【マイルCS】自在性高いダノンザキッド3度目の正直だ 素質開化のナミュールにも期待

山崎エリカ

2023年マイルCSのPP指数,ⒸSPAIA

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今年は先行勢が手薄

マイルCSが行われる京都芝外回り1600mの舞台は、前半2F過ぎから3角の頂上を目指して坂を上って行くコース。このため前半のペースが上がりにくく、京都開催直近10年のマイルCSは平均前半4F46秒52、後半4F46秒33と前後半差がほとんどない。3角手前でペースが緩んで3角の下りでじわりと上がる傾向があり、極端なスローペース、ハイペースになったことは一度もない。

京都芝コースは今週よりCコース替わりで中目(3分所)が有利となっているが、内も伸びないこともなく、展開次第では外差しも決まっている。今回はバスラットレオン、セルバーグと前に行ってこそのタイプはいるが、例年と比較をすると先行勢が手薄。おそらく平均よりのスローになると見ている。ある程度、前の位置を取れれば、最後の直線で馬場の良い中目を選択できるという意味でも、好位でレースを進められる馬を中心に予想を組み立てるのがベストだろう。

能力値1~5位

2023年マイルCSのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 セリフォス】
昨秋のマイルCSの覇者。同レースは10番枠からやや出遅れたが、そこから促されて中団中目まで挽回。しかし、道中はやや遅い流れで団子状態だったため、位置を下げて後方馬群の中目を追走した。3~4角でも後方の外目で包まれたままで、4角出口で下げながら外に誘導して直線へ。序盤の伸びは地味だったが、ラスト1Fで一気に前を捉えて1馬身1/4差で完勝した。

このレースではシュネルマイスターやジャスティンカフェなど、最後の直線で馬場の良い中目を狙いたい中団馬、後方馬が3~4角から直線序盤に掛けて包まれ、能力を出し切れなかった。けっしてスムーズなレースではなかったが、結果的に外を選択したことは正解だったことになる。

前走の安田記念は2着。ここでは4番枠から五分のスタートを切ると、やや促して好位の最内を追走。ポジションを取ってからはコントロールし、3~4角は2列目の内のスペースに。直線はジャックドールの後ろから伸び、ラスト1Fで捉えたが、外からソングラインに抜け出されて1馬身1/4差の2着に敗れた。

前走は外差し有利の馬場。馬場の悪化した内側を通ったことが敗因のひとつではある。ただし、今年は前哨戦の富士Sを使った昨年とは違い、ぶっつけ本番。今年も富士Sから始動を予定していたが、夏負けの影響で調整が間に合わずに回避している。本馬はこれまで一度も掲示板を外したことがなく、安定して走れる。ここも善戦してくる可能性が高いが、安田記念からの直行は決して好ましい臨戦過程ではない

【能力値2位 シュネルマイスター】
一昨年の毎日王冠の覇者。同レースは1番枠からやや出遅れ、前に入られて後方からの追走。直線で外に出されるとすっと伸び、ラスト1Fで3馬身はあったダノンキングリーとの差をー気に詰めアタマ差で優勝した。

本馬はエンジンが掛かってからが強いタイプ。前走となる今年の毎日王冠でも、1番枠から後方内目を追走し、道中から直線序盤まで後方の内目で包まれたが、ラスト2Fで位置を最後方に下げ切ってから、外に誘導してラスト1Fで鬼脚を見せている。結果的にハナ+ハナ差の3着に敗れたが、本当に最後の破壊力がすごかった。

芝マイル戦では3歳時にNHKマイルCを優勝し、その後は21年マイルCS2着、22年安田記念2着、などのGⅠ実績があり、今年に入ってもマイラーズCを優勝し、安田記念3着と衰えを見せていない。ただ今春の安田記念は14番枠から出遅れ、軽く促されても後方からのレース。さらにレッドモンレーヴに前に入られて、勝ち馬ソングラインより2列後ろからの追走になった。

