬はレモンポップだろう。2月のフェブラリーSでGⅠ初制覇。続くドバイゴールデンシャヒーンは10着に大敗したが、国内復帰戦となった前走の南部杯が衝撃的だった。マイペースの逃げから、直線では後続をグングンと突き放し、1分33秒8の好時計で2秒0差の圧勝。2着は続くJBCスプリントを制したイグナイターだから、相手に恵まれたわけでもない。強いレースだった。

ダートマイル界を完全制圧し、いざ中距離路線へ。前走の勝ちっぷりを見れば、あと200mぐらいは何とかなるだろう、というのが大方の見方だろうか。しかし、初のコーナー4つのコースでもあり、そんなに甘くないという声もチラホラ。そこでデータを基に精査すると、レモンポップに立ちはだかる「3つの壁」があることが判明した。

①1800m未経験【0-0-0-2】

チャンピオンズC(ジャパンカップダート時代も含む)が08年に1800mになって以降、1800m以上の経験がなかった馬は【0-0-0-2】。19年ワンダーリーデルが11着、昨年のシャマルが5着に終わっている。また、1800m以上の経験があっても、マイル以下を主戦場としてきた馬は14年6着ワイドバッハ、15年13着コーリンベリー、20年5着モズアスコットなど苦戦傾向にある。前述の馬と比較して、レモンポップの実績は最上位といえるが、スピードだけで押し切れるレースでないことは覚えておきたい。

②前走で逃げ【0-1-4-11】

ジャパンカップダート時代も含め、前走で逃げた馬の勝利は10年トランセンドが最後。外国馬を除くと、11年以降は延べ16頭で【0-1-4-11】で勝率0.0%、複勝率31.3%。3着は多いが、1番人気が3頭、2、3番人気が1頭ずつ含まれていることを考慮すると、決して好走率が高いとはいえない。チャンピオンズCで逃げるかどうかにかかわらず、前走で逃げた馬は割引が必要だ。

③外国産馬は苦戦【0-3-2-40】

最後は少々オカルトチックではあるが、外国産馬が苦戦していることに触れたい。01年クロフネ、02年イーグルカフェ、03年フリートストリートダンサーと3連覇したこともあったが今は昔。04年以降は延べ45頭が出走して【0-3-2-40】の勝率0.0%、複勝率11.1%。1800mになった08年以降は、1番人気だった16年アウォーディーの2着が唯一の馬券圏内だから、かなり物足りない。20、21年はカフェファラオがそれぞれ2、4番人気に支持されたが、6、11着に敗退している。レモンポップが勝てば20年ぶり4頭目の外国産馬Vとなるが……。伏兵ならいざ知らず、人気馬だけに気になる材料だ。

レモンポップは日本と抜群の相性を誇るKingmambo系のLemon Drop Kid産駒、何より祖母Harpiaが名種牡馬デインヒルの全妹という血統背景から、種牡馬として相当なポテンシャルを秘めている。それだけに一ファンとしては、さらにタイトルを積み重ねてほしいという思いが強い。ただ、馬券に私情は禁物。データ的には「レモンポップに死角あり」と断言しておく。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。

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