マイル戦だとテンに置かれて位置取りが悪くなり過ぎるため、3走前のマイラーズCのように、前がしっかりレースを引っ張って、差し、追込馬向きの展開になってくれないと勝ち切れない。京都芝は時計を要しており、馬場の良い中目からの差しが目立っているが、今回は先行勢が手薄。そこが気掛かりだが、昨年のように3~4角の中団中目で包まれて、直線序盤で進路を失うようなことがなければ、2着、3着くらいには来られる可能性が高いと見ている。

【能力値3位 レッドモンレーヴ】
デビューからの3戦は芝の中距離戦を使われていたが、デビュー4戦目の1勝クラスで芝のマイル戦を勝利すると、そこからはマイル中心に使われて好成績を残した。3走前の芝1400m戦、京王杯SCでは出遅れて中団やや後方からの追走になったが、あっさり対応して優勝したようにスピード、瞬発力に秀でた馬だ。

前走の富士Sでは9番枠からやや出遅れ、二の脚もひと息で促しても後方に下がってしまう形。レースが緩みなく流れた中で、後方2列目で動けないまま外から3角へ。3~4角では縦長の馬群の中目を通して4角出口で外に誘導。直線序盤でソーヴァリアントの後ろから外に出し、ラスト2Fで同馬を捕らえて2列目付近。ラスト1Fで1馬身半ほど抜けていたナミュールに唯一食らいついたが、差は詰まらず1馬身1/4差の2着までだった。

このレースではダノンタッチダウンが緩みないペースで逃げたことで展開に恵まれ、持ち味の末脚が活かされた面がある。今回は前走で能力を出し切った感もあるので体調面が良化するのか微妙なところもあるが、展開が向くようならばチャンスはある。

【能力値4位 ジャスティンカフェ】
昨年の東京芝1600mの3勝クラス・湘南Sでは、出走メンバー中上がり3Fタイム断トツの末脚で後方2番手から差し切り、重賞級の指数を記録した馬。その瞬発力は本物で、その後の22年毎日王冠2着、今年に入ってからはダービー卿CT2着、そして6月のエプソムCでは完勝を収めた。

前記のエプソムCでは15番枠からやや出遅れて二の脚もひと息。ここでも後方外からの追走になった。しかし、道中は前が飛ばしていたので、コントロールして無理せず3角へ。3~4角の外から中団のカワキタレブリーの直後まで上がり、4角出口で同馬の外。直線序盤ですっと伸びてカワキタレブリーを交わし、ラスト2Fで中団列から一気に伸びて、ここで先頭列付近まで上がると、ラスト1Fで突き抜けて1馬身1/4差で完勝した。

前走の毎日王冠では前有利の展開を、出遅れて進みも悪く、後方ポツンの競馬で能力を出し切れなかった。結果的に始動戦で目一杯に走らなかったので、余力残しでここに向かうことができる。昨年のマイルCSは最後の直線で中団中目から前のスペースを詰めて前が完全に壁となり、そこでブレーキをかけて右往左往する不利があった。それでもラスト1Fで中目を捌いて0.4秒差(6着)に善戦していることからスムーズならばもっと上の着順が狙えていたはず。マイル戦だと芝1800m以上にテンに置かれる面があるが、上手く外に出してスムーズな競馬ができればチャンスはある。

【能力値4位 セルバーグ】
デビュー4戦目の白梅賞で逃げて3着。その後は差す競馬で結果が出なかったが、3歳秋の1勝クラスを逃げて勝利。そこからは前に行く競馬で好成績を残すようになった。2勝クラス勝ち、3勝クラス勝ち、武庫川S勝ちの際にともにオープン通用レベルの指数を記録しており、いずれ重賞で好走する馬だと見ていたが、今夏の中京記念では逃げて能力をフルに発揮して優勝した。

中京記念では6番枠からまずまずのスタートを切って、そこから外のアナゴサンを制してハナを主張。道中も淡々とレースを引っ張り、1馬身半差のリードで3角へ。3~4角でアナゴサンらが食らいつこうとしてきたが、楽な手応えでその差を詰めさせず、直線序盤ですっと抜け出して2馬身半差のリードを奪う。ラスト1Fでディヴィーナにジリジリ詰められたが1馬身半差で完封。ここでは完璧な立ち回りだった。

中京記念の走りを再現できるならば、ここでも十分に勝ち負けが期待できる。ただし、今回は夏以来の一戦。当時はその手前で能力を出し切れない競馬を2戦続け、エネルギーが溜まっていた面もあった。今回は先行勢が手薄とはいえ逃げにこだわりそうな馬もチラホラ。能力を出せる競馬ができるかがカギとなる。

人気薄だがチャンスあるダノンザキッドとナミュール

【ダノンザキッド】
今春の大阪杯の3着馬。同レースでは13番枠からやや出遅れたが、そこから促して好位の外を追走。ジャックドールの逃げで道中も緩みなく流れたが、2列目に近い4番手の外で3角へ。3~4角で2頭分外を回るロスを作りながら上がって直線序盤では2番手。そこからしぶとく伸び続け、ラスト1Fでも踏ん張って食らいついたが、最後はスターズオンアースに捉えられ、ハナ+クビ差の惜敗となった。2021年のマイルCSでは3着、昨年は2着。芝マイル戦にも高い適性を示している。

前走の宝塚記念は前半が極端に速いペース。3番枠から好スタートを切ってしまったこともあり、ここで好位の中目と前の位置を取り過ぎたのが主な敗因。1角まで首を上げて掛かっており、道中も折り合いを欠いてオーバーペースを追い駆けてしまったことが大失速に繋がった。

今年のマイルCSは末脚自慢の馬が多く、先行勢がやや手薄。本馬はもともと自在性があり、前走で緩みないハイペースを経験していることから今回は楽に好位を取ることができそうだ。またマイルのペースなら折り合いも付くだろう。

今回は今春の大阪杯3着時の指数で走れれば勝ち負けになるメンバー構成。前走の大敗が嫌われて人気は急落しているが、今回は好走の条件が揃った。終わってみれば能力、実績から好走して当然だったと言われる結果を期待する。

【ナミュール】
前走でこのレースの前哨戦、富士Sを優勝した馬。前走は6番枠からやや出遅れ、軽く促されてはいたが、先行争いが激化して隊列が縦長になっていったため、後方外目で我慢の競馬。3角手前で内に潜り込み、3~4角でも緩みなくレースが流れた中、最短距離から前のスペースを詰めて4角で外へ。序盤はイルーシヴパンサーの後ろで我慢していたが、ラスト2Fで同馬の外に出されると、すっと伸びてラスト1F付近で先頭。外から猛追するレッドモンレーヴを最後まで寄せ付けず、3着馬を4馬身近く突き放し、1馬身1/4差で優勝した。

3走前のヴィクトリアMでは、11番枠から五分のスタートを切って好位の一角でレースを進めていたが、外から内に切れ込んだソダシの影響で好位列がかなり凝縮し、そこで押し下げられる不利。中団外まで下がったものの、4角で外から押し上げてきたディヴィーナに蓋をされて動けず、前の進路もない状態。直線序盤で仕掛けを待たされて位置を下げる不利があっての7着敗退。

前々走の安田記念は12番枠から出遅れて後方から、押して挽回を試みたが、後方馬群に包まれ、そのまま3~4角を回り、4角でも後方2列目のままスペースも進路もない状態。直線では進路を求めて外へ外へと出されたが、ラスト2F目で前の馬の間を突こうとしたところで、内と外から挟まれて終戦となった。

2~3走前は不利があって能力を出し切れなかったが、前走はラスト2F11秒7-11秒6と加速して優勝。新馬戦で非凡な瞬発力を見せていたが、ようやくここに来て開花したようだ。今回で休養明け好走の反動が出る危険性もないわけではないが、古馬G1でも通用可能な素質馬だけに要注意だ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)セリフォスの前走指数「-22」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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